フォルクスワーゲンのSUV攻勢を象徴する新型T-Rocに試乗してきた。ひとクラス上にCセグメントのTiguanがあり、ひとクラス下にBセグメントのT-Crossがある。T-Rocはそのちょうど中間ポジションになる。
ボディサイズは全長4240mm、全幅1825mm、全高1590mm、ホイールベース2590mmで、ハッチバックのゴルフと似たようなサイズだ。全長は-15mmで全幅は+25mm、ホイールベースはゴルフが2635mmなので、Bセグメント+というカテゴライズになるだろう。
実際の販売店ではT-Crossとの比較で購入するケースが多く、コンパクト/スモールサイズの都市型SUVを求めるユーザーが多いことがわかる。そうしたニーズに細かくサイズ違いを用意するあたりは市場をよく知る量販メーカーといえる。したがって駆動方式もFFの設定になっている。
2.0Lディーゼルターボ+7速DSGのみの選択肢
国内に導入されたのは4気筒2.0Lディーゼルターボ+7速DSGのパワーユニットだけで、ガソリンモデルはない。だが、装備違いで4モデルあり、標準車がstyle、その上にスタイルデザインパッケージがあり、ライン違いでTDIスポーツとTDI R-Lineがある。試乗したのは「TDI style Design パッケージ」でフォルクスワーゲンのSUVで初めてツートーンの設定がされたモデル。ブルーのボディカラーにホワイトのルーフという爽やかな色の組み合わせだ。
パワートレーンの最大出力は150ps/3500-4000rpmで、最大トルクは340Nm/1750-3000rpmというスペックに7速DSGを組み合わせている。JC08モードでは19.5km/LでWLTCモードでは18.6km/Lとなっている。
ちなみに欧州では、ガソリンが1.0L/直3、1.5L/直4、2.0L/直4の3つがあり、ディーゼルも1.6L/直4と、出力の異なる2種類の2.0L/直4の計6タイプと豊富にラインアップしている。
エクステリアではT-Crossより、引き締まった印象があるデザインで、フロントフェイスは最新のデザインとなり2眼のヘッドライトと平たく薄いグリルが印象的だ。またボディのプレスラインはフォルクスワーゲンらしく、直線を多用したプレスラインを強調したデザインになっている。
インテリアはボディカラーに合わせたブルーのインパネやシートのストライプでコーディネイトされている。メーターパネルは最新の液晶ディプレイが装備され、メーター内にナビ情報を表示できるタイプになっている。ちなみにT-Crossのメーターはデジタルであるものの、ナビ表示はできず、ポロもナビ表示ができるタイプなのに、T-Crossはひと世代前のメーターを装備していた。
走り出して感じるのはフォルクスワーゲンらしい、頑丈な剛性感の高いボディであることをまず印象づけられ、安心感が高まる。そしてハンドルのセンターの座りが強いことも特徴だったが、最近は少し弱まり、操舵も軽めに変わってきている。
ただ、アクセルとブレーキの微低速時のレスポンスが悪く、ギクシャクしてしまう場面もある。駐車場などでの切り返しで、クリープができないことや僅かに動かしたいときのアクセルのレスポンスが悪い。ブレーキも慎重に踏まないとカックンブレーキになってしまうなど、扱いにくさがあった。
フォルクスワーゲンのDSGは乾式と湿式の2タイプがあり、乾式タイプはポロなどトルクの大きくないモデルに使われているが、同様に微速でのクラッチのつなぎ方のまずさはある。が、このT-Rocは340Nmあるユニットなので湿式を採用しているはずだ。湿式タイプだとそうした微速域でのギクシャク感はなかったが、T-Rocではその症状が出ていた。
走り出せば、安心の間違いない直進性と剛性感からくるフォルクスワーゲンらしさがあり、乗りやすさを感じる。着座位置が高く、フロントウインドウには視界を邪魔するものは一切ない。アップライトなポジションは前方の見渡しもよく、都市型SUVとしての魅力を感じる。
ユーティリティでも、やはり配慮があり、トランクスペースは大きい。5名乗車してリヤシートの背もたれ上端まで荷物を積載した場合445Lのサイズがあり、これは、同じセグメントの中ではトップクラスの容量だ。リヤシートの背もたれは、6:4の分割可倒式で、背もたれを折り畳むと、ラゲージ容量は最大1290Lにまで拡大する。この広大なスペースは、このクラスのSUVとしては最大級の容量と言える。
コンパクト/スモールクラスのSUV3兄弟が揃ったが、どのモデルをチョイスするのか、悩ましいところだろう。だが、試乗車の車両本体価格は405万9000円で、T-Crossと比較するユーザーは価格も含め、よりコンパクトな300万円を切るT-Crossを選択ケースが多いという。ゴルフサイズが必要な都会型SUVを必要とするニーズは国内でどれほどあるのか。国内導入が大幅に遅れた理由はこのあたりにあるのかもしれない。<レポート:高橋明/AkiraTakahashi>