Withコロナで先行き不透明 各自動車メーカーの第2四半期決算を見る1/2

世界では相変わらず新型コロナウイルスが猛威を振るっており、世界で感染者は5000万人を突破している。アメリカでは感染が終息する気配を見せず、現在でも感染は加速している。一方で、一端は終息したかに見えたヨーロッパは9月以降に第2波感染が拡大しており、フランスなどは都市のロックダウン策を再発動する状況に至っている。

グローバルの各市場の動向

世界的に見て、新型コロナウイルス感染を徹底した対策により、4月に終息させた中国のみが活発な経済活動を展開し、自動車販売を見ると5月以降は対前年比で10%以上の伸びを示している。中国の自動車販売市場は2018年をピークに2019年は減速し、大幅な伸びはもはや期待できないとされてきたが、現時点では2019年のレベルを大幅に上回る結果になっている。

中国の2020年前期の新車登録台数は903万台で、前年同期比20.48%増

アメリカは、新型コロナウイルス感染は依然として拡大しているにもかかわらず経済は動き始めており、9月からは前年同月比をわずかながら超えるレベルに回復。10月も136万2000台と前年超えを記録した。これはトランプ政権での経済重視政策の影響も反映していると見るべきだろう。

アメリカにおける新型コロナウイルス感染者数の推移

ところが11月の大統領選挙により、新型コロナウイルス対策を最重視する民主党のバイデン大統領が誕生し、従来のようななし崩し的な経済活動拡大にブレーキをかけることも予想され、まだまだ今後の見通しは楽観的とはいえない。

第2波の感染のピークを迎えつつあるヨーロッパは、依然として自動車販売の低迷状態が続く。アジアではインドネシアを始めとする地域も感染が終息する見通しは立っておらず、自動車販売は厳しい減速状態が続いている。

一方で、アメリカ同様に感染が拡大したインドは9月中旬に感染のピークに達し、その後は減少傾向に転じたという背景の下で、自動車販売は8月からプラスに転じ+14.2%、9月は+16.2%と大幅に回復しつつある。

このようにグローバルで見ると、感染状態と経済活動の状態はまだら状態で、不透明さも払拭できていない状態だ。自動車メーカーにとっては、中国、アメリカ、インドなどプラスに転じている市場での生産、販売に極端に依存せざるをえなくなっており、ここで収穫を刈り取ることができるかどうかが第1四半期の大幅な赤字を埋め、今期の後半での収益確保の課題となっている。

トヨタ

トヨタの4月~9月の累計連結販売台数は前年同月比-24%の308万6000台、トヨタ/レクサスの販売台数は前年同期-19%の401万1000台となり、第1四半期は前年比-40%だったのに比べ第2四半期は前年比93.1%というレベルまで回復している。

この結果、第2四半期の営業収益は、前年同期-3兆9830億円の11兆3752億円、営業利益は前年同期-8792億円で5199億円の黒字となった。トヨタはロックダウンが進行していた春の時点での今年度の通期見通しは、5000億円の黒字を確保するとしていたが、第2四半期で、早くも目標を超えたわけである。

その原動力は中国市場での販売拡大で、4月~9月期で対前年比119%と大幅な伸びとなり、新型コロナウイルスの影響をまったく受けていないような活況となっている。さらにアメリカでも市場の回復に合わせて、当初の見通しより販売台数を伸ばしていることも挙げられる。

中国での業績

この結果、今年度の通期見通しでは、販売台数は前回の発表より30万台増の750万台、トヨタ/レクサスの販売台数も30万台増の860万台を見込み、今後は第3四半期が約100%、第4四半期が約105%を見込むとしている。

そして決算見通しについて営業収益は前回の見通しから2兆円増の26兆円、営業利益は8000億円増の1兆3000億円と上方修正している。

なお第2四半期の決算発表は、通常、財務担当取締役が登壇することになっているが、今回は異例にも豊田章男社長が出席し、今回の上方修正は成り行きではなく、リーマンショック時の大減速と比べトヨタの体力強化の結果でることをアピールした。

体力が強化されたこと、日本の経済を自動車メーカーが牽引することをアピールする豊田章男社長

そして、この新型コロナウイルスの感染が続く中でも、裾野市のトヨタ東日本(旧称:関東自動車)東富士工場跡地に「ウーブン シティ(CASE実験都市)」を建設する計画も継続し、2021年2月頃には着工することも明らかにした。

トヨタにとって唯一の懸念は、アメリカでの民主党政権での新型コロナウイルス対策により経済活動のブレーキがかかるかどうかであろう。

テキサス州に所在するトヨタの北米本社

ホンダ

ホンダは2020年度第2四半期連結決算を発表し、国内ではモデル別で「N-WGN」や新型「フィット」が前年同期を上回る販売台数を記録していることを発表した。

決算を発表する倉石誠司副社長

第2四半期(4月1~9月)の自動車のグローバル販売台数は204万5000台と、前年同期比51万7000台減で前年比79.8%となった。主な市場別では日本が28万2000台で前年比74.2%、アメリカの販売台数は68万2000台で前年比81.5%、中国は84万4000台で前年比107.1%と、中国の好況が突出している。

連結売上高は5兆7751億円、営業利益は1692億円で、前年同期に比べて減少とはなっているものの、第1四半期の赤字から第2四半期での黒字化を達成している。

アメリカ市場は5月以降の段階的な経済活動の規制緩和や販売店の活動再開があるものの、CR-Vやシビックなどを中心に、市場平均を上回るペースで回復し、シビックはセグメント首位に立ってる。さらに9月末には新型TLXを投入するなどにより復調基調としている。またホンダの堅調の背景には、業界で4000ドル超えさらに拡大傾向にある販売奨励金を、ホンダは1800ドルに抑えており、健全な販売体制を実現していることも貢献している。

中国・武漢に主力工場があるホンダは、武漢での新型コロナウイルスによるロックダウンによりトヨタに比べ生産のダメージが大きかったが、4月以降の販売は前年同期を上回っており、新型モデルの投入効果もあって市場の伸びを上回る販売となっている。7月から9月まで単月での販売実績は、なんと過去最高を記録しているのだ。販売見通しも新型車の投入のほか、工場フル稼働による市場への供給増加で前年度超えを目指している。

今年度の通期見通しは、乗用車は10万台の上方修正で460万台とし、営業収益の見通しは当初の見通しから2200億円増加し4200億円と上方修正を行なっている。

ホンダは、この新型コロナウイルスにより生まれた危機の中で収益改善のための構造改革も進めており、この1年での短期的な経営より、数年後のより強固な体制を目指しているが、厳しい状況の中での黒字確保の見通しは大きな安心材料となるだろう。

スバル

スバルの第2四半期の決算は、新型コロナウイルスの影響で販売台数が前年同期比27.9%減の36万3000台となった。売上収益は同24.1%減の1兆2184億円、営業利益は同67.7%減となっているものの、今期当初の計画通り306億円の黒字を確保している。

4~9月期の販売は、日本市場ではレヴォーグのフルモデルチェンジ、インプレッサ、フォレスターの大幅改良など、モデル切り替えのタイミングと重なったため前年同期比37.4%減の4.3万台に留まった。主力のアメリカ市場は回復しているものの4~6月期の工場、販売店の休業の影響が大きく21.9%減の28.4万台となった。

通期見通しは、売上台数は前年比11.9%減の91万台強とし、売上げ収益が前期比11.8%減の2兆9500億円、営業利益が47.7%減の1100億円を見込んでいる。8月時点で発表していた通期見通しからは業績と販売台数の両方を上方修正している。

その背景には、アメリカでの販売が想定を上回って回復していることだ。販売台数では、9月と10月は過去最高という記録を達成している。10月時点でも飲食店の営業時間や州を越えての移動が制限されるなど、制約下での過去最高記録である。

ただし、これが継続する保証はなく、バイデン新政権の下でどのような新型コロナウイルス対策が行なわれるかにより、今後の動向は左右されることはいうまでもない。

アメリカにおける生産拠点「スバルofインディアナ オートモーティブ

スバルのアメリカ市場は、日産に迫る販売台数にまで伸ばしており、しかも販売奨励金の抑制など事業基盤の安定感が強みとなっている。こうしたアメリカ市場での基盤の強さと、日本市場での2021年型モデルを投入することなどを踏まえ、通期見通しを上方修正できた要因となっている。<松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

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