横浜ゴムから中・大型SUV/4×4モデル向けタイヤ「ジオランダーH/TG056」が発売され、その性能試乗会が行なわれた。
ジオランダーには車両サイズにより2種類のジオランダーがあり、小・中型クロスオーバー用、車種ではハリアー、Xトレイル、CR-Vなどが相当し2012年に発売されている「ジオランダーSUV」がある。一方、中・大型SUV/4×4用には2006年に発売しているジオランダーHT-Sがあり、今回その後継モデルとなる「ジオランダーH/TG056」が発売された。車種としてはFJクルーザーや、ランドクルーザー系、メルセデス・ベンツGクラス、チェロキー、パジェロ、デリカ、ハイエース・グランビア、レジアスなどが相当する。
これらの車種のユーザー使用環境を調査し、求められている性能を分析した結果、スキーやアウトドア、キャンプなどで使うことがあるものの、実際におるオフロードを走行する機会は少なく、長距離や長時間移動が多いいことがわった。そして求められる性能には耐摩耗性、乗り心地、静粛性能などが中心で、さらに燃費、ハンドリングなどの操縦安定性などが挙げられる。
したがって、新タイプのジオランダーH/TG056の開発コンセプトは「中・大型SUV/4×4ユーザーのためのハイウエイテレーン」というコンセプトになる。もちろん、雨に強いヨコハマタイヤらしく、濡れた路面でのブレーキ性能を確保しつつM+S規格に対応する性能を持っている。
耐摩耗性を上げ、乗り心地を向上させ快適性能の底上げ。そして静粛性、ノイズ性能、転がり抵抗、通過騒音などの環境性能、燃費にも配慮し、そし車重が重く、重心高が高いSUVにおいて安全性を確保したハンドリング性能の向上というのが特徴となる。
改めて採用された技術は下記の通りだ。
1:大摩耗性とグリップ性能の両立に対して、専用のマルチコンビネーションコンパウンドを搭載。
2:静粛性と基本性能レベルアップでは新設計パターンの採用。
3:ハンドリング性能のレベルアップでは、高速走行での快適性と安定感を高めた専用構造プロファイルの採用
1のマルチコンビネーションコンパウンドとは、ブルーアース系とは違うゴム配合で、耐久性を重視した配合としている。これにシリカを加えオレンジオイル配合により、しなやかなコンパウンドを開発し、路面との密着性を高め、摩耗とグリップの両立をしている。つまり、摩耗に強いポリマーの採用とカーボン、シリカの径を小さくし、結びつきを増やすことで補強性を強化できたということだ。
新設計のトレッドパターンでは5つの新採用技術がある。まず5ピッチバリエーションがある。これは従来品より分散性をよくすることで静粛性を向上することができる。2つ目にジグザグメイン4グルーブの採用がある。排水性の確保をしつつ、スノーでのエッジグリップを向上させている。
3つ目のマルチプル・ラググルーブもウエットでの排水性能、スノーでのエッジグリップを向上させる目的がある。4つ目はアダプティブ・ショルダーブロックがある。こちらはショルダー部メインのグルーブに非貫通とすることで、静粛性、トレッド剛性をともに向上でき操縦安定性を高めている。最後に5つ目として3Dサイプがある。断面形状でみるとジグザグ形状になっていて、これによりブロックとブロックがお互いに支え合いトレッド剛性を上げている。
新採用技術の3つ目として専用構造プロファイルがあるが、ハンドリング性能のレベルアップにつながるものだ。構造でナイロンフルベルトカバーにより、トレッドの変形を抑制し操縦安定性と静粛性を向上させている。トレッドは専用プロファイルの採用で、接地面をコントロールすることで耐摩耗性、操縦安定性を向上させている。
性能比較一覧でわかるように従来品と比較し、耐摩耗性は21%向上、パターンノイズは13%低減、ロードノイズは7%減、そしてある程度摩耗した状態でのパターンノイズは13%減といったところが目につく。またレーンチェンジ時のふらつきでは、ハンドル舵角で4%小さく、ヨーレートで13%小さくすることができている。
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◆インプレッション
さて、新技術を満載したジオランダーH/TG056の試乗では、小田原、箱根周辺道路の自動車専用道やワインディング、市街地の走行をしてきた。絶対評価としてメルセデス・ベンツのGクラスを試乗。そして比較試乗ではランドクルーザー・プラドに装着した先代モデルのジオランダーHT-Sと今回のジオランダーH/TG056を試すことができた。
絶対性能の評価では、西湘バイパスを走行した際、ロードノイズが少なく4×4モデルでありながら乗用車の室内と同等の静かさだと感じる。レーンチェンジの際、車両のふらつきについては、正直判断しにくく、Gクラスらしい操縦安定性を持って走行することができる、と言うにとどまる。
比較試乗では、その違いが明確に感じるのか?と言われると、これもまた難しい。もともと先代のジオランダーHT-Sも高速道路での快適性を高めているタイヤで、操縦安定性や乗り心地を重視したモデルだけに、新タイプと比較してもハッキリと違いが分かるということが言いにくい。
ただ、路面の荒れたロードノイズにおいては、音の音質が異なった。これを静粛性の向上と言うのかはこれも正直分からない。不快なノイズではないことは確かだが…このあたりの違いについて、横浜ゴムの開発エンジニアに聞いた印象では、今回の新タイヤのメインはやはり耐摩耗性の向上というのが中心であり、そのほかの性能については現状からの伸びシロと考えるのが正解だろう。
つまり試験機や専用テストコースでの性能比較をすると、前述のような性能向上が確認できるものの、一般道路においては他の要素、例えばまわりの騒音や風切り音、路面コンディションのばらつきなどで単純比較が難しいということなのだろう。
ユーザーの我々にとってもっとも嬉しいのは、これまでのジオランダーHT-Sを上回る性能を担保しつつ、耐摩耗性が向上したというポイントで、高速道路走行の多いユーザーにはタイヤの減りはダメージが大きい。それが2割以上タイヤの摩耗が防げることは歓迎できる性能向上と言える、という結論だった。