横浜ゴムは2021年12月2日、AIを活用したタイヤの特性値予測システムを独自に開発し、タイヤ設計において実用を開始したと発表した。
これにより、膨大な仮想実験が可能となるため、開発のスピードアップやコスト削減、より高性能な商品開発に加え、経験の浅い技術者によるタイヤ設計が容易になることが期待できる。
今回のシステムは横浜ゴムが2020年10月に策定したAI利活用構想「HAICoLab(ハイコラボ)」に基づいて開発されている。
人がタイヤの設計パラメーターである構造や形状に関する仕様データ、コンパウンドなどの物性値に関する材料データ、評価条件を入力すると予測されるタイヤ特性値をAIが出力する。また、このシステムではタイヤ設計で起こりがちなAIの予測精度の低下を抑制できる。
内部構造が異なるタイヤでは、設計パラメーターの種類や数が異なるため、AIの学習に利用する全データを構造特徴ごとに合わせて細分化して使い分ける必要があるが、学習データの細分化によってAIの予測精度が低くなることが少なくない。そこで関連する他の領域で学習したAIの予測能力を移植(転移学習)することによって予測精度を向上させている。
横浜ゴムは、2020年12月にAIを活用したタイヤ用ゴムの配合物性値予測システムを実用化しており、今後は今回のタイヤ特性値予測システムと組み合わせることで、多岐にわたるタイヤ商品開発に利用して行くことになる。
「HAICoLab」は人間特有のひらめきや発想力とAIが得意とする膨大なデータ処理能力を活かした“人とAIとの協奏”によってデジタル革新を目指す構想だ。人が設定する仮説に沿ったデータの生成・収集とAIによる予測・分析・探索を繰り返すことで未踏領域での知見の発見を目指す。
これまでにも2017年にマテリアルズ・インフォマティクスによるゴム材料開発技術、インフォマティクス技術を活用したタイヤ設計技術を発表するなど、材料およびタイヤの設計開発プロセスでAIを活用した技術開発を進めてきており、現在は「HAICoLab」のもとで、プロセスに加え製品やサービスなどの革新を目指しAI利活用を推進していくとしている。