マニアック評価vol657
ハイパフォーマンス系のクロスオーバーSUVには、ハンドリングなど運動性能を重視するタイヤを純正装着していることが多い。しかし、国内のユーザーニーズでは静粛性や快適性を重視する傾向があるという。高速道路など走行環境の違いが産むニーズの違いだろうが、そうしたニーズにマッチするタイヤとして「ジオランダーX-CV」が誕生した。2019年4月1日より発売予定で、発売サイズは255/55R18 109W〜275/40R22 108Wの17サイズとなる。
ターゲットとなる車両はハイパフォーマンスクロスオーバーを対象としており、主に輸入車がメインターゲットだ。全17サイズ、18〜22インチまでをラインアップし、具体的な車種でいくとBMWであればX1〜X6、アウディQ2〜Q7、メルセデス・ベンツはGLC、GLE、GLS、ゲレンデなどだ。他にもマカン、カイエン、ボルボXC40〜XC90、グランドチェロキーラングラー、コンパス、レネゲード、レンジローバー、スポーツ、イヴォーク、ヴェラールあたりまでをカバーしている。使い方の想定としては街乗りもするが、高速走行が多く、長距離移動をするユーザーたちだ。
タイヤのキャラクターはオールシーズンのM+Sではあるが、快適性を重視したタイヤというのが特徴になる。開発コンセプトも快適性、安全性を両立したパフォーマンスコンフォートタイヤと位置付けている。主な特徴はウエット制動性能が高く、コンフォート性能の高いタイヤとなる。では、さっそく試乗したフィールをお伝えしよう。
試乗レポート
ジオランダーX-CVを装着した試乗車はグランドチェロキーとメルセデス・ベンツGLE。装着サイズはグランドチェロキーが265/50R20、GLEが265/45R20で共に20インチと大径だ。試乗場所は箱根のワインディングロードと自動車専用道路で、高速走行とハンドリングを試せる試乗を行なった。
最初に感じるのはロードノイズの小ささだ。ジオランダーX-CVはM+Sであるが、サマータイヤと遜色ない静粛性がある。M+Sという性格のタイヤであれば、一般的にはパターンノイズが目立つものだが、高速走行でも静か。また、ハーシュネスもまろやかにいなす感触があり、乗り心地もいい。高級車の持ち味を損なうどころか底上げしている印象だ。
残念ながら製品特徴であるウエット性能は試すことはできなかったが、4本のストレートグルーブのトレッドデザインを見る限り、排水性は良さそうで、見た目からの安心感は伝わる。
ハンドリングでも不満なく、旋回Gがかかる場面でもタイヤのねじれや共鳴音を発することがない。車高の高いクロスオーバーSUV系であるだけに、タイヤの剛性は重要で、こうした場面で剛性感を得、しっかりとした操舵フィールがあるのは安心感につながる。
採用技術
こうしたキャラクターはどんな技術が使われているのか次を見てみよう。
トレッドコンパウンドでは、ドライ、ウエット、スノーのあらゆる路面でグリップするゴムを目指して開発され、特にウエット、スノーを重視した新ブレンドポリマーを採用している。マイクロシリカブレンドポリマーと呼ばれるコンパウンドは細かく分散するマイクロシリカを増量し、ウエット性能を向上させているという。
トレッドパターンでは、ジオランダーシリーズ初の非対称パターンを採用し、剛性、パターンノイズを低減している。トレッドのサイプは2D、3Dのコンビネーションサイプで高いドライ性能を追求。4本のワイドストレートグルーブで高い排水性を実現している。そして5ピッチでバリエーション変化するトレッドデザインとすることで、パターンノイズを低減している。
構造面ではトレッド面を2層のナイロンフルカバーとすることでロードノイズを低減し、サイド部のカーカスも2層とし、剛性を確保している。
こうした技術の採用から誕生したジオランダーX-CVは、ハイパフォーマンスクロスオーバーSUVで、コンフォート性を求めるユーザーにマッチするという狙い通りのタイヤだという印象だった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>