BMW550i xDriveに試乗してみた。2020年9月に5シリーズがマイナーチェンジし、BMWジャパンは同時にM5も発売開始している。今回試乗したM550ixDriveはM社が開発したMモデルで、「Mパフォーマンスモデル」とし、サーキット走行を視野にいれたM5は「Mハイパフォーマンスモデル」として区別している。
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搭載するパワーユニットはV型8気筒ツインターボで4.4L。これにZF製8速ATを組み併せ、リヤデフにはアクティブMデファレンシャルを組み込み、前後のトルク配分は無段階に配分しつつ、左右のトルク配分も制御する4WDシステムを搭載している。
出力は390kW(530ps)/5500rpm、最大トルク750Nm/1800-4600rpmという大パワー、大トルクを持ち、5シリーズとは明確に棲み分けされ、M5のディチューン版というモデルだ。0-100km/h加速は3.8秒を実現している。したがって価格もMモデルプライスで車両本体価格は1319万円(税込)、試乗車はオプションも装備しプラス211万4000円で、合計1503万4000円というスペシャル価格。ボディサイズは全長4975mm、全幅1870mm、全高1465mm、ホイールベース2975mm。
このスペシャルなMモデルを、市街地で走ってみると日常使いでも高級車らしいパフォーマンスを見せてくれたのだ。
高速走行が得意
最も得意とする高速道路でのシーンは、国内だと最高速が120km/hに引き上げられた新東名高速を走行してみた。東京から御殿場IC付近までは80〜100km/hの速度で流れている。流れに乗りつつ、120km/hのエリアに入り車速を上げてみる。車内の環境は一変もせず、静粛性は保たれたままで、速度だけプラス40km/hされた印象。エンジン回転も1800rpm付近でわずかに200rpmほど上昇しているにとどまる。
もちろん120km/hで走行しているときも、高級サルーンの静けさを保っている。パフォ−マンスモデルによくある、エンジン音が常に聞こえるということはないのだ。しかし、ドライブモードセレクトで「SPORT」を選択するとエンジン音が聞こえるようになるという演出の区別も行なっているのだ。
乗り心地も高級サルーンに相応しいもので、Mアダプティブサスペンションを装備しつつ、コンフォートモードでは快適な乗り心地を提供してくれる。もっともタイヤサイズは20インチのランフラットタイヤを履いているため、それなりのしっかり感は伝わってくる。
このM550ixDriveは、そのドライブセレクトのモードによって、そのキャラクターが豹変してしまうのだ。フツーにドライブすれば、日常乗り回すセダンとして快適に、そして高級車らしさを味わいながら乗れ、スポーツモードを選択するとパフォーマンスは一気にアドレナリンが吹き出すといったことが起こる。
安全装備の進化
そして今回のマイナーチェンジではADAS先進運転支援システムのアップデートが行なわれている。3眼カメラを装備し、渋滞時60km/h以下でのハンズフリーを装備した。実際に使用してみると、高速走行中にACCを起動し、走行。前車に追従しながら自動で設定した車間距離に調整され、追従する。走行車両の車速が落ち始め60km/hになると自動でハンズフリーが稼働するのだ。
これは首都高速のようなカーブで、Rがきつい場所でも作動しステア操作はシステムが行なっている。場所によっては一部解除されるシーンもあったが、作動するエリアは広く、車速が上がればドライバーが操作をする必要が出てくる。渋滞時はこれを繰り返すイメージだ。そして当然、ブレーキ、アクセルはシステムが稼働しているので、かなり負担は減ることを実感した。
またリバースアシスト機能も搭載しており、これは偶然にもすれ違いのできない狭い道で対向車に遭遇しシステムを使ってみたのだが、思っていたより便利なことが解った。
直近50mまで自動でクルマの軌跡を記憶している。これは何のセットアップもしなくていい。クルマが自動で走行軌跡を記憶している。そしてギヤをリバースに入れるとモニターにリバースアシストを使うかどうかが表示され、画面に触れると、その瞬間からアシストが始まる。
ドライバーは速度調整だけすればよく、ブレーキで後退速度を調整しながら自動でバックしていく。ステアリング操作は一切不要なので、狭い道でクルマを擦る心配もないから安心だ。そしてすれ違いができそうなスペースの場所まで後退したら、シフトをドライブに入れ左側へクルマを寄せれば、すれ違いができる。
こうしたシーンは、都会ではあまり遭遇しないかもしれないが、普通にバックギヤに入れ画面をタッチするだけで、自動でバックするのだから、操作は至って簡単で「簡単操作」というのが「便利」だと感じさせているのかも知れない。
Mモデルの日常使いの快適性に驚かされ、そのパフォーマンスの高さにも満足できるレベルにある。とりわけ5シリーズというビジネスセダンとしてのユーティリティをスポイルすることなく、パフォーマンスをアップしているやり方はBMWらしいと言えるだろう。高級セダンでありながらドライバーズカーとしての駆けぬける歓びを味わえるのだから。<レポート:高 橋 明/Akira Takahashi>