24Mテクノロジー リチウムイオン電池に革新的発明を続々発表

次世代の高性能なリチウム電池技術を開発している「24Mテクノロジー」(マサチューセッツ)は2025年3月11日、リチウムイオン電池の充電速度と低温環境での性能を大幅に改善する「Eternalyte(エターナライト)」電解液を開発したと発表した。

24Mテクノロジー社は、先進バッテリーの技術開発企業で、すでに半固体電池と、リチウムイオン電池で発生する発火事故を検知、防止できる、電解質の中間に配置するImpervio(インパービオ)セパレータの技術を発表している。

半固体電池の技術では、京セラが蓄電システム用の「クレイ型リチウムイオン電池」として世界初の量産化を実現し、発売している。

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液体電解質を採用する多くのリチウムイオン電池、さらには現在開発中の全固体電解質を採用する全固体電池でも、電解液、あるいは固体電解質に含まれる微小な金属粉から成長するリチウム金属のデンドライ ト(樹枝状の結晶)が負極側から成長拡大し、正極側に達することでショート(短絡)し、発火事故が発生する。

24Mテクノロジーが開発したImpervio(インパービオ)セパレータは、通常の樹脂製セパレータの面に電導性の物質を塗布することで、デンドライトがセパレータを突き破ることを阻止することができる。またデンドライトがセパレータにまで到達した場合は、電導材で検知される。

これにより、リチウムイオン電池の発火事故を防止することができる。なおこのImpervio(インパービオ)セパレータは、セパレータメーカーで量産技術化が進められており、2026年ころには市販化が実現すると予想されている。

そして今回発表されたEternalyte(エターナライト)電解液は、シリコン、グラファイト負極を用いた電解液で、優れた急速充電性能、低温性能、長寿命、高出力を実現する。そして、この新電解質は既存の液体電解質の製造プロセスで採用可能であることも優位点で、コスト上昇を抑えることができる。

Eternalyte(エターナライト)電解液は、電解液の組成を革新することで、従来の電解質よりイオンの移動速度が3倍以上に向上するため、大幅に充放電性能を向上させることができる。さらに高電圧安定性にも優れ、電池過電圧を低減できるため、業界トップクラスの急速充電性能を実現。これにより、現行市販されている一般的なEVであれば、4分以内に約320km (200マイル)相当のエネルギーを充電できる(SOC15%から80%相当)。

Eternalyte(エターナライト)電解液の優れた低温特性

また、 Eternalyte(エターナライト)電解液は、高いイオン伝導率を持っているため、極度の低温環境でも電池セルの性能を維持できるのも特長だ。

従来の電解液を使用した場合、低温環境下(-20度)では容量の約80%を失ってしまいうが、Eternalyte(エターナライト)電解液を用いた電池セルは1Cレート80%以上の容量を保持できる。1Cとは1時間で満充電状態から完全に放電した状態になる時の電流値を表わし、この数字が高ければ高いほど大きな電流を出力できる。また、C(電池の公称容量/Capacity)レートとは、バッテリー容量に対する充放電の電流値の比であり、容量の異なる電池同士の特性・条件をそろえて比較するすることができる。

Eternalyte(エターナライト)を使用するEV用電池は、低温環境においても走行距離がほぼ低下せず、既存の電解液を使用したEV電池の場合、電池パックによる断熱効果を加味しても20~30%以上もの走行距離に相当する容量を失っているのだ。

24Mテクノロジーは、もともとはリチウム金属電池専用にイオンが高速に移動できる電解液を設計していたが、開発した電解液は他の タイプのリチウムイオン電池でも高いイオン伝導性が確認できたという。

このEternalyte(エターナライト)電解液は、従来の電解液に比べてイオンの移動時にイオンと結合する媒体が少ないため、イオンの移動速度が大幅に向上している特徴がある。このEternalyte(エターナライト)電解液と、すでに発表しているImpervio(インパービオ)セパレータを組み合わせて使用することで、高性能でより安全性の高いリチウムイオン電池が実現することになる。

なお、Eternalyte(エターナライト)電解液の生産技術の開発はこれから開始されるため、2027年頃に量産・実用化が実現すると見られている。

また、24MテクノロジーはEternalyte(エターナライト)電解液を使用する高性能リチウムイオン電池の試作品を、電動のマルチコプター(空飛ぶクルマ)に使用し、繰り返しの充電性能、充電速度の速さなどをアピールする計画だ。

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24Mテクノロジー 公式サイト

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