BMW 3シリーズ ブランドのこだわり、技術へのこだわり

マニアック評価vol599

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登場以来41年目を迎えた3シリーズ。ノイエ・クラッセから数えると55年目

現行のBMW 3シリーズ、「F30型」は2011年秋にドイツで発表され、日本には2012年1月に導入された。3シリーズとしては6代目となる。旧型のE90型から6年振りのフルモデルチェンジで、型式名からも分かるように新世代のモジュラー・プラットフォームが採用されている。

■モデルバリエーション

3シリーズのステーションワゴン、ツーリングにはF31型(2012年9月導入)、5ドアのグランツーリスモはF34型(2013年6月導入)となっている。

2012年1月に登場したF30型3シリーズ
2012年1月に登場したF30型3シリーズ

また新たに4シリーズの名称でクーペ・シリーズ(F32、F33、F36型)が設定され、2013年9月に日本に導入され、3/4シリーズ全体では搭載エンジンも含め多数の車種展開となっている。もちろんヨーロッパでは、さらに日本には導入されていない316i、316d、318d、325d、330dなども存在している。

2012年9月に発売された3シリーズ ツーリング
2012年9月に発売された3シリーズ ツーリング(F31)

3シリーズはドイツ以外に、メキシコ、ブラジル、南アフリカ、エジプト、ロシア、インドネシア(ノックダウン)、マレーシア(ノックダウン)、インド、中国などの工場で生産されていることからもわかるように、ワールドワイドに展開しているBMWの基幹車種である。

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2013年6月に追加されたグランツーリスモ(F34)

現在では3シリーズはC/Dセグメント、またはコンパクトDセグメント・エグゼクティブカーと呼ばれるポジションに位置しており、初期の3シリーズとはかなりポジショニングが変わっている。

ボディサイズは、セダンは全長4645mm、全幅1800mm、全高1440mm、ホイールベース2810mmで、従来型に比べ全長が93mm、ホイールベースが50mm延長されている。また全幅はヨーロッパ仕様は1811mmだが、日本仕様はE90型と同様に1800mmに抑えられ、そのためにドアハンドルが専用品になっている。

ツーリングは全長4645mm、全幅1800mm、全高1460mm、ホイールベース2810mmとセダンと同サイズ。グランツーリスモは全長4825mm、全幅1830mm、全高1510mm、ホイールベース2920mmと一回り大きなサイズで、このホイールベースは中国市場向けのセダンと同サイズにしている。

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プラグインハイブリッド「330e」のドライブトレーン

グレード展開は、「スタンダード」、「スポーツ」、「モダン」、「ラグジュアリー」、「Mスポーツ」の5種類。さらに4WDのxDriveも設定されている。また2016年1月にプラグインハイブリッドモデル「330e」が日本に導入されている。

■後期モデルは2016イヤーモデルから

F30型3シリーズは、2015年8月にビッグマイナーチェンジされ、それまでは前期型として扱われ、2016イヤーモデルから後期型となる。後期型はコロナ・リング・デザインを採用した「LEDヘッドライト」と、「LEDフォグランプ」を全車に標準装備とするなどフェイスリフトを行なうと同時に、搭載エンジンを新世代エンジンに切り替えている。

3シリーズ後期型
3シリーズ後期型
BMW 340i
特徴的なLEDヘッドライト

また装備では、2013年夏以降のモデルから歩行者検知機能付きの「衝突回避・被害軽減ブレーキ」や、ミリ波レーダーにより前方の車両との車間距離を維持しながら加減速を行ない、低速走行時には車両停止まで制御する「アクティブ・クルーズコントロール」、車両の通信機能により緊急の手配が可能となる「BMW SOSコール」などが標準装備され、装備を充実させている。(スタンダードモデル除く)

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ボディは先代よりさらに軽量・高剛性とされ、ボディ重量は1490kg~1595kg。デザインは、当時のデザイン本部長、エイドリアン・ファン・ホーイドンクの監修の元で、クリストファー・ヴェイルが担当した。先代と比べ大幅なデザイン変更を行なわず、手堅い正統派のエクステリア・デザインを採用している。

■典型的なダウサイジングコンセプト

サスペンションはフロントがダブルジョイント式ロアアームを持つストラット式、リヤはマルチリンク式で統一されている。BMWがこだわるフロントのダブルジョイント式ロアアームは、各ジョイントの延長線上に仮想キングピン軸を設けることで、ストラット式では不可避のホイールセンター部分における大きなキングピン・オフセット量を縮小でき、よりダイレクト感があり路面からの外乱入力を減らした操舵フィーリングを目指すためだ。

ダブルジョイントしてロアアームを組合わせたストラット式サスペンション
ダブルジョイントしてロアアームを組合わせたストラット式サスペンション

こうした点は、BMWのブランド・ステートメントである「完璧なるドライビング・プレジャー(Sheer Driving Plesure)」を実現するために譲れない部分なのだ。またBMWが目指す運動性能を確保するために、前後の荷重配分を50:50とすることも重視し、エンジンはフロントアクスルより後方に搭載され、エンジンの後端部とトランスミッションはキャビン内のセンタートンネル部に配置されている。

このためキャビンのパッケージの面では室内への突出容積が大きくなり居住スペースでは不利になるが、あえてこのレイアウトを採用している。さらにリヤ部分にバッテリーを置くなどリヤ荷重を意図的に重くすることで前後荷重配分の50:50を達成している。

しかしその一方で、搭載するエンジンは大きく変貌している。BMWの走りに対するこだわりはエンジンにも集約されていたが、エフィシェント・ダイナミクスをサブ・スローガンとして打ち出して以来、ダウンサイジング・コンセプトを採用し、自然吸気エンジンから直噴ターボへとシフト。結果的には、BMWの代名詞であった直列6気筒エンジンも排気量3.0Lのターボだけとなり、自然吸気エンジンは姿を消している。

スプレーガイド式直噴システム
スプレーガイド式直噴システム
バルブトロニック,ダブルVANOSを組合わせたシリンダーヘッド
バルブトロニック,ダブルVANOSを組合わせたシリンダーヘッド

また3シリーズの搭載エンジンは、モデル導入時には直列4気筒はN20B20型(84mm×90.1mm)、6気筒はN55B30型(84mm×89.6mm)であったが、2015年夏にビッグマイナーチェンジを行ない、搭載エンジンは新世代バージョンに一新されている。

4気筒はB48B20型となりボア・ストロークは82.0mm×94.6mmに、6気筒はB58B30型でボア・ストロークは4気筒版と同一の82mm×94.6mmとなっているのだ。このことからわかるように新世代エンジンは完全なモジュラー設計のロングストロークとなり、1気筒当り500ccの排気量とし、3気筒から6気筒までのバリエーションを展開できるようになっているのだ。

前期型に搭載されたN20B20型
前期型に搭載されたN20B20型
新世代の6気筒「B58B30型」
新世代の6気筒「B58B30型」

つまり、高回転型ではなく低中速トルクを重視し、最高回転数を低めた典型的なダウンサイジング・コンセプトの低速型エンジンとなっているのが大きな特徴だ。

エンジンのメカニズムに関しては多くの技術が投入されており、ポンプ損失を低減する可変リフト機構(バルブトロニック)、吸排気可変バルブタイミング、スプレーガイド(燃焼室中央噴射)式の直噴システム、電子制御式の油水温コントロール、低フリクション化などを網羅している。なおは、高出力仕様のスプレーガイド式直噴エンジンはピエゾ式直噴インジェクター、標準仕様はソレノイド式直噴インジェクターを組み合わせている。

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今では3シリーズのメインエンジンとなった、2.0Lディーゼル。画像は前期型用のN47D20型

ディーゼル・モデル、「320d BluePerformance」は、2012年9月に追加された。これ以後、3シリーズでディーゼル・モデルが急速にシェアを拡大し、現在ではメイン・エンジンと位置付けられている。前期型は2.0LのN47D20型(84mm×90.0mm)が搭載されたが、後期型は新世代化され、B47D20型になっている。N47D20型は高性能版にはピエゾ・インジェクター、それ以外はソレノイド式インジェクターを併用し、噴射圧は1800バールだったが、新世代はソレノイド式インジェクターに統一され、噴射圧も2000バールにアップしている。

■3シリーズのルーツは深い

BMWはテレマティックスも早くから充実させ、現在ではクルマに通信モジュール(SIMカード)を装備し、2G/3Gを使用した通信により、ディーラー、メーカーへの車両情報の送受信、緊急用通信、オプションでは通信によるコンシェルジュサービスも採用している。

BMWが推進するコネクテッド・ドライブ
BMWが推進するコネクテッド・ドライブ

BMWのブランドは、数ある世界の自動車メーカーの中で、最もぶれない、強固なブランドと言われている。それは、「Freude am Fahren(ドイツ語)」、アメリカでは「The Ultimate Driving Machine」、グローバルでは「Sheer Driving Pleasure」などのスローガンに象徴されるドライビング・プレジャーに対する取り組みだ。ドライバー重視の俊敏な操舵フィーリング、ドライバーの意思を重視した運動性能といった走りの質にこだわったクルマづくりが一貫している。

そのBMWのブランドの原点になったのは、1961年に登場したノイエ・クラッセ(ニュークラス)、BMW 115(1500)だ。戦後、経営が苦しく1950年代後半には破綻寸前まで追い詰められたBMWが送り出した乾坤一擲のスポーティセダン「115」、その後には116、118、120/121というバリエーションの成功によりBMWは再建され、躍進した。

ノイエ・クラッセと呼ばれる115(1500)
ノイエ・クラッセと呼ばれる115(1500)

そのエンジンは先進的なOHC、5ベアリングで、このエンジンに影響を受け、同形式、同構造のG7型、G15型エンジンがプリンス・スカイラインに搭載されている。

BMW 3シリーズは、ノイエ・クラッセのDNAを受け継ぐクルマであり、ラグジュアリーさとダイナミックな走りを両立させたクルマなのである。

 

 

 

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