【WEC2020】アストンマーティン 「ヴァルキリー」ハイパーカーで2021年ル・マン24時間レース優勝狙う

アストンマーティンは2019年6月に開催されたル・マン24時間レースの現場で、2021年のル・マン24時間レースを含む世界耐久選手権(WEC)2020/2021年シーズンに、WEC用に専用開発した少なくとも2台のアストンマーティン「ヴァルキリー」ハイパーカーでワークス体制で参戦すると発表した。

シリーバーストンでテスト走行するヴァルキリー
シリーバーストンでテスト走行するヴァルキリー

ハイパーカーとは

ACO(フランス西部自動車クラブ)がFIA世界耐久選手権(WEC)の最上級クラスに「ハイパーカー規定」を導入するという発表を受けての決定だ。現在のハイブリッド・システムを搭載する超高性能プロトタイプカーLMP1クラスは、アウディ、ポルシェが撤退し、トヨタだけになり、レースとしての興味は薄れつつある。ハイブリッドカーのLMP1マシンは開発に巨額を要し、他の自動車メーカーの参入も期待できない状態だ。

新たにLMP1クラスの代わりに2021年以降5シーズンに渡り導入される「ハイパーカー」は、ボディサイズの最大値は全長5000mm、全幅2000mm、全高1150mm、ホイールベース3150mmといずれもLMP1規定と比べて拡大されている。また、最低重量も現行の980kgから1040kgに変更。

アストンマーティン 「ヴァルキリー」ハイパーカーで2012年ル・マン24時間レース優勝狙う

パワートレーン

そして注目のパワートレーンは、やはりハイブリッドで、ガソリンエンジン+MGU-K(運動エネルギー回生システム)からなるハイブリッドシステムは、LMP1とは違って量産システムであることが必須となっている。

そのため自動車メーカーは参戦初年度のシーズン終了時までに、市販用にエンジン+ハイブリッドシステムを最低25基生産する必要がある。さらこれらパワートレーンを搭載した同一シリーズ生産車を翌年度末までに公道走行が可能な100台を製造する必要があるとされている。

アストンマーティン 「ヴァルキリー」ハイパーカーで2012年ル・マン24時間レース優勝狙う

パワートレーンの最大出力は720kW(約950ps)で、エンジンで520kW、車両フロントへの搭載が義務付けられるMGU-Kから200kWを生み出すという構成だ。エンジンは自然吸気とターボのいずれでもよく、排気量にも制限はない。それぞれの構成物の最低重量はエンジンが180kg、MGU-Kは50kg、バッテリーが70kgとされる。価格は1基あたり300万ユーロ(約3億8000万円)と規定されている。

レッドブルのF1技術も導入

2021年は、アストンマーティンにとってル・マン24時間レース初参戦から100周年の記念すべき年となる。そして公道走行可能なロードカーでル・マンの最高峰クラスに参戦してから既に25年以上が経過している。

今回の決定は、アストンマーティンにとって創設者であるライオネル・マーティンのパイオニア精神を呼び起こし、英国で最も創意溢れるエンジニアリング魂とともに、次の10年紀に再びル・マン24時間レースで優勝し、世界耐久選手権の頂点を目指すという壮大なチャレンジとなる。

左からヘルムート・マルコ選手、アンディ・パーマーCEO、クリスチャン・ホナー、エイドリアン・ニューウェイ、マレク・ライヒマン、デイビッド・キング
左からヘルムート・マルコ選手、アンディ・パーマーCEO、クリスチャン・ホナー、エイドリアン・ニューウェイ、マレク・ライヒマン、デイビッド・キング

ル・マンに挑戦する究極のロードカー、「ヴァルキリー」は、アストンマーティン/レッドブルレーシング技術責任者のエイドリアン・ニューウェイ氏、アストンマーティン上級副社長兼チーフ・クリエイティブオフィサーのマレク・ライヒマン、そしてアストンマーティン副社長兼チーフ・スペシャルオペレーションズ・オフィサーのデイビッド・キングらの叡智を結集して開発するクルマで、アストンマーティン、レッドブル・アドバンスド・テクノロジーズ、プロジェクト・パートナーのAFレーシングによるコラボレーションにより製作されている。

F1マシンのレッドブルRB14とヴァルキリー
F1マシンのレッドブルRB14とヴァルキリー

アストンマーティンの本気度

世界最高のロードカーである「ヴァルキリー」には、市販モデルおよびサーキット専用のAMRプロ・バージョンで培ってきたあらゆる最先端テクノロジーが投入される予定だ。このニューマシンには、専用設計された高回転型自然吸気6.5L・V12エンジンのレース・バージョンが搭載される。

このエンジンに、超軽量なカーボンファイバー構造と、F1からフィードバックされた空力テクノロジーを組み合わせることで、総合優勝をかけて戦うことができる高い戦闘力を備えたパッケージングが完成する。

アストンマーティン・ラゴンダ社長兼CEOのアンディ・パーマーは、「私たちは、アストンマーティンがル・マンで総合優勝をかけて再び戦う日がいつか必ずやってくると述べてきました。そして、ついにその時がやってきたのです。デイビッド・ブラウンは、1959年に優勝できるマシンとドライバーを引き連れて、ル・マンに乗り込みました。私たちも、2021年に同じことをするつもりです。アストンマーティン・ヴァルキリーは、この挑戦のための十分な素質を備え、ACOが導入する新しいハイパーカー規定の要件を完全に満たしています。世界最高峰のモータースポーツで戦ってきた経験とノウハウを完全に投入することにより、私たちは成功するために必要なあらゆる要素を考慮に入れながら、この非常に野心的なプロジェクトに取り組むつもりです。ル・マン24時間レースでレースを先導し、夜のミュルザンヌ・ストレートに響き渡るアストンマーティンV12エンジンの咆哮を聞くこと以上に刺激的な体験があるでしょうか」と語っている。

トヨタ・モータースポーツ・ヨーロッパが開発・製造する「GRスーパースポーツ」
トヨタ・モータースポーツ・ヨーロッパが開発・製造する「GRスーパースポーツ」

周知のように、トヨタはTMGが主導して2.4L・V6ツインターボ+ハイブリッドシステムにより1000psを発生する「GRスーパースポーツ」の開発をすでに開始しており、テスト走行も繰り返している。トヨタはこのGRスーパースポーツでル・マンに挑戦することも明らかにしており、現時点ではトヨタ、アストンマーティンのワークスチーム対決となるが、さらに別の自動車メーカーの参戦も期待できる。

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アストンマーティン 公式サイト

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