アルト・ワークス試乗記 元ホンダ開発者が語る「Kカー開発で忘れていたこと」

マニアック評価vol414
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「アルト」って聞くと、その初代(79年発売)が47万円という驚異的な低価格で軽自動車の世界を変えたことから、代表的な「軽自動車」とイメージしてしまう。しかし、「アルト・ワークス」となると話は全く別だ。名前にあるようにデザインや構造の基本はアルトを流用しているが、ワークス部分は飛び抜けていた。<レポート:繁浩太郎/Kohtaro Shige>

初代は1987年2月に発売。旧軽自動車規格なので排気量は543ccながら、軽四輪車初のDOHCインタークーラー付きターボエンジンで64ps/7500rpm、7.3kgm/4000rpm、9500rpmからレットゾーン、さらにフルタイム4WD、という飛び抜けた走り志向のクルマだった。車両重量は650kg。イメージは「走り屋」だ。

初代アルトワークス。そのインパクトは強烈で、最強軽自動車の名を欲しいままにした
初代アルトワークス。そのインパクトは強烈で、最強軽自動車の名を欲しいままにした

そのアルト・ワークスは時代の流れとともに消えていったが、15年ぶりの復活となった。軽自動車のみならず「走り屋志向のクルマ」が少なくなっている中での再登場となる。もちろん、MT仕様もある。

今回試乗したアルト・ワークス(5速MT/2WD)は、658cc、64ps/6000rpm、トルクは100Nm/3000rpm、車両重量は670kg(4WDは720kg)。

ボディカラーはホワイト、ブラック、シルバー、レッドの4色をラインアップ
ボディカラーはホワイト、ブラック、シルバー、レッドの4色をラインアップ

初代と比べて、馬力は規制で同じ64psとなっているが、トルクで見ると約4割アップ、車両重量は4WD同士で比較して約1割のアップ。軽自動車規格変更の歴史の中で、初代より、ボディは大きくなり、排気量も上がっているが、車両重量はあまり上がっていない。つまり、当時すごかった「走り屋ワークス」より今回の方がパワーウエイトレシオでみてさらにすごいということになる。

さて、実車だ。いつもの通り、まずは内外のデザインを確認する。

ボディの基本デザインはオリジナルのアルトだが、張りのあるボディ面、シャキッと入ったラインなどは質が高く、ドアとボディの合わせもよくて、作りのレベルは高い。また「顔」は、しっかりと眼を見開いた印象のヘッドライトに光物リングでより輪郭のはっきりとした眼となり、グリルにも光物が入ってメリハリができて、より精悍な「顔」になっている。

ブラックメッキヘッドランプなど専用デザインが採用された精悍な顔つきのワークス
ブラックメッキヘッドランプなど専用デザインが採用された精悍な顔つきのワークス
控えめながら初代ワークスをオマージュした専用デカールが往年のファンを喜ばせる
控えめながら初代ワークスをオマージュした専用デカールが往年のファンを喜ばせる
リヤビューも光物パーツで引き締まる。コンビランプのデザインはターボRSと異なる
リヤビューも光物パーツで引き締まる。コンビランプのデザインはターボRSと異なる
ボンネットからフェンダー、前後ドアと建て付けが綺麗
ボンネットからフェンダー、前後ドアと建て付けがキレイ。仕上がりレベルは高い
初代ワークスはボンネットにエアインテークが装着されたが、新型はバンパーに導入口が設けられる
初代ワークスはボンネットにエアインテークが装着されたが、新型はバンパーに導入口が設けられる
ルーフは軽量化のために、形状効果で剛性を出すようになっている
ルーフは軽量化のために、形状効果で剛性を出すようになっている

リヤビューも刀のような大きなメッキモールが効いて引き締まっている。また、15インチ5Jホイールの奥に、赤いキャリパーとKYBダンパーが見え、走りのクルマであることがわかる。

結果、そのたたずまいは、オリジナルアルトとはかなり異なる雰囲気となっている。当然、軽自動車っぽさは感じない。

ブラックを基調にシルバーパーツで精悍さを高めたコクピットまわり。レッドステッチ入りの本革巻きステアリングホイールを装備
ブラックを基調にシルバーパーツで精悍さを高めたコクピットまわり。レッドステッチ入りの本革巻きステアリングホイールを装備
「WORKS」ロゴが追加されたメーター。タコメーター右下にブーストインジケーターが付き、最大過給圧時に赤色点灯する
「WORKS」ロゴが追加されたメーター。タコメーター右下にブーストインジケーターが付き、最大過給圧時に赤色点灯する
インパネ中央のレイアウトは基本的に変更なし。だが、ターボRSはエアコンルーバーリングがレッドで、ワークスはサテンメッキ調となる
インパネ中央のレイアウトは基本的に変更なし。だが、ターボRSはエアコンルーバーリングがレッドで、ワークスはサテンメッキ調となる
ペダルストロークが短いクラッチペダル。ペダルレイアウトや荷重特性も文句なし
ペダルストロークが短いクラッチペダル。ペダルレイアウトや荷重特性も文句なし

さて、走りだす。MT車だ。クルマを買う時、世の中の大部分のユーザーはAT車を選び、MT車を選ぶのは少数派になる。しかし、スポーツカーになるとMTを選ぶユーザーも増えるそうだ。だが、せっかく選んだMTの操作がスポーティでない場合が多い。つまり、ストロークが大きかったり、グニャグニャしていたり、またクラッチとの相性がやけにソフトだったり、これは量産車と共用しているからだと思う。

アルト・ワークスのMTの場合は全くこれがあてはまらない。「専用開発」されているのである。結果、ショートストロークでシッカリとした操作感になっている。また、1速から4速はクロスレシオ化されている。まさに、スポーツカーMTだ。

トランスミッションがワークスの見所。クロスレシオ、ショートストローク、ダブルコーンシンクロなど、走り好きの琴線に触れるキーワードが満載だ
トランスミッションがワークスの見所。クロスレシオ、ショートストローク、ダブルコーンシンクロなど、走り好きの琴線に触れるキーワードが満載だ

さらに、シートはレカロ製でタイトでスポーティなものとなり、メーターやペダル、シフトレバー、ステアリングなどの操作性を考えアジャストしていくと、ちょっとアップライトな感じと思うが、キチッとしたドライビングポジションはとれる。このドラポジで走る前にすでに戦闘モードだ。

シートは共同開発したレカロ製。見るからにホールド性が高いことが分かる
シートは共同開発したレカロ製。見るからにホールド性が高いことが分かる
シートのバックサイドにも大きく「RECARO」のロゴが入る。オーナーの所有欲を満たす演出だ
シートのバックサイドにも大きく「RECARO」のロゴが入る。オーナーの所有欲を満たす演出だ
レカロシートのリクライニング調整はカイパー式
レカロシートのリクライニング調整は、おにぎり形状でお馴染みのカイパー式

実際、走りだすと「モア戦闘モード」。アクセルを踏むドライバーの意思より早くスロットルが開くのでは?と思ってしまうほど瞬時にスロットルが開き、加速が開始される。他のクルマと同じように、不用意にガバっとアクセルを踏むと、いかん、思いっきりホイールスピンしてスキール音。

気を取り直して、スっとアクセルを踏み込んでも、「クワン!」と加速(頭のなかでこう聴こえてしまう)。

そんな凄い加速で、すぐレッドゾーンに入るのでクラッチを「ポン」と踏んですぐ2速へシフトアップ。またすぐ「ポン」で3速。久々のアクセル、クラッチ、シフトの瞬発操作。それぞれペダルの操作感は位置、踏み込み方向、荷重ともにバランスのとれたものだ。思わず「いいね!」とつぶやく。

特にブレーキングは、チョイ踏みでカクンと効くのでなく、スゥーっと踏んだだけ効くので減速コントロールしやすい。

リム幅が拡大された専用デザインの15インチアルミホイール。これによりタイヤの横剛性が上がる
リム幅が拡大された専用デザインの15インチアルミホイール。これによりタイヤの横剛性が上がる
ブレーキキャリパーはスポーティさを演出するレッド塗装が施される
ブレーキキャリパーはスポーティさを演出するレッド塗装が施される
前後ともにショックアブソーバーはKYB製で、減衰力を専用チューニング。接地性や応答性、操安性を向上
前後ともにショックアブソーバーはKYB製で、減衰力を専用チューニング。接地性や応答性、操安性を向上

コーナー手前でブレーキングして、そのまま足首を捻ると踵にちょうどアクセルペダルがきて、瞬発操作でポン(クラッチ)/踵でクワン(アクセル)!として2速。ステアリングを切り込む、コーナー出口、クワン!と加速してポン3速。今度はタイトコーナー、減速してポン/クワン!で1速へ。

多少の道路の凹凸があってもボディ剛性は高く平気。また、このボディ剛性とサス、EPSのセッティングが良くて、ステアフィールはいい。車体サイズも日本のワインディング走りにちょうどいい感じ。

私の若い頃は、関西でしたので、夏の夜中の六甲山に友達と何台かでよく走りに行きました(どうして夜中か……はご想像にお任せします)。しかし、ヨクヨク思い出すと、こんなにスムーズな操作や運転はできなかったような。そりゃ、そうですね、当時の私達のクルマにはレカロシートも、専用のシフト機構や、操作のしやすいアクセルやブレーキも、なかったですからね。

なにより、当時の私達のクルマはツインキャブで1.0L、1.2L程あり、車両重量がこのアルト・ワークスより少し重いくらいでした、でも、こんなには走りませんでした。これ、ホントに660cc? 走り過ぎ!

エンジンは自主規制があるため最高出力は47psにとどまるが、最大トルクはターボRSより+2Nmの100Nm。アクセルレスポンスは10%も向上する
エンジンは自主規制があるため最高出力は47psにとどまるが、最大トルクはターボRSより+2Nmの100Nm。アクセルレスポンスは10%も向上する
向かって右がターボのインテーク、左が外気導入口
向かって右がターボのインテーク、左が外気導入口
ボディにも補強が施され、太めのストラットタワーバーを装着
ボディ補強が施され太めのストラットタワーバーを装着

そう思っている間に、またクワン! シフトレバーの操作感は、カチッとしていて気持ちいいものですが、それだけではなく、1→2速とか4→3速というようなストレートなシフト操作だけでなく、2→3速、3→2速の様な、Hパターンをまたがる操作の時も、ストレートなシフトとほぼ同様に誤操作なしで早く操作できます。これスポーツカー開発者が気を配るところ。

このように、アルト・ワークスは、エンジンはもちろんシフト操作も走り志向、ブレーキもクラッチもハンドリングも、人を支えるシートまで全て走り志向です。と言っても、その操作はギクシャクしたものでなく非常に素直なものなので、まさにクルマのサイズを含めて「走りの練習」に持ってこいと言えるかもしれません。

今回のアルト・ワークスは、私同様50歳以上のユーザーには、若くて走り願望を抑えきれない日々を思い出させてくれ、また比較的若い人にはドライビングの楽しさ/興奮を提供してくれるはずです。

こういうクルマの世界もあるのですね。忘れていました。最後に、・・これ軽自動車です。

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■アルトワークス価格
2WD:150万9840円
4WD:161万7840円

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