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ボルボ・カーズは2019年3月5日、スピードの出し過ぎによる危険性について強く警告し、2020年以降のすべてのボルボ車の最高速度を180km/hに制限すると決定したことを発表した。
技術だけで死亡・重症事故はゼロにならない
ボルボはかねてから「ビジョン2020」を掲げ、2020年までに新しいボルボ車に搭乗中の事故における死亡者または重傷者をゼロにすることを目指している。これは自動車業界の中で最も野心的な安全目標だ。そしてドライバー支援システム、衝突安全性能などパッシブ・セーフティの分野の技術開発を進め、積極的にこれらの技術を採用している。しかしボルボは技術面だけでは死亡者や重傷者をゼロにできないことも認識しており、ボルボ・カーズは今後、技術面だけではなくドライバーの行動面にも焦点を当てて行くという。
ボルボ・カーズによる研究では、自動車による死亡事故や重傷事故を完全になくすという野心的な目標を実現するために、三つの課題、いわゆる「ギャップ」が存在していることを確認している。クルマの速度超過がそのうちの大きな要因の一つなのだ。
ーーボルボ・カーズ ホーカン・サムエルソンCEO
「ボルボは安全に関するリーダーです。今までも、そしてこれからも。当社の研究により、ボルボ車で死亡事故や重傷事故をなくすために、どの部分にどんな問題があるかが明らかになりました。速度を制限することで全てを解決できるわけではありませんが、たとえ一つの命でも救うことができれば、それは価値があるといえます」と語る。
ボルボは最高速度制限とは別に、スマート・スピード・コントロールとジオフェンシング・テクノロジーを組み合わせれば、将来的に学校や病院の周辺での速度を、自動的に制限できるかについても調査している。
さらにサムエルソンCEOは、「ドライバーの行動を変える技術を自動車に搭載することで、スピードの出し過ぎ、飲酒や薬物使用による酩酊、注意散漫といった問題に取り組む権利や義務が自動車メーカーにあるのかどうかについて議論を進めたいと思います。ボルボがこの問いに対する明確な答えを持っているわけではありませんが、議論の中でリーダーシップを取り、先駆者になるべきだと信じています」とも語っている。
最高速度の抑制は必然
スピードの出し過ぎに関する問題は、一定の速度を超えたとき、車両の安全装備やクラッシャブル構造などでは事故による死亡や重傷が発生する事態を十分に対処しきれないという点にある。そのため、ほとんどの西欧諸国で制限速度が設けられている。それにもかかわらずスピードの出し過ぎという問題は重大であり、交通事故による死亡者数の中でも大きな要因の一つとなっている。
毎年、何百万人もの人々がスピード違反をしており、アメリカの国家道路交通安全局(National Highway and Traffic Safety Administration)の交通事故データによると、2017年の米国における全交通死亡事故数の25%が速度超過によるものだったという。
ボルボ・カーズの安全分野の第一人者であるヤン・イヴァーソンによると、人々は単純にスピードに関する危険性を認識していないという。「私たち人間は、誰もがヘビやクモに近づいたり、高い場所に立てば危険であることを理解していますが、速度に関してはそれほど理解していないのです。我々は今おかれている交通状況に対してあまりにもスピードを出し過ぎ、ドライバーとしての速度適応能力が不足しています。ドライバーに対し、より適切な行動をするよう支援し、スピードの出し過ぎが危険であることを人々に理解してもらうような対策を取るべきだと考えます」とイヴァーソンは語っている。
今回の最高速180km/h制限はその対策の第一歩となる。ただ、スピードに関する問題以外にも二つの問題が、「埋めるべきギャップ」として挙げられる。スピードの出し過ぎと同じくらい難しい問題として、飲酒や薬物使用による酩酊がある。もちろん世界中のどこでもで、アルコールや薬物の影響下で運転することは違法だが、それでも今日の交通事故による死亡や重傷の大きな原因となっている。
さらにもう一つの問題は、注意散漫だ。ドライバーが自分のスマートフォンに気を取られていたり、運転に集中できていないことが死亡事故の大きな要因となっている。この問題は飲酒運転と同じくらい危険であることはいうまでもない。
このようにドライバーの人的な要因による重大事故の危険性はいくつかあるが、まずは最高速を一定程度に制限することは、ドライバーの過失による重大事故を抑えるための一つの手段であることは確かである。
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