2014年3月20日、横浜ゴムと藤井孝藏教授(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所)らの研究チームは、世界で初めて実スケールに近いレベルで路面上を回転するタイヤ周りの空気の渦流れ構造(乱流)と、そこから発生する音響波(騒音)を捉える流体音響シミュレーションに成功したと発表した。
これまでは不可能だった走行するタイヤ周りに生じる空気の渦構造や音響波を精密に捉えることができるため、通過騒音の低減や空力性能の向上に貢献する技術革新が期待できる。
従来の計算手法ではタイヤが路面に接地する付近での計算精度に限界があったが、今回、宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所が宇宙開発で培った高解像度の計算手法により計算精度を高めた。さらにスーパーコンピューターを活用し、直接的に詳細なタイヤモデルをシミュレーションすることで、ほぼ実スケールで回転するタイヤ周りの空気の流れ場と音響場を同時に計算することに成功した。
この結果、タイヤ周りの空気の乱流が生み出す騒音に加え、タイヤの回転によりタイヤ周りの空気がタイヤ前方で圧縮されることで発生する騒音があることを世界で初めて示した。
横浜ゴムはシミュレーションを活用した次世代環境対応技術の開発を積極的に進めており、2010年には実走行を想定した条件下でタイヤ周辺の空気の流れをシミュレーションできる空力シミュレーション技術を確立し、2012年12月にホイールハウス内の空気の流れをコントロールして車全体の空気抵抗低減を図る「フィンタイヤ」を発表している。
今後は、この高精度な流体音響シミュレーションを活用し、さらなる空力性能の向上と静粛性の向上に繋がると期待される。