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2014年に国家プロジェクトとしてスタートした「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」は、日本の経済、産業の競争力を向上させるために重要な、11分野のプロジェクトが第1期のプロジェクトとして選ばれている。その中にガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの最大熱効率を高め、CO2排出量を低減するための「革新的燃焼技術」が選ばれている。
革新的燃焼技術のターゲットは最大熱効率50%の実現
このプロジェクトには全国の約80の大学の研究室と自動車メーカーが結集した、産学合同の研究・開発体制とし、ガソリン燃焼チーム、ディーゼル燃焼チーム、制御チーム、損失低減チームの4チームの編成で、研究・開発がスタートしている。政府予算はSIPの総額が325億円。その内15.5億円が「革新的燃焼技術」に当てられている。
研究・開発4チームの概要は次のようになっている。
「高効率ガソリンエンジンのためのスーパーリーンバーン研究開発」の研究責任者:飯田訓正(慶應義塾大学・大学院理工学研究科・特任教授)
「乗用車用ディーゼルエンジンにおける高度燃焼制御」の研究責任者:石山拓二(京都大学・大学院エネルギー科学研究科・教授)
「革新的燃焼技術を具現化するモデリングと制御」の研究責任者:金子成彦(東京大学・大学院工学系研究科・教授)
「排気エネルギーの有効利用と機械摩擦損失の低減に関する研究開発」の研究責任者:大聖泰弘(早稲田大学・研究院次世代自動車研究機構・特任研究教授)
内燃機関の研究開発に国費を使う理由
現在市販されている乗用車用エンジンの最大熱効率は、最高でも40%程度だが、このプロジェクトは、過去40年間かけて自動車メーカーが約10%向上させた熱効率を、5年間という短期間でさらに10%引き上げるという野心的な目標を掲げた。
自動車の電動化がグローバルなトレンドになっていることは明らかだが、2040年でもハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も含めて、世界の全自動車保有台数の約90%には、内燃エンジンが搭載されると予測されている。このためCO2排出量を減らすためには、内燃エンジンの熱効率向上は不可欠であり、戦略的イノベーション創造プログラムに選ばれたのだ。
これまで世界各国の自動車メーカーが内燃エンジンの熱効率向上技術の開発に取り組んできたものの、飛躍的な進展は難しくなっており、1970年代に約30%だった熱効率は、40年以上をかけても40%に到達するというレベルだ。
乗用車用エンジンの熱効率のさらなる向上が難しくなっている背景には、エンジンの燃焼そのものが極めて複雑かつ高速で、空気量、燃料量、燃焼のタイミングなど、コントロールするパラメーターが膨大にあることだ。エンジンは、ピストンの動きに合わせて急激な化学反応と発熱が発生し、それによって生じる圧力がピストンに作用し大きな動力を生み出す。さらにこのような燃焼が1秒間に何10回も発生し、市販エンジンとして成立させるには、これらを安定して発生し続ける必要がある。