かつてホンダの七研、日産の商品実験部、車両実験部、トヨタの商品監査室やトップガン制度などの各自動車メーカーの実験部門は、クルマの開発で大きなかかわりを見せていたのだが、最近はこうした部門、担当者たちが表に出てくることも少なくなっている。
しかし、仕事そのものは相変わらず変わりないと思っていたのだが、実はけっこう大きく様変わりしているようだ。やっぱり引き金になったのはリーマンショックなのだろうか。
一例では数年前のトヨタ、最近ではマツダが、一度社内の実験部署で各種試験を経て承認されたコンポーネンツは、その後の車両では実験を省力化するということが行なわれている。この方針により、車両開発の実験工数を低減させ、開発スピードも早めることができることになるのだが、本当にそれでよいのだろうか?
もうひとつは、外注化の加速だ。いくつかの自動車メーカーは、開発中の車両の実験は外部の業者に委託することが多くなっている。もちろん各実験部にエンジニアを中心とした人材は在籍しているのだが、実際の実験業務は契約した派遣会社に振るという仕組みを採用している。最近の情報では、日産の実験部もこの方式に改編する計画だという。
1980年代後半の頃には「実験ドライバーの声は神の声」と言われた時代だったが、その実験ドライバーが外部の会社に転籍し、実験の仕事を受注する立場になる時代が来るとは驚きだ。
実験の仕事の形態としては、実験部のエンジニアが業務内容を決めて発注書を書き、受託した会社がその発注書の内容に合わせて実験ドライバーを派遣する、あるいは特定の業務全体を受注し、受託会社が実験を行ない、実験結果を提出するという形になる。
トヨタの場合は、車両開発自体を系列会社に委託し、開発を受託した会社が開発、実験、製造までを担当する方式のようだ。最近ではトヨタ九州工場でも実験設備を設け、九州工場製の車両の開発は九州で実施することになっているそうだ。
ホンダも鈴鹿製作所で、開発・実験・製造を一貫して行なう体制を採用している。
自動車メーカーから見ると、実験部の人員の削減、効率的な実験プロセスの実現という成果が得られるのはいうまでもないが、もはやモノを言いい、実験期間を長引かせるようなドライバーは不要ということであろう。
しかし、長期的に見て、こうした開発体制が有効で、正解なのか、ちょっと疑問である。