
2025年3月25日に国内発表をし、4月15日から発売がはじまった「アウディQ6 e-tron」は、多くの注目ポイントがある興味深いモデルだ。そのQ6 e-tronを早速ドライブする機会があったのでお伝えしていこう。
まずは見た目がこれまでのSUVのQシリーズとは異なっている。これまでのQシリーズはキャビンフォワードで室内を広くする狙いのデザインだったが、Q6 e-tronはキャビンが後退し、前後のオーバーハングも小さくスポーティなデザインになっている。アウディもSUVでありながらスポーティデザインにすることができ、「完璧なSUVのプロポーションの実現」というミッションがクリアできたと説明しているのだ。



これはベースとなるプラットフォームに、PPE(プレミアム プラットフォーム エレクトリック)を採用したことで、こうしたデザインにできたという。PPEはEV専用プラットフォームであり、ミッドサイズからフルサイズまでカバー。ポルシェとも60〜70%は共通になっているという。

少し余談になるが、Q6 e-tronはドイツ・インゴルシュタットで生産されるが、その工場は2025年1月にカーボンニュートラル(CN)を達成したという。そしてモーターは2020年にCNを達成しているハンガリーのジェール工場で生産されており、Q6 e-tronは完全なCN工場で生産されたEVというモデルなのだ。
アウディのe-tronシリーズは、まず2020年に「e-tron」の名で登場。その後「Q4 e-tron」が2022年にデビューし、「e-tron」は「Q8 e-tron」と車名変更。そして今回ミッドサイズの「Q6 e-tron」がデビューした。
関連記事:アウディ ミッドサイズSUV Q6e-tronを発表 最新のE/EプラットフォームでECUの統合制御を実現

そしてもうひとつの注目ポイントは、E/Eアーキテクチャーが第3世代へと切り替わっていることだ。電気/電子のプラットフォームはECUで制御する車載アプリケーション、ポートフォリオを集約したもので、現在の主流は大きく3つのドメインに分け、それぞれのECUで制御していくスタイルだ。
そのドメイン制御は、フォルクスワーゲンが開発するヴィークルOS「CARIAD」を搭載したことも大きなトピックになる。もっともCARIADは現在のPPEプラットフォームの次に予定されている「SSPプラットフォーム」で本格搭載を予定しているヴィークルOSだ。
このCARIAD OSを搭載可能としたのは、ECUを統合制御できる母艦となるHPC(ハイパフォーマンス コンピュータ)に切り替わったことでCARIADが使えるというわけだ。
そうしたことで、例えばヘッドライトの光り方を変更するECUやアンドロイドOSをCARIADの下にぶらさげることで、ChatGPT、アレクサ、Googleを搭載し、複数のAI制御が可能になっている。
このようにE/Eアーキテクチャーの中身の凄さは一般的には理解されないものの、車内エンターテイメントの豊かさなどで、その魅力を感じることができるのだ。
というわけでハードのプラットフォームPPEで作られた車体とヴィークルOSのCARIADを運用するためのE/Eアーキテクチャーで商品価値を向上させたQ6 e-tronは、非常に静かで、かつスポーツドライブが楽しめるモデルなのだ。






Q6 e-tronのラインアップはRWD(リヤ駆動)とクワトロ(AWD)、そしてSQ6 e-tronの3モデルがあるが、今回試乗したのは「Q6 e-tronクワトロ」だ。フロントに誘導モーター(ASM)を搭載し、リヤに同期モーター(PSM)を持つクワトロ。誘導モーターは大きな負荷が要求された時に駆動をする仕組みで、丁寧な乗り方だと駆動配分は0-100になっている。誘導モーターを採用する理由としてモーターの製造コストもあるが、この完全に駆動から切り離せる性能が魅力ということになる。
だから市街地をクルマの流れに沿って走行する限りRWDで走行しているが、路面の環境や負荷のかかり次第でシームレスにフロントモーターが駆動する。ちなみにモーター、減速機、インバータで構成されるユニットは3 in 1構造で、従来より30%小型化をしている。
バッテリーはクワトロ用が100kWhの電池容量で、150セル10モジュール構成の三元系リチウムイオンを搭載し、出力は285kWで航続距離は644kmとロングレンジだ。ちなみにRWDモデルは75.8kWhの電池容量で、185kWの出力、569kmの航続距離となっている。そしてスポーツモデルとなるSQ6 e-tronはクワトロと同じ100kWhの電池容量で、出力は360kWと大きく、672kmもの航続距離を持っている。
Q6 e-tronの回生制御は次世代型へと進化し、95%が回生エネルギーによる減速になる。パドルシフトを使わずともフットブレーキを踏んでも回生ブレーキで対応している。このあたりもE/Eアーキテクチャーの進化によるところが大きい。
そして回生ブレーキの制御は4段階ありパドル0状態がコースティング・モードで回生はゼロ。そして左側のパドルを3段階にわけて回生の強さが変更される。またシフトレバーのBを選択するとワンペダル・ドライブが可能になり停止までする仕様だ。 ヴィークルOSのCARIADが、どのドメイン制御を担当しているのかは不明だが、このようにコンピュータの性能があがり、OSもアップデートされていくと使えるアプリケーションが増え、ユーザーへの提供価値が上がることを実感する。さらにダイナミック性能やAD/ADAS系もCARIADで制御されると、いよいよ自動運転の領域へと入り、新しいモビリティへと変化してくことになる。今はその変革の最中であり、変化していく姿を実体験できる貴重な時代ということもできるのだ。




価格

Audi charging station厚木が全電気自動車ユーザー向けにオープン

アウディの正規販売店であるAudi厚木の敷地内に新たに開設した「Audi charging station厚木」。最大出力150kWの蓄電池型超急速EV充電器を2基備え、4スロットそれぞれのポートから同時に急速充電が可能。新東名高速「厚木南IC」の直下に位置し、長距離移動の際にも便利。
所在地:神奈川県厚木市戸田252-1
営業時間/定休日:年中無休 24時間利用可能