このクーペ・スタイリングは、初代レンジローバーの2ドアボディの再来といえるもの。しかし、その印象は対照的です。「砂漠のロールスロイス」といわれた初代2ドアモデルにはある種の軽快感があるのに対して、最新の「レンジローバー SV クーペ」には、ロールスロイス・ファントム・クーペにも通じる独特の重厚感があります。いずれにしても、堂々としたボディサイズのSUVを4シーターのクーペに仕立てたという意味においては、非常に贅沢なモデルです。
さりげなく展示されていた「メルセデス・マイバッハ Sクラス」も、原点回帰への流れが伺える一台。同車は2017年フェイスリフトを実施したばかりですが、今回発表されたモデルでは新デザインのフロントグリルを採用。併せて、2トーン・ボディカラーや新たな内装色のコンビネーション、20インチ・ホイールの設定などが行なわれました。
フロントグリルは、コンセプトカー「ビジョン・メルセデス・マイバッハ 6」のディテールを再現したものと発表されています。マイバッハは伝統的に縦基調のグリルを採用してきたため、この変更は原点回帰といえるもの。さらにいえば、2トーン・ボディカラーの設定と併せて、2002年に登場した以前のマイバッハ 57/62に通じるものがあります。マイバッハらしさを際立たせることで、メルセデス・マイバッハのブランド力を強化したい思惑が見え隠れします。
伝統と進化が共存するモーガンの世界
2018年に創業105年を迎えるイギリスのモーガンは、今回ニューモデルを2台発表。クラシック志向の独自路線をひた走っています。
ニューモデルのひとつが、「モーガン・プラス8 50th アニバーサリー・エディション」。その名の通り、1968年に誕生した「プラス8」の50周年を記念した限定車です。プラス8は同社初のV8エンジン搭載車で、これまでに約6,000台ほどが製造された人気モデル。367psを発揮するBMW製の4.8L V8自然吸気エンジンを搭載し、車重はわずか1100kg。0-62マイル(0-100km/h)加速4.5秒、最高速度249km/hの実力を誇ります。価格は10万7500ポンド(約1,612万円)で、50台が製作されます。
もう一台のニューモデルは、「モーガン・エアロ8 GT」。2000年に登場した「エアロ8」は、そのレトロモダンなスタイリングが特長で、GT3レースにも参戦しました。最終モデルとなるエアロ8 GTは、フロントフェンダーのルーバーや大胆なリヤディフューザーを備え、独特なスタイリングに磨きをかけています。エンジンはプラス8と同じBMW製のV8で、自然吸気のV8エンジン搭載はこのモデルが最後となる予定。8台が製作されるエアロ8 GTの価格は12万ポンド(約1,800万円)です。
新たな生命を授けられたクラシック・ミニ
1959年に誕生したいわゆる「クラシック・ミニ」は、生産終了後も多くの人に愛され続けている不朽の名車。今回はクラシック・ミニを題材にした興味深いモデルが展示されていました。
イギリスのデイビッド・ブラウンが2017年に発表した「ミニ・リマスタード」は、その名の通り、現代の技術でクラシック・ミニをリマスタリングしたモデル。ボディや車体は新たに設計したもので、よく見るとボディの分割線やホイールアーチの形状などがオリジナルと微妙に異なります。今回のショーでは、通常モデルと、25台限定の「Inspired by MONTE CARLO」の2台を用意していました。
エンジンなど一部のパーツにクラシック・ミニのリビルト品を使うほかは基本的に新規パーツで構成する「ミニ・リマスタード」では、内外装の細かな仕様をビスポークにより決めることができます。いわば新品のクラシック・ミニをオーダーメイドできるわけで、往年のミニフリークにとってはたまりません。
さらにエアコンやインフォテイメントシステムが標準装備されたり、トランスミッションには4ATもオプション設定されるなど、日常の足としても十分使える内容です。ただし、価格は通常モデルが7万5000ポンド(約1,125万円)、限定車の「Inspired by MONTE CARLO」では8万2500ポンド(約1,237万円)もするため、オーナーになるには非常に高いハードルをクリアしなければなりません。
もう一台のクラシック・ミニは、「MIANIE 2.0 T」というモデル。一見すると単なるドレスアップ仕様のミニにしか見えませんが、なんとVWゴルフGTI用の2.0L直噴4気筒ターボエンジンをミッドシップに搭載しているのです。