2013年11月19日、ホンダは走りと燃費を両立させる新世代パワートレーン技術群「EARTH DREAMS TECHNOLOGY(アース・ドリームス・テクノロジー)」の一つとして、小型車、中型車に最適な直噴ガソリンターボエンジン「VTEC TURBO」を新開発したと発表した。
ホンダは初代レジェンドのターボエンジンの失敗以降、長らくガソリン・ターボエンジンの研究・開発は封印されていた。しかし、ヨーロッパ向けのディーゼルターボの開発以降は改めてターボの効果、特性が再評価され開発が始まったという。そして世界的にダウンサイジングターボ・エンジンが主流になった現在、ホンダもついにダウンサイジング・ターボのコンセプトを採用することに踏み切ったわけだ。
新開発のエンジンは、VTECを始めとした可変動弁機構を採用し、高流動燃焼を用いた直噴ターボ過給により出力をアップし、エンジン排気量をダウンサイジング。さらに徹底的なフリクション低減により、クラストップレベルの出力性能と環境性能を両立しているという。新開発されたターボエンジンのラインアップは、排気量が2.0L、1.5L、1.0Lの3クラスのバリエーション。既存のハイブリッド技術やディーゼルエンジンと同様に、今後グローバルで発売されるモデル特性や地域ニーズに合わせて順次搭載されるという。
・2.0L 4気筒 直噴ターボエンジン
VTEC、高出力型ターボ、直噴技術、高性能冷却システムにより高出力・高レスポンスを実現するハイパフォーマンス・スポーツエンジンと位置付けられる。出力目標は2.0Lで280ps以上、トルクは400Nmとされ、2014年から施行されるヨーロッパの排出ガス規制「EURO6」に適合する環境性能を備えた高過給・高回転型のハイパフォーマンスエンジンだ。
具体的には、シビック・タイプRに搭載され、ニュルブルクリンク北コースでFF車最速ラップタイム(現在のレコードホルダーはルノー・メガーヌR.S.)を叩き出すためのエンジンとされる。そのため栃木研究所での開発テスト車両はFN2型シビック・タイプRで熟成を行なっている。
特徴としてはシリンダーヘッドの、特に排気ポート周囲の冷却性能の向上を図っていることと、吸気ポートではポート形状のチューニングで高タンブル流を作り出すようにしている点だ。圧縮比は9.8で、高過給圧の仕様だ。またピストンはクーリングチャンネル式(冠部内面円周の油冷化)を採用するなど、ハイパフォーマンス・エンジンにふさわしいパーツも多用されている。
・1.5L 4気筒 直噴ターボエンジン 1.0L 3気筒 直噴ターボエンジン
1.5Lと1.0Lのターボエンジンは、2.0L版とは異なり、燃費を重視した純粋なダウンサイジング・コンセプトで開発されている。VTECを始めとした可変動弁機構を採用し、徹底した低フリクション化を図った新骨格エンジンをベースに、低イナーシャ・高応答ターボチャージャーと直噴技術により、従来の自然吸気エンジンを凌ぐ高出力、高トルクと低燃費を両立した次世代のコンパクトカー向けのエンジンとされる。現時点では搭載車種は決定していないが、海外向けのフィット、シビックとミニバンが想定される。
2.0Lエンジンも含め、シリンダーヘッド一体型のエキゾーストマニホールドを持ち、小型ターボがシリンダーヘッドダイレクトに締結される構造だ。1.5L、1.0Lエンジンはレギュラーガソリンを使用するターボエンジンで、低回転トルク型とされる。1.5Lエンジンは空冷インタークーラー装備、1.0Lエンジンはインテークマニホールドと水冷インタークーラーを一体化させた吸気システムとしている。なお2.0Lと1.5Lエンジンは前方排気、1.0Lエンジンは後方排気システムというレイアウトの違いがある。出力は1.5L版が204ps/260Nm、1.0L版は130ps/200Nmを達成することが目標とされている。