前回は主にエンジン本体とターボユニットについて探求してみたが、今回は補器類まで範囲を広げてBMWの魅力に迫ってみたい。
<電動ウォーター・ポンプ>
一般的なエンジンではウォーター・ポンプはエンジンの動力で駆動され、常にポンプは作動し冷却水を循環させている。そしてポンプ容量はエンジンが最も高温となる運転状態でも、十分な冷却を行えるように設定されており、冷却水の水温調整は、ラジエーターに送る冷却水の量を変化させることで行っている。
一方電動ウォーター・ポンプは電気モーターで駆動するため、エンジン回転数とは関係なく、冷却水循環量を自在に制御することができる。エンジンが冷えている時には、冷却水循環量を抑えることが可能で、ポンプ駆動のためのエネルギーを節約することにもできる。
また、冷却水の温度をきめ細かく制御できるため、通常の走行時には冷却水温度を高めにしてフリクションを抑え、高速走行をする場合には、ウォーター・ポンプを積極的に駆動させ、冷却水温度を低めにして、出力を最大限まで引きすなど、エンジンの効率を最優先に考えた水温コントロールが可能になる。この電動式ウォーター・ポンプは日本では、プリウスなどごく一部しか採用されていないが、本来は全てのエンジンに有効な技術だ。
<マップ制御式オイル・ポンプ>
エンジン内にオイルを循環させるオイルポンプもエンジンの動力で駆動され、オイルポンプはアイドリングのような低回転でも十分な循環量を確保するように設計されている。そのため、エンジン回転が上昇するに従って循環量は増加する。一般的なエンジンでは、オイルの流路に単純なバネを用いた調節弁がついているだけで、日常よく使用する2000rpm前後の領域では、実は必要以上にオイル循環されていて、結果的にフリクション、駆動損失を生み出しているのだ。
マップ制御式オイルポンプはオイルの循環量をきめ細かく制御するため、常にエンジンが潤滑に必要としている分だけをオイル循環させることができるというもので、これもすべてのエンジンに有効な技術である。
<カップリング付エアコン・コンプレッサー>
エアコンのコンプレッサーそのものを、クラッチによってエンジンの駆動から切り離し、無駄なエネルギーの消費を抑制するものだ。近年のエアコンのコンプレッサーは、可変容量型コンプレッサーが使用されていて、エアコンがOFFの時にはコンプレッサーは最小の容量で作動しているが、そのような状態でもコンプレッサーが回転する際の摩擦抵抗等により、エンジンにかかる負荷はゼロではない。カップリング付エアコン・コンプレッサーは、この負荷を取り除くものだ。
<ブレーキ・エネルギー回生システム(マイクロ・ハイブリッド・テクノロジー)>
ブレーキ・エネルギー回生システムは、加速時には発電を行わず、バッテリーが蓄えている電力で対処している。つまり加速時にはオルタネーターは駆動されないわけだ。
では、バッテリーを充電するタイミングだが、クルマが減速時、すなわちドライバーの足がアクセルペダルから離したに、これまで捨てられていた運動エネルギーを使用してオルタネーターを駆動し充電している。
従来の車両はバッテリーを充電するために、オルタネーターは常に駆動され、加速時にもエンジンの動力を使用している無駄があったのだ。
ブレーキ・エネルギー回生システムでは、インテリジェント・バッテリーセンサーが、バッテリーの充電状況をモニターし、バッテリーの残量が一定のレベル以上(図の緑色のゾーン)ある場合は、加速中にはオルタネーターを駆動しない。
車両が使う電力はバッテーに蓄えられた電力によってまかなわれ、減速中にはオルタネーターは最大出力で発電している。減速する頻度が少なく、バッテリーが蓄えていた電力を消費し続け、残量が中程度に下がると(図の黄色のゾーン)、オルタネーターは加速中でも発電し、車両が使用している電力を補う分だけを発電する。
また、バッテリーの充電のためだけの発電は行わないので、オルタネーターが必要とする動力(燃料消費)は少ない。そして減速時には充電が行われる。さらにバッテリーの残量が一定レベル以下になると(図の赤色のゾーン)オルタネーターは従来通りの発電、つまり加速中でも発電を行うのだ。
つまり電力マネージメントを行えば、ブレーキ・エネルギーを回生でき、燃料消費を少なくすることができるのだ。残念ながら日本車では、充電制御(加速時や、満充電時に充電を抑制する)といったシステムが採用されている程度で、ここまでのマネージメントは達成されておらず、この点では遅れている。
<アクティブ・ハイブリッド>
BMW ActiveHybrid 7のシステム合計最高出力は342kW(465ps)で、最大トルクは700Nm(71.4kgm)。0→100km/hは4.9秒という圧倒的な運動性能を発揮する。
つまりBMW ActiveHybrid 7は、世界で最も高性能なハイブリッド・システム搭載モデルといえ、このあたりにBMWのハイブリッド観が見える。
BMW 750iおよび750Liに比べ、最高出力が14%、最大トルクが17%の向上を実現しているが、10・15モードで燃量消費率では約40%向上する。
小型軽量設計のリチウムイオン・バッテリーの採用により、ハイブリッド・システムによる車両の重量増は75kg、トランクスペースは460Lを確保し、実用性と機能性を犠牲にしていないあたりも特筆に価する。
また、ニューBMW ActiveHybrid 7は、BMWのオートマチック・トランスミッション車としては初採用となるアイドリング・ストップ機能、「ハイブリッド・スタート/ストップ機能」を装備する。このハイブリッド・スタート/ストップ機能の搭載によりアイドリング中にエンジンが自動的に停止し、信号待ちや渋滞での無駄な燃料消費を抑え、CO2 排出量および燃料消費量を削減する。特に発進と停車を頻繁に繰り返す日本の交通状況においては、このハイブリッド・スタート/ストップ機能が燃料消費量の削減に非常に大きな効果を発揮する。なおこのアイドルストップ/ハイブリッド適合8速ATはZF社の最新ユニットである。
<8速ATのトランスミッション>
省燃費には欠かせないファクターとなりつつある、ミッションの多段化だが、アクティブハイブリッド7、BMW5シリーズに搭載された8速ATはZF社製で、4つの遊星ギヤセットと5つのシフトエレメントから構成されている。また、トルクコンバーターには最新のトーショナルダンパーが装備されたことで、デュアルクラッチにも匹敵する変速応答を実現している。また、アイドルストップ機能が装備されたことで、エンジンがオンになってからわずか0.35秒後には車両が発進できる油圧インパルスストレージを、この8速ATに組み込むことで、快適性と省燃費への貢献は大きい。
文:編集部松本晴比古
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