【言いたい放題】第二回 ”遊びの軽”で時代を先取りするスズキ・ハスラー

繁浩太郎です。連載コラムの第二回目は、スズキ・ハスラーについて取り上げてみましょう。ハスラーに関してはすでにいろいろなところで記事になっているので、興味のある方ならいくつかの記事を読まれたり、いろいろと情報が入っていると思います。

スズキ・ハスラー
スズキ・ハスラーと筆者。試乗会にお邪魔して、そこで開発車の方にも取材した

ここでは、先日試乗会に行き、そこでスズキの開発者の方に取材させていただいた結果を踏まえて、私なりにマーケティングの観点など、ちょっと異なった切り口で、話題のクルマについて書いてみたいと思います。

■ハスラーはイノベーティブな商品!

さて突然ですけど、みなさんはスズキと聞いて何を連想しますか? ずっと自動車会社に勤めて、そこでクルマを開発していた私は、「スズキ」と聞くと「コスト」という言葉を連想します。コストと言ってもネガティブな意味ではなく、「お客さんのためにできるだけ廉価で」と心がけている、という意味です。でもそんな私の連想ゲームも、このハスラーの登場によって変わりました。スズキは廉価だけではない、「もっと志が高かった」ということが理解できました。スズキ=イノベーティブ(革新的)だったんです。

どういうことかというと…国内の自動車販売台数に占める軽自動車比率はぐんぐん伸びていて、現在新車販売の約4割弱、しかもまだ伸びています。私の想像では半分位まではいくのではと考えています。それは、日本経済の状況、クルマの社会的位置付け、何よりも日本のインフラ、道路、駐車場、以前に「狭い日本、急いで…」というキャンペーンもありましたが、とにかく、この狭い日本で軽自動車は経済的で扱いやすい。その上、商品も非常に良くなりました。

こうして軽自動車比率が増えてくると、家族用、個人用、趣味用など用途や好みに合わせていろいろなクルマが出てきてもおかしくありませんよね。お客さんの気持ちとしても、軽自動車の中でいろいろと選べるのは嬉しいものです。

スズキ・ハスラー
軽自動車市場に投入された挑戦商品のハスラー

そこで、カーメーカーの中でも企画としては「スポーツカーのようなクルマを出せば、喜ぶお客さんも多いのではないか」とか、いろいろとアイデアが持ち上がってきます。でも、そこで一番の壁は、「こういう用途や好みを絞った商品で、数が売れるのか? 投資回収できるのか? そして儲かるのか?」という事業的な壁が現れるのです。

軽自動車はもともと比較的利幅が少なく、数を稼がないと浮き上がらないという側面もあります。当然、万人受けするクルマの方が販売台数は多く見込めて、企画は通りやすいわけです。

そこで、どういう商品ならお客さんに喜んでもらえて、会社も喜べるか? と企画者たちは知恵を絞るんですね。スズキの場合は、その答えが「遊びのクルマ」=ハスラーだったということです。

開発者の方の話によれば、「スズキにはもともとKeiというハスラーに近いコンセプトのクルマがあり、こういうクルマをお客さんは望んでいると販売の現場からの待望論があり、鈴木会長兼社長に直訴された」と聞きました。

スズキkei
スズキkei

思い出したのですが、スズキは今回のハスラーのようなイノベーティブな商品を今までも数多く世の中に出しています。アルト、ワゴンR、ラパン、ツイン、Keiなど、非常にチャレンジングでイノベーティブな商品と言えると思います。

スズキtwin
スズキtwin
スズキ・ラパン
スズキ・ラパン

 

これは販売の現場でお客さんの喜ぶ顔が見えるマーケティングができていて、またそれが風通し良く社内を吹き抜けて、企画GO!につながる。これって、すごいことではと思うわけです。

◆「遊びの軽」=ハスラー

ここからは、イノベーティブなハスラーの、「遊びの軽」というコンセプトについて迫ってみたいと思います。

スズキ・ハスラー
スズキ・ハスラーは、ベストセラーのワゴンRをベースに開発された。乗ってみてもそれが実感できる

大昔なら「遊びの軽」=ハスラーを開発するのに、車体からプラットフォームなど全てオールニューでやっていたかもしれませんが、ご存知のようにハスラーはワゴンRをベースにして開発費用、投資を抑えています。このおかげでハスラーの売価は割安にすることができています。

もっというと「遊びの軽」をより際立たせて開発された、ということになると思います。こういうメリハリを付けて開発するのは、後で聞くと「ヘェ~」と思うぐらいのことですが、開発者は自分達の開発するクルマを愛していますから、全て良くしたい、つまり全力(オールニューで開発など)でいきたくなるものなんです。

そこをコントロールするのは、なかなか難しいことなんですが、お客さんに過剰な負担をかけてはすまないという気持ちが、開発者の方々だけでなく全社にわたってゴールまで意思疎通された結果だと思います。

スズキ・ハスラー
インパネはペイントではなく原料に着色して成型。これもコストダウンにつながる
スズキ・ハスラー
スズキ・ハスラーはリヤシートもワゴンRと同等。大勢で出かける、まさに遊びにも使える1台

 

◆目は口ほどにものを言う

「遊びの軽」ハスラーの考え方が1番現れているのは、ズバリ、ヘッドライトだと思います。私は「涙目」と勝手に名前をつけましたが、単なる丸でなく、もちろん四角でもなく、「遊びの軽」に相応しい動きと遊びココロがあり、かつ親しみがあり、新しいどこにもないデザインだと感心しました。

スズキ・ハスラー
うるうるした涙目のようなヘッドライト。このデザインにハスラー開発陣のこだわりや遊び心が現れている

人間でも人に会った時、先ず眼を見るように、クルマの性格を表す上で眼は非常に大切と考えています。開発者の方に聞きますと「最初は丸で、いろいろあって、また基本、丸に戻りこうなった」と。また「スズキは、だいたいつり目で怖い」という声もあったとか。

いずれにしても、いろいろと検討されてこれに落ち着いて、私なんかその結果に感心した訳です。もちろん他にもたくさんの「遊びの軽」という表現のデザインは仕込まれています。「スズキのアイデンティティを大切にしつつも、遊びの軽に相応しいデザインをした」と開発者の方はおっしゃっていました。

試乗してみると、フロントウインドウが立っているせいもあって、非常に新鮮な運転感覚でこちらにも「遊びの軽」が表現されています。動的にはワゴンRベースだから当たり前といえば当たり前ですが、ワゴンRと同じように街中をスイスイと走ります。

車高が少し高く、アプローチアングル、デパーチャーアングルも大きくて、凹凸路にも有利かなと、わかりやすく言えば下回りを擦りにくくなっているということです。これも「遊びの軽」の表現のひとつで、普段使いでも坂道にガクンと入る時も、出る時も、下回りを擦りにくくていいなと。

スズキ・ハスラー
スチールホイールも専用デザインするこだわり
スズキ・ハスラー
タイヤサイズは165/60 15

 

◆先行商品=ハスラー

最後に ハスラーは「遊びの軽」というコンセプトで出てきましたが、このコンセプトは今のところ軽自動車の中でハスラーだけですね。しかし、軽自動車のマーケットのシェアが上がるにつけて、多分他のメーカーからもこういう「遊び、楽しさ基準のクルマ」が、出てくるのではないでしょうか。

そうなれば、ハスラーはその先駆者でイノベーターということになります。まさにハスラーは、時代性をいち早く捉える「先行層」商品で、時代の少し先をいくユーザーにぴったりですね。

スズキ・ハスラー
では、また次回のコラムでお目にかかりましょう

 

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