横浜ゴムが、メディア向けに最新タイヤに採用されている、技術のプレゼンテーションが行なった。最近のタイヤに欠かせない「シリカ」がテーマで、高性能タイヤから、省燃費タイヤ、スタッドレスタイヤに至るまで、トレッド・ゴムにシリカの混入がアピールされている。このシリカとは何か? なぜ必要なのかについて、横浜ゴムの先行開発本部・材料機能研究室の網野直也室長がプレゼンテーションを行なった。
タイヤゴムの三大特徴
ゴムとは、つまりゴムの物性とは、柔らかい、大きく変形する、変形しても元に戻るという3要素に集約され、高弾性材料と呼ばれ、その柔らかさは金属の1万倍だ。
ゴムは引っ張られると長く伸び、引張力がなくなると元に戻るのは、ゴムの分子が長いという特長があり、長いゴムの分子はそれぞれが網のように絡まり合い、しかも架橋点と呼ばれる物理的、化学的な結合点を持ち、無数の結合点がずれることがないため、復元性を持っているわけだ。
弾性を高める加硫
ゴムの分子に架橋と呼ぶ結合点を作るために、ゴムを成形した状態で「加硫」が行なわれる。加硫とは、硫黄成分をゴムに混ぜ、加熱して分子間の結合反応を生み出すことで、これにより多数の結合点が生まれ多重結合となり、ゴムの弾性限界が高まる。ちなみにこの手法はアメリカのチャールズ・グッドイヤーによって発明されている。
天然ゴムと合成ゴム
ゴムそのものは、ゴムの木の樹液から作られる天然ゴムと、石油から作られる合成ゴムの2種類あるが、天然ゴムは強度が高く、低発熱な特性を持つため、トラック・バス用のタイヤ、航空機用タイヤに主として使用され、乗用車用タイヤにはタイヤの骨格部の構造用ゴムとして使用されている。
乗用車用タイヤは、トレッド部、サイド部、タイヤ内面などに幅広く合成ゴムが使用される。合成ゴムは、分子構造を調整することで様々な性能を引き出すことができるため、多用されており、トレッド部には加工性がよくグリップ力が得られるSBR合成ゴムが使用されている。
そして、カーボンブラックと呼ばれるカーボン(炭素)の粉体が混入される。カーボンを混入して加硫するとゴムの分子と結合し、多数の大きな架橋点を作るので、ゴムの強度が飛躍的に向上するのだ。またカーボンがゴムと馴染みやすい性質があるためをゴムの加工性も向上させることができる。
このためタイヤや産業用ゴムはカーボンを使用しているため、黒色のゴムとなり、これがタイヤが黒い理由だ。これらが従来のタイヤの基礎知識だ。では、次に最近アピールされている「シリカ」とは何か?
シリカの役割
シリカとは二酸化ケイ素のことで、自然界では地中の石英から産出される。このシリカは、食品添加物や顔料、健康食品、歯磨き粉、乾燥剤、消臭剤、農業肥料、建築用調湿剤、エナメル、シリカセメント、陶磁器など、現代の人の生活に関わる製品に幅広く使用されている材料である。
このシリカがタイヤのゴム材料に混入されるようになったのは1980年代からで、最初にタイヤのゴムにシリカを使用したのはミシュランだ。その後は、レーシングタイヤなどにも使用されるようになっている。
シリカという材料は吸湿性を持つので、タイヤのゴムに混入させると吸水性能が与えられ、少し濡れた路面などでのグリップ力を高める役割を果たす。しかしその一方で、シリカはゴムに混入するとシリカ同士が結合しやすく、ゴムの分子内部に均一に混合することが難しく、さらにゴムの分子とシリカの分子との結合が難しい、という課題があった。