【WEC2012】アウディR18 e-toronクワトロがベールを脱いだ!

2012年2月29日、ミュンヘン空港近くのアウディ・トレーニングセンターで世界耐久選手権(WEC)、ルマン24時間レースに参戦する2012年仕様のLMP1マシン、アウディR18のワールドプレミアが行われた。そこに登場したのは予告通りハイブリッドカーのR18e-tronクワトロと、従来型を大幅に改良したR18ウルトラの2台であった。この2種類のプロトタイプマシンがトヨタを迎え撃つことになる。


LMP1カテゴリーのハイブリッドマシン開発はプジョーが先鞭を付け、今年のルマンに向け2年以上にわたってテストを繰り返し熟成をはかってきたが、2012年に入って残念ながらプジョーは世界耐久選手権シリーズから撤退を決定した。

しかし、プジョーに代わり、トヨタがハイブリッドマシンでルマン24時間レース参戦を発表した。その概要は既報の通りだ。世界耐久選手権の車両規則によるとハイブリッドマシンは、2輪にのみブレーキ回生と駆動兼用モーター設置が許されるため、トヨタは、モーターをフロント配置(アイシンAW製)とするかリヤ配置(デンソー製)とするかを比較テスト中だ。フロント・モーターなら4WDになるが、リヤにモーターを配置すればミッドシップ駆動方式となる。また、トヨタは回生エネルギーを蓄えるために、電池の代わりに日清紡製の新開発キャパシタによる蓄電システムを採用しているのも特徴だ。

アウディは、2年前の2010年2月からLMP1のハイブリッドマシンを開発してきたという。契機になったのはプジョーに対抗するためであることは間違いない。一方、アウディ・モータースポーツのボス、ウォルフガング・ウルリヒ博士は、「アウディは市販車に反映する技術との連携を常に意識しながら、出場するレースのカテゴリーやチャンピオンシップを選択しており、クアトロシステム、TFSIエンジン、TDIエンジンの3種は、モータースポーツがいかに市販車向け技術の開発と強い連携を持っているかを示す顕著な例です。これらとほぼ同じ流れが、e-tronクアトロにも存在します。我々は、このまったく新しい技術が市販車に採用されるのに先立って、サーキットで実証実験するのです」と語っている。先行開発の要素を強調しているのだ。 R18 e-tronクワトロは、従来通りの120度V6型・2.7LのTDIターボディーゼル・エンジン(510ps)にハイブリッドシステムを組み合わせている。そしてブレーキエネルギー回生と駆動用を兼ねる水冷モーターは前輪の左右用に75kWのモーターを2個搭載。蓄電システムは、規則にしたがって500KJ(約139kWh)の容量を持つ電気フライホイール・システムを採用している。前輪をモーターで、後輪をエンジンで駆動する4WDになるため「クワトロ」の名称が付けられているのだ。

このフライホイール・ジェネレーターは恐らくポルシェがニュルブルクリンク24時間レースで911ハイブリッドに採用して実績を積んでいるユニットだろう。構造的には、ユニットはモーターの機能を持ち、真空状態のアキュムレーターの中でジャイロ状のフライホイールを回転させてエネルギーを蓄えている。減速時の回生電力でフライホイールの回転を加速させ、超高回転状態で保ち、駆動が必要なシーンでその回転力を生かして発電し、フロントのモーターに送電して駆動力を発生させるというものだ。

前輪のモーターの駆動力の発生は120km/h以上で行われ、前輪を駆動することで駆動力をブーストする。つまりF1グランプリにおけるKRSと同様に作動するわけだが、もちろんこれはレース規則により規定させているからだ。

↑左がウルトラ、右がe-tronクワトロ           ↑テスト中のR18 e-tronクワトロ

なお、アウディはルマン24時間レースには、R18 e-tronクワトロ2台と、従来型のR18も2台参戦する。こちらも大幅な改良が加えられ、車名はR18ウルトラと名付けられている。ただし、エンジンやトランスミッションなど主要コンポーネンツは、R18ウルトラもR18 e-tronクワトロも共通だ。

ウルトラの意味は、ウルトラ・ライトウエイト・テクノロジーをシンプルにしたものだが、今回の改良ではトランスミッションケースがカーボン複合材製にして、より軽量化をはたしている。もちろん他の部分もさらに軽量化されており、この軽量マシンがあってこそハイブリッドシステムも搭載できたという。

アウディチームの今後の予定だが、3月17日にセブリングで開催される世界耐久選手権・第1戦に2011年仕様のR18で出場。R18 e-tronクワトロは、5月5日のスパ・フランコルシャンがデビュー戦となる。もちろんこのレースにはR18ウルトラも出場し、ルマン24時間レースのリハーサルを行うことになる。アウディチームは、ルマン24時間レース後にはR18 e-tronクワトロとR18 ウルトラの2台で参戦する計画だという。

アウディ公式サイト

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