こうした理由から自動車メーカーも2030年~2050年に向けての生き残り戦略のためには、クルマを製造、販売するビジネスから、クルマのシェアリングを前提とするMaaSへの取り組みは不可欠とされている。
ダイムラー、フォルクスワーゲンの動向
ドイツではスマートフォンのタクシー配車アプリ「mytaxi(マイタクシー)」が普及している。アメリカ発の事業で、世界70ヶ国を席巻しているUberではなく、自治体や官庁、地元のタクシー会社ともうまく関係を築きながら、ヨーロッパで最大の勢力となっている配車サービスが「mytaxi」だ。
このmytaxiは2014年以来ダイムラー社の傘下にある。一方、2008年にスタートした世界最大のカーシェアサービス企業「car2go(カーツーゴー)」もまたダイムラー社の傘下だ。現在、car2goはヨーロッパやアメリカ、中国など世界8カ国でカーシェアサービスを提供している。
car2goの登録ユーザー数は330万人に達している。car2goは、決められたエリア内でどこでも乗り捨て自由という便利なカーシェアのサービスだ。今ではそれを世界の24都市で、公的な認可を得て実施している。Uberのように無許可の白タク営業支援システムは、国によっては禁止、あるいはグレーな存在と位置付けられているのとは一線を画しているわけだ。
ダイムラー社は、メルセデス・ベンツという高価格帯のプレミアム・ブランドの自動車メーカーでありながら、2007年に「ダイムラーモビリティサービス」を設立し、自動車商品だけではなく、MaaSの可能性を探りつつビジネスを実行に移している。
フォルクスワーゲン・グループは、2017年に電動・完全自動運転(レベル5)のプロトタイプ・ミニバン「セドリック(Self Driving Carの文字による造語)」を発表した。
当初セドリックは、電気駆動で、ハンドルもペダルもないレベル5の完全自動運転車として注目されたが、パーソナルカーではなく、音声コマンドで目的地の設定ができるなど、シェアリングカーを目指していることは明らかだった。
セドリックは様々な形態が提案されているが、2018年にハノーバーで最新のセドリック・アクティブを発表した。ここで、通学用途、移動小型店舗などの新たな使い方の他に、MaaS向け車両であることを明らかにした。
つまりフォルクスワーゲンはMaaSにおけるシェアリングができる自動運転車の製造を担当し、それを包括する存在としてMssaを位置付け、MaaSを牽引するのはコンテンツ・プロバイダー(デジタルコンテンツをWEB、スマートフォンで提供する事業者)だとしている。
■そして日本は
トヨタはeパレットを始めとするモビリティに関連するプラットフォームとして「MSPF(モビリティサービスプラットフォーム)」を掲げ、サービス、クラウドサーバー、モビリティをつなぐ広範なMaaSを自ら主導して展開する構想だ。