マニアック評価vol19
2009年5月に国内販売されたコンパクトスポーツのミト。アルファロメオのレンジではもっともコンパクトなモデルとしてデビューしている。国内での発売当初は14.Lターボ、6速MTの「スポーツ」というワングレードで、プラットフォームをグランデプントと共用のZAR955を使用している。
MiTo名前の由来は、Miはミラノ、Toはトリノの都市名を意味している。ブランドルーツがミラノでありデザインセンターがミラノにあり、また生産工場がトリノであることから2都市の頭文字をとって命名されている。また、イタリア語でミトは神話/伝説という意味もあり、ミトへの期待度が見えてくる。
↑MiToのホットバージョン、クアドリフォリオ ヴェルデ
そして2010年に入り、ミトの心臓部は大きく変化している。それはモデルバリエーションの追加とエンジン、ミッションが変更になったのだ。まず3月に、スポーツのワングレードであったのが、マルチエアターボ・エンジンを搭載しミッションにはツインクラッチであるTCTが積まれた「スプリント」と「コンペティツィオーネ」が導入された。(予約開始は同年5月から)
この時点でミトは3グレードとなった。発売当初のスポーツは285万円で直列4気筒DOHC16バルブターボ、155ps、20.5kg/mの出力。これに6速MTという仕様だ。一方、追加グレードのスプリントは288万円で、排気量は同じく1.4Lターボなのだが、エンジンはまったくの新設計であるマルチエアを搭載している。出力は135ps、19.4kg/mとスポーツよりはスペック上馬力・トルクともにダウンするが、低回転域でのトルクが違うことなどから体感的にはパワーダウンを感じることはない。環境性能を考慮し、日常的に回転を上げて走ることより、エンジンをまわさないで乗るという方向へシフトしていることが伺える。そして、実はこのマルチエアは2010年のエンジンオブザイヤーを獲得している名機でもある。そしてミッションはTCTツインクラッチとなっている。また。基幹構成は同じものの装備が上級となるコンペティツィオーネが305万円で発売になり、以上3グレード体制となった。
↑1.4Lターボのマルチエアエンジンを搭載。シングルカムでDOHCと同じ働きをする。
そして2010年7月に、このミトにもっとも熱いクアドリフォリオ ヴェルデがグレード追加された。スプリント/コンペティツィオーネに搭載する135psのマルチエアをチューニングし、排気量は変わらず170ps、25.5kg/mのスペックまでパワーアップされている。ミッションは6速MTのみの設定で328万円での販売となった。
2010年10月14日にスプリント/コンペティツィオーネの正式発売開始と同時に、価格設定が10万円以上下がったというニュースが入った。スプリントの新価格は278万円でコンペティツィオーネが300万円を切り292万円の新価格となった。クアドリフォリオ ヴェルデの価格は据え置かれ328万円だ。
↑乾式6速のツインクラッチを搭載
最新の制御テクノロジーが満載
この新価格になったミト スポルト/コンペティツィオーネには最新の制御技術がふんだんに盛り込まれている。ミトのサスペンションは、フロントがマクファーソンストラットでリヤがトーションビームというコンベンショナルなレイアウトだが、リヤのトーションビームはC型断面構造をしており、ねじれに強い構造をもっている。そのためスタビライザーの機能も果たしているのだ。またリバウンドスプリング内臓ダンパーを全輪に装着することで硬めのスプリングの採用が可能になったという。ブレーキではブレンボ製のアルミモノブロックの4ポッドキャリパーを装備するなど、きっちりと基本性能も高めているのが分かる。
注目はその制御系なのだが、筆頭にあげられるのはアルファロメオ D.N.Aシステムだ。このシステムはエンジン制御、ステアリングパワーアシスト、VDC(ビークルダイナミックコントロール)の作動領域の変更を行うもので、「D」のダイナミックはターボ過給圧にオーバーブースト機能が働き、エンジントルクが増大するとともに、電動パワーアシストの量を減らし、よりダイレクトなステアリングフィールとなるように設定される。さらにTCTのシフトポイントが高くなり、高回転域を保つことができるように変化する。そして「N」はノーマルを意味し、「A」はオールウエザーの意で滑りやすい路面でのドライビングに効果的となる設定になる。これは各制御の介入タイミングが早くなることを意味している。
このD.N.Aシステムのなかでも、VDCは特に多くの制御を行なっている。また、クルマのアクティブセーフティや、ドライビングプレジャーという側面にも大きく影響を及ぼしているので、もう少し詳しく見てみよう。
構成する機能には7つの制御機能がリンクしている。まずASR。駆動輪の空転防止機能で、主に加速時において駆動輪への個別自動ブレーキ制御とエンジン出力制御などが行なわれ、常に最適なトラクションが確保される制御だ。CBCは旋回時ブレーキ制御機能で、コーナー通過中にABSが働くようなブレーキをかけたときに機能し、全輪がグリップを失わないように各タイヤを個別に制御するものだ。DSTはダイナミックステアリングトルクで、滑りやすい路面での走行中にオーバーステアが起きた場合、的確なアシスト力によりハンドル修正操作を補助するもの。HBAはパニックブレーキ時に威力を発揮するブレーキアシスト機構で、瞬時にブレーキ液圧を上げ制動をアシストする。電子制御式Q2機能は、旋回時に内輪が空転した場合、これにブレーキをかけ、LSDと同じ効果を得る機能。MSRはエンジンブレーキトルク制御のことで、低μ路での急なアクセルオフやシフトダウン時にエンジンブレーキが強すぎてグリップを失った場合に、瞬時に作動しトルクを制御するもの。最後にヒルホールドシステムは坂道でクルマが下がらないように、坂道発進を補助する機能。という制御系がある。
現在販売されるミトのスポーツを除き、TCT、マニュアルともにアイドルストップする「スタート&ストップ」機能がついており、CO2の排出削減など環境保護にも貢献している。
また、スポルトが4人乗りであるのに対し、クアドリフォルテ ヴェルデ/スプリント/コンペティツィオーネは5人乗りに変更されている。そして、クアドリフォリオ ヴェルデにはエンジン出力以外にもサスペンションにも違いがある。ダイナミックサスペンションと呼ばれる電子制御式可変ダンピング機能付きダンパーが装備されているのだ。開発はマニェーティ マレッリの最新テクノロジーが投入され、自慢のD.N.Aシステムと連動している。
「N」のノーマルでは快適な乗り心地と俊敏性の調和を目標にした設定。「A」のオールウエザーではVDCや電動パワーステアリングなどと連携し、緻密な相互作用によって安全性を重視した設定に変化する。つまり、グリップ限界が低い路面では制御の介入タイミングが早くなるということだ。そして「D」のダイナミックでは、あらゆる路面で強力なグリップを発揮する設定に変化するという。この可変ダンパーは無段階に各ダンパーのダンピング特性をコントロールできるのが特徴でもある。
クルマのデザインやネーミングから、かわいらしいイメージはあるが、搭載されるテクノロジーは最先端のもので、その走りはライトウエイトスポーツの中でも、相当パワフルに走る部類に入るモデルだと思う。
文:編集部 高橋明
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