横浜ゴムが2022年2月に北海道旭川にある同社のテストコースで、2021年に発売したアイスガード7のテスト試乗会を開催した。
発売から2シーズン目になるが、今回のテストでは先代のアイスガード6との相対比較が中心で、進化のわかりやすいテスト項目が用意されていた。
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アイスガード7 進化のポイント
アイスガード7の特徴をおさらいすると、「氷に効く」「雪に効く」「永く効く」が3大コンセプトで開発され、氷上性能と雪上性能は相反性能にありながら、先代よりも双方の性能を向上させることに成功している商品だ。
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主に氷上性能ではアイスガード6よりも14%向上し、その秘密のひとつに「ウルトラ吸水ゴム」の採用がある。氷の表面にある水を吸水する新たなコンパウンドの開発を行ない、同時に長持ちする性能にもプラス要素になる新コンパウンドだ。
テストではこのコンパウンドで作ったスリックタイヤもあり、実際氷板路でもテストできたのだ。さらに永く効く性能には横浜ゴムが永く研究を続けているオレンジオイルSを採用していることも性能向上につながっている。
そして雪上性能では、そのポイントは凝着摩擦力の強化であり、技術的にはエッジ量をどの程度増やすのか?ということがキーだったということだ。エッジ量を増やせば雪上性能は向上するものの氷上性能が落ち、ブロック剛性も下がるためステア応答性も悪くなるため、開発でもっとも難しかったポイントだという。
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横浜ゴムではエッジ量の適値を求める研究を重ね、アイスガード6を100%として最大180%までエッジ量を増やし、適値を求め、その結果130%増やすことが最適であることにたどり着いたという。
アイスガード7の進化のポイントはそうした研究から、接地技術と溝技術で代表することができ、その進化を体験してきたのだ。
まずは氷板路で比較テスト
具体的にどんな比較テストをしてきたのか、早速お伝えしよう。
テストタイヤはアイスガード6とアイスガード7、そしてウルトラ吸水ゴムで作ったスリックタイヤの3種類。それぞれの特徴を整理すると、アイスガード6を基準に7は接地面積の拡大、ブロック剛性のアップ、そしてエッジ量の大幅な増大だ。そしてスリックタイヤは、当然接地面積は3本中最大、ブロック剛性も最大ということになる。これをテスト車両のプリウスに装着してテストした。
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最初のテストは室内にある氷板路。人工的に冷媒装置により氷の温度が任意に作れる設備があり、テストは-9度と0度の路面で30km/hからの短制動テストだ。ABSを効かせて停止距離を計測。絶対値比較では-9度の路面では10%の向上があり、0度の路面では14%制動距離が短くなるという。
われわれのテストは、パイロン通過時にABSを効かせるのではテストの正確性が課題になるので、ABSが働く寸前の踏力でどれくらいグリップしているのか体感することにした。
すると明確な違いがそれぞれの路面であったのだ。-9度では水分が少ないためかなり強めのグリップ力を発揮する。それはブレーキ減速で大きくノーズダイブするのだ。アイスガード6でも似たような挙動で、体感的には互角か、という感じだ。スリックタイヤはやや心配したが、20mもかからず停止するので大健闘だとう。ちなみにアイスガードは5m〜6mで停止した。
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そして0度の路面ではアイスガード6と7の違いは、-9度の路面より違いがはっきりとした。ノーズダイブの大きさの違いを体感し、発進時のスコートの大きさも違い、グリップ力の違いを体感した。つまり接地面積の拡大の効果とブロック剛性の向上、ウルトラ吸水ゴムの効果が出ているのだ。そしてスリックだが、これはまったく留まらない。ABSを効かせないように踏むことすらできず、ずっとABSが稼働し外からみているとタイヤはずっと回転し続けているのだ。停止距離を測る計測区間を大幅に通り越しての停止となった。
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雪上でも違いを実感
次に雪上に出て、同様に3種類のタイヤでスラロームテストを行なった。テスト車両は同様にプリウスと2トンを超えるベルファイア、絶対評価になるがGR86でテストした。ちなみにスリックタイヤ装着はプリウスだけだ。
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スラロームでは操舵の切り始めの手応えのシッカリ感がアイスガード7は強くなり、安心感につながる。そして横Gがかかる場面になるとその違いがもっとはっきりと現れ、グリップするか、横滑りするかの違いが出た。スラロームは40km/hと50km/hの進入速度でテストしたが、40km/hではほぼ同等、50km/hで差がでる、という結果だった。
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ヴェルファイアのような重量級だとどうか。こちらは逆にあまり差が出ることはなく重量が重い分接地荷重も大きいためか、両方ともグリップ力は高い。ただ敢えて滑らせてみると、プリウスより慣性モーメントが大きいためコントロールが難しくなるので、滑らせないで走らせることが大切なのだ。
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次の雪上テストではスラロームをさらに操舵量の大きいセッティングにしたコースで、ここではGRヤリスでアイスガード6と7を比較テストした。
クルマのキャラクターがスポーツカーなので、振り回した時のコントロール性を見てみた。するとアイスガード6は滑り出したらグリップの回復を待つ時間が長いことがわかった。逆に滑り出しは早いのですぐに横を向けることが簡単という一面もある。そしてアイスガード7は滑りからの回復が早いので、全体に速度域を高めることがわかった。
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また加速時のグリップ力では両方ともに良好に感じるので、縦方向の性能は7の方が高いレベルではあるものの、6も十分なグリップ力を持っていることがわかった。ただアイスガード6と7の違いは横方向のグリップ力の違いは明確にあり、進化がわかりやすかった。
舗装路でもシッカリ感あり
最後はレンタカーのカローラにアイスガード7を装着して、一般道の雪上ドライブを体験してきた。旭川市内から大雪山系旭岳を目指し、帰りは富良野方面のラベンダー畑の雪原を眺めながらのドライブを楽しんだ。
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この日は外気温-9度で、室内氷板路テスト環境と同じだ。だからグリップ力は高くノーズダイブするほどの制動力を発揮し、スコートしながらの加速も味わえた。旭岳へのワインディングでは日陰、日向と著しくコンディション変化があったものの、ズルッとする場面もまったくなく安心して走ることができたのだ。
そしてアイスガード7の美点として、舗装路でのシッカリ感もお伝えしたい。スタッドレスタイヤの弱点とも言える部分だが、ブロック剛性を上げたアイスガード7は舗装路面でもしっかりとしたステア応答が期待できるのだ。コーナリングでも車体が揺れてしまうようなこともなく、グリップ感を得ながらコーナリングができる。これは非降雪エリアのユーザーには大事な要素ではないだろうか。