2012年12月12日、BMWグループとアメリカのボーイング社(シアトル市)は、炭素繊維(カーボンファイバー)のリサイクルに関する共同研究の実施、製造に関して、情報共有、オートメーション化の可能性を検討するという内容で、提携合意を発表した。
BMWグループとボーイング社は、自動車と航空機の分野で、製品へのカーボンファイバー導入に積極的なメーカーだ。BMWグループでは「i3」を2013年後半、その後「i8」と、量産車として初めてカーボンファイバーを採用する2モデルの導入を予定している。一方、ボーイング社にはカーボンファイバーの採用率50%を実現した「787ドリームライナー」がよく知られている。このためカーボン製品の使用部位に関するノウハウや、製品の廃棄時点における複合材リサイクルの実現は、両社にとって共通の課題となっている。
BMW AG開発担当上級副社長のヘルベルト・ディースは次のように語っている。「ボーイングはBMWにとって、炭素繊維分野における提携先にふさわしい企業です。航空機分野での炭素繊維利用で長年豊かな経験を培ってきたボーイングに対し、BMWグループは炭素繊維部品の量産に特殊な製造方法を採用することで、大きな競争力を獲得してきました。今回の提携を通じて両社は航空業界と自動車業界のノウハウを融合し、持続可能な生産を実現することができるはずです」
シアトルで行われた両社の提携合意調印式に、ボーイング社を代表して出席したボーイング商用航空機部門・製品開発担当上級副社長のラリー・シュナイダーは次のように語った。
「今回の提携合意は、炭素繊維材の利用および最終用途を促進・開拓する上できわめて重要な一歩となります。炭素繊維で作られた製品は廃棄計画を策定しておくことが非常に重要ですが、ボーイングとしては回収・再利用して新しい製品に活用する方法を模索したいと考えています。BMWグループとの提携は、その目的を達成する上で役立つことでしょう」
ワシントン州知事のクリスティン・グレゴア氏は、モーゼスレイクにBMW工場建設用地を確保するのに中心的な役割を果たしたほか、ボーイング社とBMWグループの提携の推進役を務め、次のように述べている。
「各業界をリードし、グローバル規模で活躍する両社の間に、このような素晴らしい提携が成立したことは、ワシントン州にとっても朗報です。これによって当州も時代のカギとなる炭素繊維技術開発の能力と優位性をさらに高めることができます。BMWとボーイングの両社が力を合わせたことは業界の必然的な流れであり、私も大変嬉しく思います」
今回の提携合意の下で、ボーイング社とBMWグループは炭素繊維製造プロセスのシミュレーションやオートメーション化のアイデアを共有することになる。なお、この異業種の提携合意は双方にとって過去に例がないものだ。
BMWグループではSGLグループと共同で設立した合弁会社のSGLオートモーティブ・カーボンファイバー社は、生産拠点として米国ワシントン州モーゼスレイクに最新鋭の炭素繊維工場を建設している。同工場は、今後の自動車モデル向け超軽量炭素繊維強化プラスチックの生産オートメーション化に向けた重要な拠点となっており、同工場が生産する炭素繊維は、BMWグループの「i3」および「i8」専用に使用されることになっている。
このモーゼスレイク工場で生産された炭素繊維は、ドイツのヴァカースドルフ工場に送られ、炭素繊維から織布を作り、これをランツフート工場で軽量CFRPボディ部品に成形加工している。BMW i3はこれを用いてBMWライプツィヒ工場で組み立てられる。
今回の提携は、カーボンの成形加工技術のさらなる開発とカーボン部品の廃棄後のリサイクル、つまり廃棄されるカーボン部品からカーボン繊維だけを回収に関する技術を共同開発することが狙いと考えられる。