ABB FIA フォーミュラEシーズン10の第8戦モナコが4月27日(土)に予選、決勝が行なわれた。コースはF-1でお馴染みのモナコの市街地コースだ。
またレースに先立ち、来シーズン以降のシーズン11、12ではマシンがGEN3 Evoとなり、AWDも含め大きなアップデートが発表された。ちなみにシーズン13でマシンはGen4が投入される。
GEN3 Evoエディションは、0-60mph加速は現行のF1マシンよりも30%速く、GEN3マシンよりも36%速くなる。0-100km/h加速はF-1の2.0秒に対しGen3Evoは1.86秒だ。そしてフォーミュラE初となる全輪駆動(AWD)を採用し、予選、レーススタート、ATTACK MODEで使用可能になる。
もともとGen3マシンには前後に駆動モーターを搭載しているものの、フロントモーターは回生のみに使用していて、駆動はしていなかったのだ。これを回生だけでなく駆動にも使用することで、よりエキサイティングなレースが期待できる
さて、第8戦モナコE-Prixだが、第7戦が終了した時点ではポルシェのパスカル・ヴェアラインと、同じくポルシェのパワートレインを使うアンドレティのジェイク・デニスが同ポイントでシリーズをリードしている。
シーズン序盤はポルシェPTとジャガーPTが好調でシーズンをリードをしていたが、中盤に入り、DS、日産などのPTも調子を上げ、特に日産のローランドは7レースで4回の表彰台を獲得しトップに9ポイント差まで詰め寄ってきている。しかしその第7戦でローランドは周回数カウントをリセットし忘れ、トップを快走しながら電欠を起こし、優勝し損ねるレースをしていた。
さて、モナコではシーズン9ではレース中に数多くのオーバーテイクが繰り広げられ、市街地レースの醍醐味を感じる展開だったが、シーズン10ではどんな展開になるのか、グループ予選から覗いてみよう。
グループAではジャガーのミッチ・エバンスがトップタイムで、2番手がヴェアライン、3番手がマセラティのマキシミリアン・ギュンター、そして4番手がポルシェのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタで好調ローランドは9番手となり、デュエルスへの進出を逃した。
またPTではジャガー、ポルシェ、そしてマセラティ(DS)が進出という結果になった。
つづくグループBではDSペンスキーのストフェル・ヴァンドーンがトップ通過で、2番手に現在シリーズ4位のジャガーのニック・キャシディ、3番手は同じくジャガーPTを使うエンビジョンのセバスチャン・ブエミ、そして4番手がDSペンスキーのジャン・エリック・ヴェルニューという順になった。
グループBではジャガーPTとDSが好調で、なんと日産PTを使うマクラーレンも含め一台もデュエルスに進出できなかった。日産のサッシャ・フェネストラズも7番手で、チャンピオンシップリーダーのデニスも9番手という結果になった。またフリープラックティスでマクラーレン・日産のサム・バードがトラブルによるクラッシュを喫し、左手を骨折するアクシデントがあった。代わりに、若手のF2ドライバー、テイラー・バーナードが急遽、予選から出場することになったが、すぐには乗りこなせないマシンだけに苦戦していた。
グループ予選を300kWで競ったが、デュエルスでは350kWに出力アップする。QFではギュンターとヴェアラインのドイツ人対決はヴェアラインが勝利。ダ・コスタとエバンスのポルシェ対ジャガーはエバンスが勝利した。そしてグループBからのデュエルス進出組では、ブエミ対キャシディのジャガー対決でキャシディが制した。そして最後の1枠はヴェルニューとヴァンドーンというDS同士の戦いで、ヴァンドーンが勝利した。
つづくSFではヴェアライン対エバンスで、エバンスはヌーベルシケインを不通過し、タイムを抹消。もう1組はヴァンドーン対キャシディで、キャシディがプールサイド・コーナー入口でマシンが暴れ、ヴァンドーンの勝利。
ポールポジションをかけたデュエルス決勝はヴェアライン対ヴァンドーンでポルシェ対DSでは、ヴェアラインが今季3回目のポールポジションを獲得した。これで3ポイント獲得し、シリーズの単独リーダーとなった。
決勝
決勝レースもF-1と全く同じコースを使い3.337kmを29周するレースで、途中SCが入るとアディショナルラップがプラスされる。そしてアタックモードはいつも通り2回、8分間を使い切る義務がある
ポールポジションはヴェアラインで、以下、ヴァンドーン、キャシディ、エバンス、ヴェルニュー、ブエミの順で、ローランドが15位から、サッシャは14位からのスタート。シリーズランキング2位のデニスはなんと18位からのスタートとなった。
ホールショットはヴェアラインで綺麗にスタートするも、エバンスがキャシディを交わして3位に。2位はヴァンドーンだ。3周目早くもヴェアラインがアタックモードに入り、4番手に順位を下げた。
順位の入れ替わりが例年通り激しく、接触も多い。そのためデブリがコース上に散乱するケースが頻繁に起きる展開になった。5周目にはモルタラがマシントラブルからの激しいクラッシュがあり、SCが入る。レース再開は9周目からで、続々とアタックモードに入る。
ローランドは15位スタートだが、ジワリと順位をあげ、8番手に浮上している。またマセラティの新人ダルバラが9番手と好走を見せている。
中盤まではバッテリー残量をセーブするためレース展開はゆっくりで1分41秒台で周回を重ねる。予選タイムは1分30秒台なので、10秒以上遅い展開になる。そのため誰でもがトップに立てる展開とも言えるわけだ。
中盤16周目になるとバッテリーのマネージメントもある程度目処がたつのか、ペースがあがり、1分34秒台へと7秒も速い展開に変わる。
17周目、トップはエバンスで2位がキャシディとジャガーのワンツー体制となり、3位ヴァンドーン、4位ベルニューでDSも2台並ぶ展開だ。
ジャガーはキャシディがペースを落として後続に蓋をする展開に持ち込み、エバンスがアタックモード・ロスをしても順位が入れ替わらない展開にする。そして、今度はキャシディがトップに立ち、2番手にエバンス。エバンスはアタックモード中にもかかわらず、ペースダウンし、キャシディのアタックモード・ロスを消せるペースに持ち込み、予定通り2回のアタックモードを消化した。
さらに25周目にもSCが入り、各マシンはバッテリーに余裕が生まれ、27周目に再開。アディショナルラップ2周を加えてラスト4周となったところで、ラップタイムは一気に上がった。
29周目にはファステストをいろんなドライバーがマークする展開となり、1分29秒台までタイムアップ。順位を入れ替えようとするも、トップジャガーのワンツー、3位、4位がDS、そして5位、6位がポルシェ、7位、8位が日産という2台体制を築いた。
ファイナルラップ、ローランドはポルシェの牙城を崩しダ・コスタを交わして6位フィニッシュした。結果、ジャガーのワンツーでエバンスが通算11勝目、今季初優勝を果した。2位はキャシディで、DSのヴァンドーン、ヴェルニューが3位、4位。そしてチャンピオンシップ・リーダーのヴェアラインも5位でチェッカーを受けた。サッシャはダ・コスタを交わしきれず8位フィニッシュだったが日産は2台ともポイントを獲得した。
これでシリーズリーダーはヴェアラインで変わらず102pt、2位にキャシディが浮上し95ptで追いかける。そしてデニスは3位に下がり89pt、ローランドも4位に下げ88pt、5番手にエバンスが77ptで浮上し、ギュンターとヴェルニューが65ptでつづいた。8番手がバードだが、左手の骨折で今季は難しいかもしれない。代役で突如走行することになったテイラー・バーナードは14位でフィニッシュしている。
さて、残りの8戦は全てWヘッダーとなり、次戦第9戦、10戦はドイツ・ベルリンで。そして11戦、12戦は中国・上海で開催。さらに13戦、14戦はアメリカへ渡り、最終戦となる15戦、16戦はイギリス・ロンドンで締めくくることになる。
ポイントを見れば上位7人までが大接戦でレースごとに順位が入れ替わる可能性があり、混沌としている。
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