2015年1月20日~21日の2日間、鹿児島でマツダ恒例の中距離試乗会が行なわれた。このイベントは2012年から毎年車種を変えて実施されていて、CX-5、アテンザ、アクセラ、そして今回のデミオで4度目の開催となる。
この試乗会は鹿児島市内を起点にして1日目は指宿まで、そして2日目は鹿児島へ戻るという、直線距離で40km、ルート距離にすると往復で約160kmというおすすめ試乗コースが設定されている。なぜ鹿児島で新型デミオの試乗会なのか? その理由は鹿児島のロケーションにある。
鹿児島市内から指宿を目指すルートには、信号によるストップ&ゴーの市街地、アップダウンがあり路面の整備された有料道路、対面通行でやや荒れた路面もある狭いワインディングなど、多彩なバリエーションの路面が用意されている。「様々なシチュエーションでマツダのクルマ(今回はデミオ)の性能を存分に味わってほしい」というメーカーの意気込みが、鹿児島という舞台設定になったというわけだ。都心部のような大渋滞もなく、市街地からのアクセスも便利で気持ちのよいワインディングを走れる試乗コース。そして東京から2時間半というプチ遠出気分もあり、少し非日常な試乗会がスタートした。
今回、この試乗会には筆者(オートプルーブ編集&ラジオ番組ザ・モーターウィークリー構成担当 スタッフZ)と、番組DJ藤本えみり嬢、番組ディレクターS氏の3人で参加した。試乗するモデルは1日目がディーゼル6速MT、2日目はガソリンAT車をセレクトした。マツダ・デミオの詳細については、Auto Proveにて既報の編集委員・松本によるこちらの記事を参照していただきたい。ちなみに超余談ではあるが、現在、鹿児島は3年後に迎える「明治維新150年で盛り上がろう」と、盛り上がっているところだ。
さて鹿児島市内のホテルでピックアップした初日の試乗車のグレードは、デミオXDツーリング(6速MT)だ。搭載される1.5Lディーゼルエンジンの最高出力は105ps、最大トルクは220Nm。最初、DJ藤本嬢がハンドルを握り筆者とディレクターS氏はリヤシートへ座った。「広いですね」とS氏が言う。確かに大の大人が乗ってもヒザ周りにも余裕がある。縦に大きいS氏(身長175cm超級)も横に大きな(笑・75kg超級)筆者でも、ヘッドスペース、左右スペースともに楽々だ。
あまりにリヤシートが快適だ、と盛り上がる我々に影響されたのか、市街地を抜ける前に「私、リヤシートに…」とDJ藤本嬢からリクエストがきた。早々に運転をバトンタッチしたが、久々のマニュアル車に若干緊張気味の筆者である。だがデミオのMTは、クラッチも適度に軽く、ミッションの入りもいい。
開発担当の竹内都美子さんからは「ディーゼルエンジンの高いトルクを受け止めるためにクラッチはやわな物ではいけません。でもそれで操作が重くなってもダメなので、スプリングなど色々と試行錯誤しました」と、その苦労話をうかがった。確かに重くもなく軽くもないデミオのクラッチは、久々のマニュアル車でも構えることなく運転できる。
試乗に出かける前のプレゼンでうかがった、アクセルを踏む右足が自然な形で前に出るデミオのドライビングポジションも、運転のしやすさにつながっているのだろう。久々のマニュアル車だったが慣れるに従って、シフト操作がどんどんと楽しくなってきたほどだ。アイドリングストップ機構のi-Stopの作動も自然で、クラッチを踏むと再始動する感覚も違和感がない。
さて信号でのストップ&ゴーを繰り返した市街地を抜けて鹿児島ICから、指宿スカイラインへと入った。整備されて道幅の広い上りのワインディング、ひとまず桜島や錦江湾が一望できる展望台まで一気に走ることにした。ここでデミオのディーゼル&MTの楽しさを存分に味わうことができた。
デミオのディーゼルエンジンは1500~2000rpmも回っていれば十分にパワフルでグイグイと車体を引っ張る印象があった。コーナー立ち上がりの上りでも3速、4速ホールドのままいける。頻繁にシフトチェンジをする必要もなく、まるでATのような感覚で走ることができた。デミオのディーゼル、そしてMT車。楽々と運転できるのに、なんて楽しいんだろう。
「そろそろ私も運転しようかな…」と、リヤシートでもデミオの楽しさを感じたのか、DJ藤本嬢がドライバーチェンジを促す。ここから指宿スカイラインを南下して知覧を経て池田湖を通り、目的地の指宿まではDJ藤本嬢が運転を担当した。
ETCの使用できない指宿スカイラインは、途中の料金所で停車してウィンドゥを開けて精算をする(当たり前だ)。再発進の際にはその開いた窓から心地よく耳にエンジンの音が響いてきたが、サイドウィンドウが完全に閉まると車内にはほとんど届かなくなる。ディーゼルエンジンを搭載しながらもデミオは、「ガソリン車と同等かそれ以上の静粛性を目指しました」(竹内氏)と何重にも対策を施したディーゼル・デミオは、走行中の車内では音も振動も気にならない。
さてあとは宿泊先まで急ぐだけだが、DJ藤本嬢から今度は「コンビニに寄りたい」とのリクエストが入る。デミオのカーナビにて早速、周辺スポット検索をしてみる。ちなみにデミオにはナビゲーションを含むコネクティビティシステムの「マツダコネクト」が採用されている。ナビ、オーディオ、SNS、インターネットラジオ、自車メンテナンス情報まで、すべてを統合したものだ。操作はシフトレバー手前に設置されたボタンやコマンダーコントロールで行なうが、コマンダーコントロールのロータリースイッチやボタンでの操作が直感的で実に使いやすかった。
ナビの周辺検索でコンビニエンスストアを検索し、現れたリストから、いつものセブンイレブンやファミリーマートではなく、地元チェーンであろう「エブリワン」をチョイスする。特に大きな理由はないのだが、桜島が噴煙の影響で姿を見せないので、せめて地元展開のコンビニの駐車場でデミオの写真を撮影。「鹿児島らしい写真」はこれで勘弁していただこうというわけだ(笑)。
指宿の白水館で一泊し、翌日は鹿児島市内に向けて復路での試乗となった。この日の試乗車はデミオ13S Lパッケージ、ガソリンエンジン搭載車のATモデル。最高出力は92PS/6000rpm、最大トルクは121Nm/4000rpmというスペックだ。
ボディカラーは赤(ソウルレッド)で、フロントグリルにはボディ同色のガーニッシュがアクセントとして入るが、新型デミオのデビュー当時に「ディーゼル搭載車はグリルに赤ライン」と覚えていた筆者たちは、駐車場で「アレ? 今日はガソリンのはずでは」と一瞬、戸惑うことになった。ガソリン車のLパッケージはこのボディ同色のグリルガーニッシュが標準とのことで、赤ボディのガソリン車Lパッケージは少々その区別がややこしい。
指宿から池田湖畔を巡り、そして前日と同じく指宿スカイラインへと入った。そこでATのシフトレバーを右に倒してスポーツモードにチェンジする。アクセルを踏み込み3000rpm+αくらいでシフトアップしていくと、ガソリン・デミオは軽快に指宿スカイラインを登っていく。コーナー手前でシフトダウン、ハンドルを切る、アクセルを踏む、シフトアップする。その操作が非常に気持ちいい。エンジン単体で100kgの差があるガソリンとディーゼルだが、ガソリン・デミオは走りにもコンパクトカーらしい軽快感があった。
その後はDJ藤本嬢に運転を代わり、鹿児島市内に到着して、2日間、合計約160kmの試乗は終了した。ディーゼルとガソリンで各々80kmずつを走った2日間だったが、どちらも乗っていて楽しいクルマだった。新型デミオの受注状況でディーゼルとガソリンの比率は約6:4となっているそうだが、実際に購入するとなると、これは非常にセレクトに迷うところだろう(ちなみに写真下は左がガソリン、右がディーゼル)。
前夜に宿泊先の指宿・白水館で行なわれた懇親会では、開発エンジニアの方々と話す機会が設けられていたが、我々一行と同席して頂いたのはガソリン車担当エンジニアの国分弥則氏。「ガソリン車にはガソリン車の、ディーゼル車にはディーゼル車のいいところがあります。例えば長距離ドライブを多くする方なら燃費のいいディーゼルにメリットがあるし、軽快な走りが好みでしたらガソリン車の方が合ってるかもしれません。どちらもいいクルマなので、実際に乗って好みの方を選んでいただければ」と語り、「ディーゼル車は身近なライバルとして、ガソリンもディーゼルもお互いに切磋琢磨していいクルマに仕上げていきました」と開発時のエピソードを教えていただいた。
いずれにしてもガソリンにするか、ディーゼルにするか? デミオを購入するドライバーにとって、これは永遠について回る問題かと。乗れば分かる、でも乗ったら(どちらも良くて)さらに迷うことになるかもしれない。個人的なこの問題の結論は、今回乗れなかったディーゼルAT車に試乗してそれから出すことにしよう。
PS・「ザ・モーターウィークリー(毎週土曜日夜8時~8時30分・FMヨコハマ)」の番組ホームページでは同じ試乗会に参加したDJ藤本えみりのレポートも掲載中。こちらも合わせてどうぞ。