【BMW】BMW i3試乗記 全く新しい乗り物だがしっかりBMWしているi3 レポート:髙橋 明

マニアック評価vol259

bmw i3
電気自動車BMW i3の試乗は、世界遺産・屋久島で行なわれた

BMWのサブブランドiシリーズのトップバッターBMW i3に試乗できた。場所は世界自然遺産の島、屋久島。島のほぼすべての電力が水力でまかなわれているだけに、BMWが放つサスティナブルモビリティには絶好の場所。早速そのレポートを送ろう。

◆ポジショニング
BMWのサブブランドの「i」とは、メインストリームであるこれまでのBMWのラインアップを補完するブランドであり、より環境に配慮した新たなモビリティとして誕生している。持続可能なものとしてクルマを使い続けるには、燃料はもちろん、クルマ自体も再生可能なものが望ましい。

bmw i3

そしてサブブランドであるゆえんのひとつに、リージョナルヴィークルであるという一面を持っている。それは特定のエリアに限って利用する目的がメインストリームであるわけだ。駆動力にはEVモーターを利用し電力で走行する。しかし普通のEV車と大きく異なるのは、このポジショニングにあると思う。

EV車はガソリン車に替わる未来の乗り物という話を聞くが、BMWではEV車の位置づけは通常のガソリン車と並列に位置するものであり代替目的で造っていないということだ。したがってEVのネガなものとして航続距離の問題があるが、リージョナルヴィークルとすることで「使い方」がよく理解できるわけだ。とはいえ最大200km以上の航続距離を持っているので、日常使いではまったく不便はないだろう。ちなみにJC08モードの電費は229kmとなっている。

Bピラーなし
Bピラーがなく観音開きのドアを装備する

そしてクルマの製造方法も全く新しい。バッテリーとドライブトレーンを搭載するアルミ合金フレームの「ドライブ・モジュール」とCFRP素材でできているボディ=パッセンジャーセルを「ライフ・モジュール」と重ね合わせるようにしている。剛性の高いCFRP素材だけにBピラーを廃すことができ、ドライブシャフトがないためにセンターコンソールも不要とするなど、クルマの製造方法までも新しく開発されているモデルなのだ。

◆スペック
ボディサイズは全長4010mm×全幅1775mm×全高1550mm、ホイールベース2570mmで立体駐車場に対応している。レンジエクステンダーモデルには2気筒647ccのガソリンエンジン搭載し、バッテリー充電用の発電専用エンジンとしている。出力は125kW(170ps)/250Nmで1260kg(1390kg)のボディを走らせるには十分すぎるパワーといえる。パワーユニットはリヤに搭載し、レンジエクステンダーのエンジンもリヤに積んでいる。駆動方式はリヤ駆動である。価格はEVモデルが499万円(税込)、レンジエクステンダーは546万円(税込)となっている。

bmw i3_2010bmw i3_2011

バッテリーだが、BMWのハイブリッドにはA123(エーワンツースリー)製を採用しているが、BMW i3はSBリモーティブ製を採用。韓国のサムスン電子とボッシュとの合弁会社で、現在はサムスン、ボッシュの関係がなくなったためボッシュ製ということになる。そのバッテリーの種類はリチウムイオンで12セル×8モジュールの96セルを1パッケージ搭載している。総電力量は21.8kWh。

屋久島充電
屋久島にある急速充電スポット。i3は日本規格のCHAdeMOに対応

急速充電では日本の規格であるCHAdeMOに対応し、およそ30分で80%充電できる。普通充電の場合は約8時間で満充電となる。レンジエクステンダーモデルは9.0Lのガソリンタンクを持ち、リチウムイオンハバッテリーの充電状態が6.5%を下回ると自動的に稼働する。また、充電状況が75%以下であれば手動で作動させることもできる。

急速充電bmw i3__1097

 

◆インプレッション
BMW i3に乗り込むと広いダッシュボードとシンプルなインテリアからルーミーな印象を強く受ける。これまでとは全く違ったものだけに、「クルマらしいもの」を避けているかのようなデザインだ。斬新かつシンプルで好ましい。ステアリングの右側にギヤセレクターがある。スタート&ストップボタン、パーキングスイッチもここにあり、スイッチ類を探すことはない。

bmwi3フロントシート
明るく広々したi3の車内。シートデザインなど未来的なデザインを持つ

メーターは正面とセンターの2か所に液晶パネルが置かれ、航続距離などさまざまな情報を見ることができる。センターのパネルはセンターコンソール部にあるスイッチで操作する。おもにナビ操作やラジオやオーディオの切り替えなどで、通常のBMWモデルと共通しているものが多い。また、走行モード切り替えもここで行なう。

インパネ
二ヶ所の液晶パネルには航続距離などさまざまなインフォメーションが表示される

走り出しはEV車特有のトルクフルな加速で、音もなくどんどん速度が上がる。EV車では、これまでに経験したことのない加速感で、かつて試乗したリーフのレーススタディモデルより加速力はあるように感じる。そして高い静粛性にも驚かされる。EV車はエンジン音がしないため、ロードノイズやインバーター、風切り音など別な騒音が気になり始めるのだが、そのいずれも聞こえないレベルの静粛性がある。ライフ・モジュールというコンポジットと音・振動には細心の注意が注がれている。

走りi3
力強い加速と高い静粛性。スピードを上げてもロードノイズなどは気にならない

アクセルレスポンスはこれまでにないフィールだった。スロットルオフしたときの減速感が非常に強い。回生ブレーキの効きが強烈なのだ。アウトランダPHEVにその回生ブレーキの強さを6段階で調整する機能があるが、その最も強い回生ブレーキと同等か、それよりも強い減速感がある。したがって0.13Gの減速Gでストップランプが自動で点灯する。まさに、ストップランプがなければ後続車がぶつかってしまうほどの減速をする。

したがって乗った瞬間は「あれ?」と感じ、スロットルワークに気を取られるが、それもすぐに慣れる。数回アクセルペダルのオン/オフを繰り返せば、そのフィーリングはすぐにつかめるだろう。フィールが分かれば、フットブレーキを踏まずに走行できるようになる。それはワインディングの登りでも下りでも可能で、減速具合はペダルのオフ加減をパーシャルにすることで調整でき、アクセルを開けるときも閉じるときも常にパーシャルを使った走り方をすると滑らかになる。

走りリヤビュー

ハンドリングはBMWのそれで、まさに期待値通りに動く。ハンドリングは世界一といわれるBMWのプライドを感じる部分だ。装着するタイヤサイズは、フロントが155/70-19でリヤが175/60-19という異型サイズになっている。軽自動車なみのタイヤ幅でありながら、ステアリングインフォメーションとしてはしっかりしている。まるでワイドなスポーツタイヤを装着しているかのようにも感じる。コーナーでアウト側にGをかけてもサイドウオールがねじれたり腰砕けになったりする予兆は微塵もなかった。

タイヤ
タイヤ幅は細いがステアリングフィールは良好
証明書
i3試乗を終えるとc02フリー走行証明書を屋久島町長から頂いた

BMW i3は全く新しいアーキテクチャーとしながらも五感に訴えるものは、BMWブランドのポリシーが盛り込まれている。したがって、サスティナブルなEV車でもドライビングプレジャーも非常に強く感じられるもので、BMWらしい新たなサブブランドの誕生だといえる。

■BMW i3主要諸元

BMW iスペシャルサイト

BMW公式サイト

COTY
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