2代目の日産・リーフが登場した。その新型リーフは、ユーザーがEVの進化を実感できる大幅なモデルチェンジになっていたのだ。しかし、EVは普及するのだろうか?
■リーフの航続距離と電池
EV車は航続距離がネックとなって、ICE(Internal-Combustion Engine)車と同等の使い方ができないことが最大の課題と言われている。今回、リーフはこの課題対応として、電池容量を40kWhに増やし、電池本体やインバーターなどの改良も合わせて、航続距離を400km(JC08モード)に伸ばした。
しかし、電池は使用環境による経年劣化や、使われ方、特に充電の仕方などによっても劣化に差が出てしまう。これにより、中古車価格はICE車のようにはいかず、結果的に安く設定されているのが現実だ。
また、劣化だけでなく寒い地域などでは、もともと電池性能を100%発揮するのは難しいという課題もある。つまり、EV車として公表される航続距離だけの問題だけでなく、劣化など電池自体の性能が本質的な課題だと言えると思う。
今回の新型リーフは、開発者によると電池劣化を約10%向上させたということで、但し書き付きで、つまり、正常な使用条件、日頃の点検整備などが正しく行われているとして、電池容量の保証は8年/16万kmになっている。ちょっと但し書きが気にはなるが、とはいえ、電池性能は確実に進化しているようだ。
■EVのさらなる課題
EVの国内販売台数は2016年で1万3056台、ついでにPHEV(Plug-in Hybrid Vehicle)は1万3847台となる。
HV(hybrid vehicle)は、133万5085台なので、EVもPHEVも、ざっとHVの1%程度だ。HVは世界販売も含めて、ある程度販売台数が増えてきたことや、搭載電池も少なく(=コスト安)、メーカーの収益的に成立していると考えられる。
しかし、PHEVになると販売台数は少なく、結局、充電が面倒でHVとして使う場合は割高商品になる。また、HVより電池を多く積むことから、メーカーのコスト/収益面でも厳しくなる。さらにEV車となれば、販売台数が少ない上に、搭載電池はさらに多くなり、エンジンや排気、燃料関係などの部品は不要としても、収益はさらに厳しいと想像できる。
EVやPHEVでは、台数販売量の大幅アップと、さらに電池コストの低下があって、はじめて収益につながると思うが、そこまでは「投資」ということになる。これは、今後EVやPHEV化していくと宣言している世界中のカーメーカーにとっての課題でもあるのだ。
一方で、そもそもICE車よりValue for Moneyで劣るEVやPHEVを、多くのユーザーが買うのか? という課題も大きい。つまり、自由経済の下では、政府(税金)による補助金や減税措置があるだけでは、EVやPHEVの普及は難しいのだ。
■国策とEV
世界的に化石燃料を燃やしての発電=エネルギー確保は環境的に限界がある中、再生可能エネルギーや原発を促進して国際競争力を保とうとする国がでてきており、そのエネルギー=発電政策に寄り添うように法令等を制定している。つまりは、EVやPHEVの普及促進をしようとする動きが活発化しているということだ。
また、自動運転化、カーシェアリング、スマートハウスの時代は確実にEVが有効的となるが、その時代がいつ来るかは、AIとIoTの進化、そして電池の革新によるわけで国策として取り組む国もでてくるわけだ。
*編集部注:中華人民共和国 習近平氏率いる中国共産党の政策である。
こうなってくると、民間の自由経済の中だけでなく、国策として取り組む国がEVを使った新しい時代をリーディングしていきそうだ。当然、リーフの軸足は日本ではなく、国策の進捗があり市場も大きな中国であるる。
■新型リーフのデザイン
多くのユーザーにとって初代リーフのデザインは「未来のクルマ」としての新しさとカッコ良さが中途半端な感じで、クルマらしくない変な形と受け取られていたのではないかと思う。
今回は、多くのユーザーに受け入れられるように、あまりEVを意識させないデザインにしたようだ。結果的に堂々としたデザインになっており、中国をはじめ日本の多くのユーザーにも受け入れられると思う。
■リーフの良さ
2代目リーフは航続距離を伸ばすなどしてICE車並みの性能に近づいたが、特筆すべきは「EVならではの性能」を身につけたことだ。
それは、高級車を超える滑らかで静かな走りと、e-Pedalという新しい走り方の提案に集約される。
まず、「高級車を超える滑らかな走り」とは、スタート発信から直ぐに立ち上がるモーターのトルク特性により、強力な速さはもちろん、ごくスムーズな発進加速が得られることだ。これをICE車で実現するには、よほどの大排気量でないと無理だ。
発進後も、当たり前だが変速のない高トルクの加速は、もともと例えようのない、言い換えればICE車にはない高質なものだが、今回モーターのさらなる高トルク化などでより磨きがかかった。
e-Pedalは、アクセルペダルの戻し加減で減速をコントロールできるものだ。もちろん回生エネルギーのコントロールとイコールだ。そして最大0.2Gまでの減速が可能となっている。
これは、単にブレーキペダルを踏む頻度が少なくなるとか、回生エネルギー効率がよいということでなく、今まで未経験のスムーズな走りにつながる技術なのだ。
一般的に減速時には、アクセルペダルを離してブレーキペダルに踏みかえるが、その間に、ごく短時間とはいえエンジンブレーキで走行してしまう時間が存在し、さらにブレーキペダルをコントロールしながら踏む時間とで、減速中に段差ができる。
ところがリーフのe-Pedal走行では、加減速が継続的なので、全く段差のないスムーズなものとなる。これがリーフならではの大変高質な走行となるのだ。
市街地〜高速、さらにレーシングコースまで試乗したが、ほとんどブレーキペダルを踏むことなしで走行できた。
確かに、ひとつのペダルで加減速をコントロールするということは、少しの慣れは必要になるが、もちろんスイッチひとつでe-PedalをOFFにすることもできる。
■EV車の未来
もちろん、EV車は来るべき自動運転やカーシェアリングの時代に、その本領を発揮するものと考えるが、それまでは、ICE車とバリュー・フォー・マネーで戦いながら、メーカーとしてはできるだけ多くのEV車台数を販売していかなければならない。
そのために今回の2代目リーフは、デザインからハード、高質な走りまで、単にEV車の進化ということだけでなく、EV車ならではのバリューも考えられた商品になった。まさに、EVの普及期の役割を見据えた商品といえる。
EV車の普及はひたすら電池の進化によるとは思うが、それでもAIやIoTの進化と国策によっては、EV車がICE車並みの性能には未達でも、普及期が押し寄せる可能性はある。
じつはEV車は、世の中の生活の進化とリンクした、まさに次世代カーで、国策によっては、活躍する日は意外と近いかもしれない。