「編集長、だんだんハチロクとBRZに関する謎が解けてきましたね」
「そうだな。乗るたびに印象が違うし、ハチロクとBRZの間でもどこか違いがあるようだし、その違いがやっと分かってきたな」
「そうですね。ハンドリングの違いについては、いろんなモータージャーナリストがいろんなことを言っているので、そこのとこはまだわからないですけどね」
「そう。当然のように、BRZはグリップ優先、ハチロクはドリフト方向とか言っているジャーナリストもいるからな」
「実際、製造ラインは同じですから、造り分けることは難しいですよね?」
「まぁ、同じラインでまったく違うクルマを造れるラインもあるから、そこは難しくはないと思うけど、部品を違ったものまで用意することはないって、両方のメーカーが口をそろえて言っているんだから、それは有り得ないだろ。だから、スペック的にもダンパーとスプリングのレートが若干違っていたけど、それは前にも記事で書いてあるとおりで、その小数点以下のバネレートの違いでハンドリングの違いを感じ取れるとは思えない」
「テストの中で少しずつ仕様を変え、最終的に落ち着くデータを探していく中で2種類のデータ違いが存在する、という程度ですよね?」
「そうだと思うよ」
「まぁ、そこまでの情報を持っているジャーナリストも少ないから、本当に乗ったときのフィーリングで『違う』と感じたんだろうな」
「そうかもしれないですね。言ってみれば官能評価の世界ですから、難しいですよね」
「そうそう」
「タカハシが気にしていた、ハンドルとシフトフィールの違いってやつはどうだったんですか?」
「あ?、あれな。ハンドルもシフトも上質感に欠けるフィールという話だろ?」
「最初にハチロクを去年の11月に富士スピードウエイで乗ったときは、おもちゃっぽかった。その次がBRZでもてぎのコース。ここでも同じようにおもちゃ的。そしてこの前のハチロク一般公道試乗会ではスッキリ直っていて、上質感が出ていた。で、今回のBRZ河口湖周辺での試乗会では、前回のハチロクと同じように、上質だったんですよ」
「だから結局、ハチロクもBRZも上質でいい感じになっているという話だよな」
「そうです」
↑量産試作車だったBRZはもてぎで試乗。→4月に行われた河口湖の試乗会は量産車であった
「それは、あとでじっくり記事に書くけど、これまで聞いたところによると、11月のFSWのときは生産試作車だった。その時点でスバルはまだ試乗車はもっていなかったそうだ。そしてもてぎでの試乗車も生産試作車。だから両車のフィールの違いはなく、同じ印象で合っているわけだ」
「そうなんですね。でもその次の箱根はグッと品質が上がりましたけど」
「そこだ。実は箱根のときは生産試作車と量産試作車、量産車が混ざっていたようだ。だから、以前の生産試作車を試乗していたら、上質になったという印象は、持たなかったかもしれない」
「そうなんですか。それはちょっとインプレを記事にするのは難しいですね」
「それで、河口湖のBRZはもう時期的にも量産車の状態だったから、市販されているモデルと同じなんだ」
「ということは、箱根のハチロク試乗会では、ジャーナリストによっては上質という人と、フィールが悪いという人に分かれてしまった可能性がありますね?」
「そうなんだ。でもいろんなWebを見てもフィールが悪いという記事は見かけてないな。うまい具合に量産試作のモデルに試乗できていたのかもしれないな」
「そうかもしれませんね。今回のBRZのステアリングはちゃんとセルフアライニングトルクもあって、操舵はやや重く、フィードバックもしっかりあって、すこぶる好印象でした。MTのシフトもショートストロークながら、ソフトフィールでスパッとシフトできて気持ちいシフトでしたね」
「だから、乗り味の上質感と操作の質感がやっとこれで揃った、という感じか?」
「はい。とても好印象のモデルですね。ニュルにも久実(佐藤)さんハチロクで出るし、なんといっても、番組DJの藤本えみりがFM横浜でハチロクレポーターやってますから、編集部的にはハチロクの勢いに乗っかりたいですね」
「いずれにしても、こうやって騒ぐネタがあるクルマも久しぶりで、メーカーもできるだけ早い段階でジャーナリストや媒体に乗ってもらうように努力したんだろうな。その結果、ハンドリングの違い、なんていう都市伝説ができたわけだ」
「インプレッションですから、そう感じた根拠が難しいですよね。編集部としては、両車の走りの違いはなく、ともに上質なスポーツカーの乗り味が楽しめるという結論ですね」
↑量産車では、ステアリングフィールもシフトフィールも気持ちよくなった。