横浜ゴム インフォマティクス技術によりによる革新的ゴム材料開発、タイヤ設計技術を開発

2017年10月23日、横浜ゴムはマテリアルズ・インフォマティクスによるゴム材料の開発技術とタイヤ設計技術を確立したと発表した。

横浜ゴムはゴム材料やタイヤ形状の設計にシミュレーション技術を積極的に取り入れ、2005年に高精度シミュレーション技術「マルチスケール・シミュレーション」と多数の最適設計案を地図情報で表示する「マルチパフォーマンス・マップ」を開発している。そして2015年に膨大な仮想ゴム構造のモデル化を可能にした「多目的設計探査シミュレーション技術」なども開発している。

■革新的ゴム材料開発技術「マテリアルズ・インフォマティクス」を確立

今回の素材開発のためのマテリアルズ・インフォマティクスとは、AIなどの情報科学を投入して、未知の材料の機能を推定し新材料や代替材料を効率的に探索する手法だ。これまでの材料探索は研究者の経験と直感に基づいて行なわれていたが、それを遥かに凌ぐ速度で合理的に求める特性を持つ材料を発見することができる。

横浜ゴム マテリアルズ・インフォマティクスの概念イラスト

新たな技術は、革新的なゴム材料設計の発想を得るために研究を進めてきたシミュレーション技術と、実際のゴムを使っての設計・加工、分析・計測の研究結果から得たデータを統合し、AI(機械学習)による情報・知識探査を導入するというものだ。これにより、今までにない高機能なゴム開発の精度とスピードを飛躍的に高めることが期待できるという。

■モデル化の成功

タイヤの性能にはゴム材料となるポリマー(ゴム)とフィラー(カーボンブラックやシリカなどの微粒子)の複雑な微細構造(分散状態、大きさ、分量など)が大きく影響する。

横浜ゴムは2015年に多目的設計探査シミュレーション技術を開発し、微細構造を設計因子とした広大な設計空間での仮想的なゴム材料をモデル化をすることを確立し、そのモデルによって力学特性、つまり弾性率やエネルギーロスなどの予測シミュレーションを実現しているのだ。

今回の新技術は、求められる性能目標に対してAIを使い、この膨大なシミュレーション結果、つまり設計因子と特性値のデータを探索していくという技法だ。そしてその設計因子のしきい値(=境目となる値)が、連続的に変化する数値を客観的に、定量的に導き出すことを短時間で可能としているという新技術なのだ。

また、実際のゴム材料の設計・加工パラメータや分析・計測で得られた結果を利用することにより、材料探索の精度が大幅に向上し、材料開発に必要な試作工数を削減できる。さらに、新たなシミュレーション(=粗視化分子動力学シミュレーション)も導入することで、設計因子が力学特性に影響するメカニズムも解析可能となり、今後、新たな開発アプローチの発想を得ることも期待できるというわけだ。

横浜ゴム マテリアルズ・インフォマティクスの概念 情報と知識の発見手順

これらの新技術を活用して、転がり抵抗が低く、摩耗しにくいという相反するゴム性能を目標として検証したところ、フィラーの半径は、あるしきい値より小さく、かつその界面(異素材との境界面)に形成されるバウンドラバー層はしきい値より薄い方が好ましいということがわかったという。

また、粗視化分子動力学シミュレーションの結果、フィラーの半径が小さいと高弾性になり、バウンドラバーが薄いとエネルギーロスが小さくなるメカニズムも見出すことができた説明している。

■インフォマティクス技術を活用したタイヤ設計技術

横浜ゴム マテリアルズ・インフォマティクスの概念イラスト

こうした新技術により、タイヤ設計において既存の検討範囲を超えた広大な設計空間でのデータ取得が可能となり、ブレイクスルーに繋がる設計因子の獲得、さらにその設計因子が重要となるメカニズムも解析可能となった。今後、そのメカニズムに基づいた新たな開発アプローチの発想を得ることも期待できる。

横浜ゴム マテリアルズ・インフォマティクスの概念イラスト タイヤ形状設計

そして、この技術はAI(機械学習)による情報・知識探査を活用したことが最大の特長であり、高性能タイヤの開発精度や開発スピードを飛躍的に高めることが期待できるという。

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