BMW最新のエンジンテクノロジー その1

BMW Mobility of the Future – Innovation Days in Japan 2010と銘打たれたフォーラムが開かれた。

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そこでBMWが主張したものは、環境技術や、今後の技術的なロードマップを示すもので、東京だけではなく、ヨーロッパ、中国などでも開催されている。

まずはその技術的なロードマップ。いよいよ大型車、7シリーズのハイブリッドに続き、2010年中にX6ハイブリッドが投入されることになった。BMWも近い将来は、ハイブリッドカーとコンパクトサイズのEVカーの採用で環境対応していくことを物語っている。すでに、MINI Eは実証実験車として600台がドイツ、ヨーロッパ、アメリカを走っており、また、引き続き1シリーズ・クーペをベースにしたBMWコンセプト・アクティブEが2011年から実証実験走行車が登場するという。

<直噴システムとターボユニット>

では早速、現在採用されている個別技術に目を移してみることにしよう。

まずはガソリン直噴インジェクション・システムだ。噴射圧が2000気圧のスプレーガイデッド・インジェクションである。デザイン的な特徴は、この高圧噴射のインジェクターが燃焼室の真上、点火プラグに接するように位置にあることだろう。燃焼速度が最大限に追及されていることが分かる。また、リーンバーン運転も行っているとしている。

また高圧直噴とあわせ、ターボを採用する方向も明確になっている。VWほど明確にダウンサイジング・コンセプトを提唱していないが、直噴+過給により小排気量化は間違いないだろう。具体的には、BMWはターボユニットを「ツインパワー・ターボ」という呼称を採用している。

 

直噴インジェクター

<335i と535iのツインスクロール・ターボ>

直6用ターボは2種類あって、まずはツインスクロール・ターボ。

BMW 335iやBMW 535iなどの直列6気筒3.0Lエンジンではツインスクロール・ターボを採用している。実はBMW初のターボ、BMW2002tiターボはツインスクロール・ターボであった。ただ当時は、ターボの材質などが完璧ではなく短命に終わっている。

ツインスクロール・ターボはシングル装備で、ターボチャージャーの排出ガス導入口を2つに分けることにより、各気筒の排気の流れの干渉を抑え、バルブトロニックと組み合わせることで、これまで以上にシリンダーへの吸入レスポンスが高まる。さらには燃焼ガスのシリンダー外への排出も促進されるため、過給圧の立ち上がりが早く、結果としてターボ・ラグが解消できるメリットがある。

ターボの2つの排ガス導入口にはそれぞれ1〜3番気筒と4〜6番気筒の排出ガスが導入される。直列6気筒エンジンの点火順序は1-5-3-6-2-4なので、排出ガスはそれぞれの導入口に交互に導入されることになり、互いの排気ガスの流干渉がなく、排出エネルギーが効率よくターボ翼に導かれるのだ。

 

ツインスクロールターボ

<740iのツインターボ>

一方、同じ直列6気筒でもパラレル・ツインターボが採用されているモデルもある。BMW 740i/740Liなどの直列6気筒3.0Lエンジンはよりパワーを引き出すべく小型ターボを2連装する。それぞれのターボが1〜3 番気筒と4〜6 番気筒の排ガスを受け持つ。

ツインターボ化のメリットは、ひとつひとつのターボチャージャーが受け持つ排気ガスが少ないため、ターボ本体を小型化でき、レスポンスを向上させることが出来るところにある。ボディの大きい7シリーズであれば、補器類の増加は大きなデメリットとはならないであろう。

 

直6ツイン

<550iや X5のV8+ツインターボ>

V型8気筒ツインターボを搭載する 550iやX5 xDrive50iの 4.4Lツインパワー・ターボエンジンは、2基の小型ターボ・チャージャー(4気筒に各1基)をV型のシリンダー・バンクの間に配置する独特のレイアウトを採用している。

通常、V型8気筒の場合、バンクの外側が排気で内側が吸気となっているが、BMWは外側が吸気、Vバンク内側が排気と、通常とは吸排気を逆転したレイアウトになっている。だから、このレイアウトのために排気マニホールド、吸気経路がともに短く、エネルギー損失や圧力損失を最小限でき、エンジンのレスポンスを向上させている。

 

V8ツイン

<MシリーズのV8+ツインターボ>

Mモデル用のV型8気筒エンジンには、2基のツインスクロール・ターボを搭載し、Vバンク間に配置する。このようにVバンク間にレイアウトする手法は、他のBMWモデルのV8と同じだが、搭載されるタービンが、ツインスクロールタイプであることが特徴だ。

このターボユニットには独特のクロスバンク・エキゾーストマニホールドを採用している。つまりツインスクロールとし、より強力なトルクとクイックなレスポンスを追及し、エンジンが持つポテンシャルを最大限引き出し、アクセルを踏んだ瞬間から強力なパワーを発揮される、まさにパラノイア的なレイアウトといえる。

この強烈なレスポンスを示す中核を成す技術がクロスバンク・エキゾーストマニホールドである。通常V型8気筒のツインターボである場合、ひとつのターボが片バンクを担当し、550iやX5に搭載されているタイプになるが、Mシリーズではクロスタイプのエキマニとすることで、対向するバンク間の2気筒ペアで排出ガスを集約し、合計4本の独立した排ガスの流れを作り出す。その4本の排気ガスは2 基のツインスクロール・ターボに導きかれ、そのツインスクロール・ターボは4本の通路を持っているため、それぞれの排気ガスは相互の干渉が回避でき、独立したまま4つの導入口を介してタービン翼まで導かれる。この結果過給圧の立ち上がりが早く、自然でダイレクトなレスポンスを実現することができるのだ。このクロスバンク・エキマニはBMWが特許を保有している。

V8ツイン 2

<760iのV型12気筒ツインターボ>

760LiのV 型12気筒6.0Lツインパワー・ターボは、片側バンクごとに1基ずつターボを装備。つまりこれは通常のレイアウトである。V型12気筒のバンク角は60度とV型8気筒エンジンよりも狭いため、Vバンク間にはレイアウトできず、エンジンルーム内の空間を有効に活用する観点から、ターボチャージャーは両バンクの外側に置かれている。

 

 

<バルブトロニック>

 

もはやBMWの伝統的技術といえるバルブトロニックは、スロットル・バタフライを持たず、バルブのリフト量とリフトしている時間を自在にコントロールすることができるもの。

スロットル・バタフライがないために、ここでのポンピングロスは生ぜず、燃費は向上する。また、アクセルペダルを踏んでからのシリンダー内への流入空気の応答がいいために、エンジンレスポンスも良くなるメリットがある。

そして第三世代のバルブトロニックはインジェクターと干渉しないように、サーボモーターの位置が変更され、バルブリフト量を制御する、エキセントリックシャフトの位置検出用センサーをサーボモーターに内蔵するなど、より洗練された構造に進化している。

 

 

バルブトロニック

 

<ダブルバノス>

 

スロットル・レスの吸気を実現させたもうひとつのBMWテクノロジーにバノスがある。これは吸気バルブの開閉タイミングを、油圧を使って自在にコントロールする技術で、低回転から高回転まで、最適な量の空気を吸い込むことを可能にしている。

一方排気バルブにも油圧制御し、高回転になればなるほど短時間で排気しなければならず、エンジン回転数に応じた開閉タイミングを変化させ、吸気、排気のバノスを合わせたダブルバノスによって、低中速の出力を犠牲にせず、最高出力を向上させる技術なのだ。

 

 

 

次回はエンジン以外についてプローブした結果を報告したい。(編集部HM)

 

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