【JNCAP】予防安全性能評価はどうやって試験するのか? 同テストで「カローラ スポーツ」が最高得点獲得

独立行政法人・自動車事故対策機構(NASVA)は2018年11月29日、2018年前期の予防安全性能の結果を発表した。2018年度からは、被害軽減ブレーキ(対車両+対歩行者)、車線逸脱制御などの項目に加え、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、被害軽減ブレーキで「夜間(街灯あり)対歩行者」の項目が追加されている。

2018年前期として評価を行なった全10車種中の6車種が最高評価「ASV+++」を獲得し、カローラ スポーツは追加された対歩行者被害軽減ブレーキ(夜間・街灯あり)とペダル踏み間違い時加速抑制装置でともに満点を獲得し、合計122.4(満点:126)となり全10車種中で1位の得点となった。

今回から夜間・街灯ありでの対歩行者被害軽減ブレーキも評価が加わっている
今回から夜間・街灯ありでの対歩行者被害軽減ブレーキも評価が加わっている

また衝突安全性能では全4車種が最高評価のファイブスターとなり、得点では三菱エクリプス クロスが最高得点を得ている。

予防安全装置の評価の見方

被害軽減ブレーキ(対前方車両)

試験車を10〜60km/h で模擬車両(ターゲット)に後方から接近させ、警報、被害軽減ブレーキの作動状況を確認。試験はターゲットが止まった状態での試験と、20km/hで走行している場合の2種類を行なう。警報またはブレーキの作動により衝突を回避したか、あるいは衝突した場合でも、衝突前にどの程度速度が低下していたかを確認し、それぞれの場合に応じて得点が与えられる。

被害軽減ブレーキ(対歩行者・昼間)

道路横断中の模擬歩行者(ターゲット)に10〜60km/hで試験車を接近させ、警報、被害軽減ブレーキの作動状況を確認。見通しの良い道路を横断する場合と、駐車車両の陰から道路を横断する場合の2種類の交通環境を想定した試験を行なう。警報又は被害軽減ブレーキの作動により衝突を回避したか、あるいは衝突した場合でも、衝突前にどの程度速度が低下していたかを確認し、それぞれの場合に応じて得点を与える。

被害軽減ブレーキ(対歩行者・夜間・街灯あり)2018年度から

道路横断中の模擬歩行者(ターゲット)に30〜60km/hで試験車を接近させ、警報、被害軽減ブレーキの作動状況を確認。対向車両がいない見通しの良い道路を横断する場合と、対向車両の後ろから道路を横断する場合の2種類の交通環境を想定した試験を行なう。警報又は被害軽減ブレーキの作動により衝突を回避したか、あるいは衝突した場合でも、衝突前にどの程度速度が低下していたかを確認し、それぞれの場合に応じて得点を与える。もちろん試験は夜間に実施し、街灯がある道路環境を模擬している。

車線逸脱抑制装置

試験車両を60km/hと70km/hで道路に引かれた車線からはみ出すように走行させたときに、車線を維持するよう試験車両を制御するか否かを確認。車線逸脱量が少ない場合に高い得点が与えられ、車線逸脱量が多い場合は得点が低くなる。車線逸脱量が一定量を超えていた場合でも、警報が適切な位置で作動していれば得点が与えられる。

後方視界情報

ドライバーのバック時の行動に関する実験データと歩行者の移動等のパターンを組み合わせたシミュレーションにより求めた事故の危険性が高い後方エリアを全てカバーできるよう、視対象物(ポール)を配置。具体的には3.5m先の遠方エリアに3本、巻き込みやすい左右の近傍エリアに2本、子供が入り込む可能性のある車両のすぐ後ろとなる近接エリアに3本設置して確認を行なう。

視対象物の大きさは、死亡者事故で件数が多い1〜2歳児を想定している。遠方エリアについては、1〜2歳児の移動時を想定して平均身長である高さ90cmとした。近傍エリアと近接エリアについては、より厳しい条件となる1〜2歳児がしゃがんだ状態を想定して高さ60cmとし、視認要件の一つであるマーキングエリアについては、1〜2歳児の平均肩幅程度となる20cm幅を採用した。

評価点については、既に評価を行なっている衝突被害軽減制動制御装置(AEBS)、車線逸脱警報装置(LDWS)と同様の方法で、事故低減効果に応じて与えることとしたところ、6点の配点とした。試験の結果、適合要件を満たさない箇所があれば減点。

ペダル踏み間違い時加速抑制 2018年度から

ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた状況を模擬するために、試験車を模擬車両(ターゲット)に接近させ、停止状態から急速にアクセルペダルを踏み込む。その際に、衝突防止または被害軽減のために急発進、急加速を抑制するかを確認する。この試験は、車両が前方にある状態から前進状態において発進する場合と、後方に車両がある状態から後退状態において発進する場合の2種類の交通環境を想定した試験を行なっている。衝突を回避したか、あるいは衝突した場合でも、衝突時の速度をどこまで低減できたかを確認し、回避あるいは減速量に応じて得点が与えられる。

総合評価

評価点は、日本の事故実態を踏まえて死亡・重傷事故を少なくできる効果に応じて与えられ、その合計が12点を超えると「ASV+」、46 点を超えると「ASV++」として認定され、さらに86点を超えると「ASV+++」として認定される。

各車の得点を見ると、近年の予防安全システムの進化は明確で、性能が高まっていることがわかる。特にトップ得点数となったカローラ スポーツの第2世代のトヨタ・セーフティセンスは(システムはデンソー製)、いきなりトップレベルに達していることを証明している。

JNCAP 関連情報
自動車事故対策機構 公式サイト

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