横浜ゴム 新たなゴム材料設計を実現する多目的設計探査シミュレーション技術を開発

多目的設計探査シミュレーション技術の全体像と仮想的なゴム材料モデル例
多目的設計探査シミュレーション技術の全体像と仮想的なゴム材料モデル例

2015年12月2日、横浜ゴムはゴム材料の開発に使用する多目的設計探査シミュレーション技術を開発したと発表した。

この技術はゴム材料設計において、従来にない革新的な発想を得るために開発したもので、例えば、低燃費性能と安全性能、超軽量と高剛性など背反性能を高次元で両立した高性能タイヤを新しいアプローチで開発することを目指すものだ。

タイヤの性能はゴム材料となるポリマー(ゴム)とフィラー(カーボンブラックやシリカなどの微粒子)の複雑な微細構造(分散状態や分量など)により大きく影響される。今回開発した技術は、実際のゴム材料を使う従来のシミュレーションと違い、仮想的な微細構造をゴム材料のモデル化を実現し、微細構造を自在にコントロールできるシミュレーションを可能としたのだ。

微細構造のパラメータ(変数)を変化させることで、さまざまな微細構造を持つ約10億要素の超大規模なシミュレーションモデルを得ることができる。また、東京工業大学のスーパーコンピューター「TSUBAME2.5」による性能評価において、従来の有限要素法では計算できなかった約10億要素からなる、超大規模計算をわずか75分で終了できることを確認している。

技術確立にあたっては微細構造を自在にコントロールできるモデリング技術とゴム材料の力学特性を計算する大規模な粘弾性シミュレーション技術が課題となった。課題解決のため、フランスのMINES ParisTech/Centre de Morphologie Mathematique(CMM)のドミニク・ジュラン教授らと共同研究を行ない、ランダム・モルフォロジカル・モデルというモデリング技術と大規模粘弾性シミュレーションのための新しい計算手法を開発。これにより、横浜ゴム独自のゴム材料の多目的設計探査シミュレーション技術が完成したわけだ。

多目的設計探査は、設計に役立つ知見を導き出す設計手法で、生物の進化過程に着目し、より最適な答えを導き出す多目的遺伝的アルゴリズムを活用したもの。横浜ゴムはすでにタイヤの構造設計で多目的設計探査を活用し、国内タイヤラベリング制度で最高グレードの転がり抵抗性能:AAA、ウェットグリップ性能:aを獲得したフラッグシップ低燃費タイヤ「BluEarth-1 EF20」を開発するなどの実績を上げている。

微細構造モデリングモジュールで作成したゴム材料モデル例
微細構造モデリングモジュールで作成したゴム材料モデル例

ゴム材料の多目的設計探査シミュレーション技術は、①ゴム材料の微細構造をコントロールする微細構造モデリング、②仮想ゴム材料の力学特性を算出する粘弾性シミュレーション、③力学特性を改善するための進化計算、④進化計算で得られるビッグデータから材料開発に役立つ情報を抽出するデータ分析(データマイニング)の4つのモジュールで構成される。そして微細構造のパラメータを変化させることで、さまざまな微細構造を有する仮想ゴム材料モデルを作成できるというものだ。

 

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