【BMW】新型「X5」試乗記 プレミアムSUVのベンチマーク レポート:松本晴比古

マニアック評価vol242

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X5 xDrive 35d Mスポーツ

7年振りのモデルチェンジを受け3代目となった新型X5(F15)は2013年11月から発売された。ラインアップは、35d(3.0L・直6ターボディーゼル)、35i(3.0 L・直6ガソリンターボ)、50i(4.4L・V8ガソリンターボ)の3機種だが、実際の販売面では80%以上が35dになる見込みだ。SUVというカテゴリーであることを考えるとそれは当然だろう。

X5はもともとヨーロッパ生まれ(生産はアメリカだが)のプレミアムクラスのDセグメントSUVとしては、X5同様にアメリカ生産のメルセデスMクラス(発売は1997年)を追撃するために投入されたが、オンロード性能の高さをアピールしアメリカを始め世界的に成功を収め、その後のBMWのXシリーズの牽引車となった。現在ではBMWのXシリーズの生産は全生産台数の30%に達している。さらにエンジンでは、ヨーロッパ市場に限れば約70%がディーゼルエンジンで、全世界でも40%がディーゼルで、BMWは今ではSUVが大きな柱になり、エンジンはディーゼルが主流の自動車メーカーというアウトラインになっているのだ。

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そういう意味で、今回試乗したX5 35dはまさに今のBMWを象徴するモデルといってもよい。X5のメイン市場はアメリカ、中国、ロシアで、アメリカではX5はミッドクラスのSUVと分類されるが、全長4910mm、全幅1940mm~1985mm(Mスポーツ)、全高1760mm、ホイールベース2935mmという堂々たるサイズだ。旧型との比較では全長が+50mm、全幅が+5mm、全高は-15mmでホイールベースは共通だ。日本の都市部で乗り回すと相当に大きなサイズであることが実感できる。

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もちろんキャビンの居住性、広さは文句なしで、ラゲッジスペースは旧型より更に拡大され620L、リヤシートを倒すと1870Lの容量となる。ラゲッジフロアには普通の体格の大人なら胡坐を組んで座ることができる。リヤゲートは上下2分割式で、下側ゲートを後方に向かって開くとフラットなベンチシートになるのはアメリカ市場向け。またラゲッジスペースは単に容量だけ追求したのではなく、いかにも荷室らしさもなく高い質感の心地よいスペースと言うにふさわしい仕上げになっているところもプレミアムクラスらしい部分だ。

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X5 35dのグレードは、SE、標準モデル、Xライン、Mスポーツの4グレードがあり、価格は792万円~880万円。試乗したのはMスポーツで、オプションの20インチホイールを装備していた。なおタイヤは全車ランフラットで、Mスポーツのみがサマータイヤが標準、他のグレードはオールシーズン・タイヤとなる。

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ドライビングシートに座ると、着座位置が高めなのでBMWのセダンやクーぺのタイト感はなく、開放感がある。エンジンをかけ発進すると2.2トンもある巨体も軽やかに動き出し、アクセルの踏み込み量を増すとダイレクト感のある加速が味わえる。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて吹け上がりのレスポンスが劣るのが通例だが、この6気筒ディーゼルはガソリン車並のレスポンスだ。だから市街地で、信号発進が多くてもいらっとすることもない。なおこのディーゼルはアドブルー、つまり尿素水還元触媒方式を採用している。

8速ATは、日常的な走りなら気付かない間にどんどんシフトアップし、低いエンジン回転で巡航できる。これが大トルクのディーゼルと多段ATのよいところだ。エンジンの回転を上げても室内は軽いエンジン音のみがかすかに聞こえる程度。室内はいたって静粛で、100km/hの巡航ではエンジン回転は1500rpmほどだ。風切り音やロードノイズも遮断され、快適そのもののキャビンであることが実感できた。最近のヨーロッパ車はBセグメントのコンパクトカーにいたるまで驚くほど静粛性が高められているが、やはりX5クラスになると一段と高いレベルの静粛さ、快適さである。

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もう一つの圧倒的な優位点は、乗り心地だ。試乗車は20インチのランフラットタイヤだが、その乗り心地は絶妙だ。もちろんダイナミック・ダンピングコントロール(試乗車はオプションのダイナミックパフォーマンスコントロール付き)によりダンピングは選択できるが、コンフォートからスポーツまで切り替えてもその変化の幅は妥当で、コンフォートであってもスポーツであってもサスペンションの締まり感と滑らかさのバランスは絶妙で、変化幅が大きい他車種より優れたチューニングだと感じた。

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ステアリングの正確さ、ダイレクト感、落ち着き具合や直進安定性も絶妙で、俊敏さをマニアックに過剰なほど追求している最近のBMWのセダン、クーペとは一味違う、SUVらしいというより大型プレミアムクラスのセダンのようなチューニングをしてあることがわかり、こうしたチューニングの方向性はさすがと言わざるを得ない。電動パワーステア式のステアリングも3/4シリーズと比べ一段と重厚で上質なフィーリングに仕上げられている。やはりこれはフロント・サスペンションがストラット式かX5のダブルウィッシュボーン式かという違いも大きいのだろう。

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X5 35d Mスポーツの試乗車はオプションの20インチサイズのサマータイヤを装着
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グリル中央部の小さな黒点がフロントカメラ。トップビューカメラだが、交差点の左右視界もサポートする

 

X5は初代はオンロードSUV志向が強かったが、2代目以降はSUVの付加価値である4WDらしい走破性も重視しており、今ではx Driveのサブネームが付くようにモーグル路面や対角輪の空転でも走る抜けるヘビーデューティ4WDなみの走破力を持っている。またそれだけではなくトルクベクタリング、前後駆動トルク可変配分など操縦性に寄与する仕掛けも網羅しており、コンディションの悪い路面を走る時の運転のし易さ、安心感があるのはいうまでもない。

ドライバー支援システムは、パーキングディスタンスコントロール、前後左右にカメラを配置してX5全周を視認できるトップビュー、ドライビングアシスト(車線逸脱警報、衝突回避軽減ブレーキ)が標準(SEグレードは除く)で、レーンチェンジ警告、アクティブクルーズコントロールなどはオプション設定なのはちょっと首を傾げる。また、標準装備の衝突回避・軽減ブレーキは、対応車速が30km/h以下で、さらにカメラで対象物をロックオンしている時にわずかでもアクセルペダルに触れるとシステムが解除されてしまうのはちょっと注意を要すると思う。

昨年秋からBMWは「コネクテッド」システムを導入しており、もちろんこのX5にも装備される。標準仕様ではSOSコール、サービス工場と車両&メンテナンスデータをやり取りするテレサービスが、オプションで「コネクテッド・プレミアム」が設定され、ドライブサービスや通話サポート、スマートフォン・アプリとの連携、ニュースや天気予報の取得などができる。これらはX5にSIMカードが内蔵されているため機能する。これはX5に限ったことではないが、これからのクルマのあり方を示す存在といえると思う。

BMW X5 諸元表

BMW X5 価格表

BMWジャパン公式サイト

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