2015年5月7~8日、オーストリアの首都、ウイーンのホーフブルク宮殿で開催された国際自動車技術会連盟(FISITA:Federation Internationale des Societes d’Ingenieurs des Techniques de l’Automobile)主催の第36回自動車エンジンシンポジウムで、アウディは新世代の2.0L TFSIエンジンのワールドプレミアを行なった。
国際自動車技術会連盟は自動車生産国を中心とした、33ヶ国16万7000人の会員を擁する自動車技術会の国際機関で、2年おきに国際会議が開かれる。第36回となる今回はオーストリアで自動車エンジンシンポジウムが開催された。
このエンジンシンポジウムでアウディが発表したのは4気筒ガソリン2.0L・TFSIで、2.0Lターボ・エンジンのクラスで最高の熱効率を誇り、190ps、320Nmを発生。この最新世代エンジンは今秋に登場する次期型A4に搭載される計画だ。
アウディは10年以上前に量産用の直噴ターボエンジン、TFSIを実現した世界初のメーカーで、その後はこの技術コンセプトのダウンサイジングとエンジンの低回転化は世界のガソリンエンジン技術のトレンドセッターとなった。
技術開発担当取締役のU.ハッケンベルク博士は、「今、我々は次世代の、技術原理にのっとった先進的なライトサイジングを開発し採用します。これまでのダウンサイジング、低回転化はクルマのクラスやユーザーの使い方が最適な場合にのみ効果的でしたが、我々が開発・提唱する新しいライトサイジングのコンセプトは、車両クラス、排気量、出力、トルク、燃費などをすべてカバーするコンセプトなのです」と語る。
今回発表されたエンジンは1984ccの排気量で出力は190ps/320Nm、つまりリッター当たり出力は95psとなっている。320Nmの最大トルクは1450~4400rpmという広範囲で発生し、誰にでも、日常的に享受することができる。その一方で燃費は5L/100km(NEDCモード)と、従来のエンジンやライバルを大きく引き離す抜群のレベルとしている。
このエンジンは新たなミラーサイクル的な燃焼原理を採用している。クランク角は従来の190~200度を140度に縮小し、吸気時間を短縮。その一方で、より高い過給圧により吸気時間は短縮されているが十分な新気充填を行なうことができる。従来のミラーサイクル(アトキンソンサイクル)は吸気量が減少するため、出力・トルクは低下することが避けられなかったが、このエンジンは高過給を併用することでこのデメリットを解消しているのだ。
吸気バルブは早閉じとされ、下死点より早く閉じることで圧縮比をより高めることができている。そして低負荷、部分負荷の状態ではポート・インジェクターが作動しより効率的な混合気を生成する。高負荷では直噴インジェクターが作動する。
またこのエンジンは、従来とは逆に吸気側に可変バルブリフト機構(AVS)を採用し、部分負荷ではリフト量を減らし、高負荷ではハイリフトとすることでポンピング損失を低減。最大負荷はクランク角170度に設定されている。
エンジン開発責任者のステファン・クナシュ博士は、「このエンジンは部分負荷ではダウンサイジングエンジンの効果が、高負荷では大排気量エンジン並みの出力が得られるのです。つまり幅広い回転域で燃費性能と出力性能を引き出すことができます」と語る。
このエンジンは超軽量化され重量は140㎏に過ぎない。さらに新たな燃費対策技術も投入されている。シリンダーヘッド一体型の排気マニホールドを採用し、冷却水制御を行なうことでウォームアップ時間は大幅に短縮。また、高圧過給エンジンにもかかわらず潤滑オイルは0W-20を採用している。