BMW5シリーズが2023年7月にフルモデルチェンジを行ない8代目となった。プレミアムEセグメントのエグゼクティブ・セダン523iに試乗してきたのでお伝えしよう。
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新型の523iを眺めてみるとセダンへの専心を感じる。フォーマルで格式の佇まいはエグゼクティブ・セダンとしての風格を漂わせているのだ。先代よりも大柄になり、全長5030mm、全幅1900mm、全高1515mm、ホイールベース2995mmというサイズでちょっと前の7シリーズに迫る大きさ。ゆえに醸し出されるセダンの風格は格上げされ、凄みも増したと感じるのだろう。
ロングノーズでシャーク顔、大きなキドニーグリルは夜間でも目立つアイコニック・グローを装備。キドニーグリルの周囲が光り、BMWの存在感が輝く。Cピラー周辺のホフマイスターキンクのデザインとCピラーに「5」がエンボス加工され、乗る前から、そのオーセンティックなデザインを貫くBMWのこだわりを感じる。
ドアを開け乗り込むと、やや!ステアリングは2本スポークになり、丸いハンドルという概念が覆る。そして目を惹くカーブドディスプレイや明らかに少なくなったスイッチ類により、先進感や未来を感じ沸々と心胆に何かが沸き起こり熱くなる。しかし、何をどうすれば・・・といった戸惑いがあったことも事実。少しの時間を割きタブレットに触れていくと、まさにオーディオ・ディスプレイの域ではなく、タブレットに進化していることに気づく。
室温調整からナビ、そしてADASの設定まですべて、このカーブドディスプレイで操作することができ、しかもありがちな階層深くになっていないのだ。この作業領域の区別は作る段階でのドメイン構成が全てで、集約すればするほど、使い勝手が悪くなるという傾向をすでに経験している。そうしたECUの統合方法すら未来を感じてしまうのだ。
近年クルマの電動化が進む中、コンフォート系、パワーユニット系、インフォテイメント系、ドライビングダイナミクスなどにドメインを作り、ハードパーツも一体化させていく方向にある。そして制御するECUも統合されていくが、ユーザビリティとしては使い勝手の向上と、できなかったことができるようになる快感の双方を期待する。そうしたニーズを深く理解しているように感じられる5シリーズのディスプレイには気持ちよさが伴った。もちろん「OK BMW」で起動する音声AIも搭載しているのは言うまでもない。
◾️BMWらしいドライビング
センターコンソールにあるクリスタルでまとめたドライブセレクターを「D」へシフトし動き出す。エンジンは直列4気筒2.0Lガソリンに48Vマイルドハイブリッドを搭載。190ps(140kW)/310Nmの出力を8速ATが滑らかに駆動力を伝え滑り出すように動く。
コンフォート・ドライビングパッケージをオプション装備した試乗車はアダプティブ・サスペンションとリヤ操舵も装備する。リヤ操舵システムは「インテグレーテッド・アクティブ・ステアリング」の名称で前後操舵が統合制御され車両姿勢を作って行く装備だ。
アダプティブサスペンションは、低速域をしなやかな身のこなしを見せ、乗る人全員が快適と感じながら動く。速度を上げ交通の流れに乗せて走るとエンジ音は一切聞こえてこない。まるでEVのように静かに走行する。そしてアクセルを踏み込めば素早くレスポンスし加速体制に入る。このあたりのエンジン、ミッション制御とアクセルとのしつけ具合は伝統であり、BMWらしい駆けぬける歓びを謳うブランドらしさが堪能できる。
2本スポークとなったステアリングもドライビング中は視界から消え、気持ちの良いライントレースを味わいながらステア操作ができる。程よい手応えとフィードバックを手のひらに感じられるのもBMWらしさだ。
後席のラウンジ感たるや5シリーズ自身を超える快適性を持っているのではないだろうか。足元も広くゆったりと座れるシート。シートバックの後傾角は長年のデータの積み重ねで最適な角度に設計され、ゆとりを感じさせる快適さがある。また、トランクスペースもゆとりがあり、ゴルフバッグを真横に積んでもまだ余裕があり、奥行きもあって実用的と感じるトランク容量だ。
SUV一辺倒な国産車だが、見えない潮流に流されることなく、守るべきものにはこだわり続け、すべての性能を昇華させるモノづくりには感心させられる。そしてダイナミック性能にはさまざまな電動制御が入りながらもBMWらしさが際立ち、ステアリングを握るものを笑顔にし、そして同乗する人が快適な移動空間が提供されてることをたっぷりと味わうことができたドライブだった。
試乗車BMW 523i Exclusive
車両本体価格:798万円
オプション合計:167万8000円
総額:965万8000円
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