【横浜ゴム】東京オートサロンでEVコンセプトカーの「AERO-Y」を初披露

EVコンセプトカー「AERO-Y」。空気抵抗低減や軽量化素材がテーマのため、この開発コードネームが付けられた

横浜ゴムでは自社技術の研究・開発を目的としたEV(電気自動車)のコンセプトカー「AERO-Y(エアロ・ワイ)」を開発。2013年1月11日〜13日に幕張メッセで開催された「東京オートサロン2013 with NAPAC」の会場で初披露した。ボディデザインについては、レーシングカーデザイナーの由良拓也氏が代表を務めるムーンクラフトも協力。現状はコンセプトカーとされているが、同社が2009年から参戦を継続している「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」との関連も注目されるところだ。

「AERO-Y」の開発にあたっては、EVによるモータリゼーションの成長を背景に、環境に配慮した技術をあらゆる面で採用しつつも、直感的に「走る喜び」を感じてもらうことをコンセプトにしたとのこと。具体的には「空気抵抗低減」をテーマとし、空気力学(エアロダイナミクス)を活用したタイヤ設計やボディ設計をはじめ、航空部品や接着剤の開発で培ったさまざまな部門の最新技術を結集している。以下は少し詳細に、技術的な説明を加えてみたい。

まずは独自のタイヤエアロダイナミクス技術により、車両装着時に外側となるタイヤサイドにディンプルを、内側のタイヤサイドにフィン状突起を採用した。ディンプルはタイヤの空気抵抗低減に寄与し、フィンはタイヤハウス前方の圧力を高めて、車両を前方に押し出す空気の流れを発生させる。これにより車両全体の空気抵抗を低減し、燃費向上にも貢献している。

次に高い運動性能と優れた省燃費性、静粛性を実現するために、オレンジオイルをはじめとした先進のコンパウンド配合技術「ナノブレンドゴム」と、省燃費性能と静粛性を高めたパターンデザインを採用。ハイレベルなドライ・ウェット性能を発揮させつつ、EVに相応しい優れた省燃費性能と静粛性を実現したとしている。

航空関連技術からの応用もある。旅客機の構造材やラバトリーモジュール(化粧室ユニット)開発で培った技術を生かし、日本で初めて世界最大の航空機メーカーに認証されたCFRP(炭素繊維強化プラスチック)用プリプレグを専用チューニングして、ボディ全般に採用。高強度、高耐久性でありながら、超軽量を実現したCFRPはEVのバッテリー消費量改善にも貢献している。

プリプレグとは補強繊維に樹脂を含浸させたシート状の材料で、CFRP用プリプレグは補強繊維に炭素繊維を使用。これを重ねて成型し、オートクレーブ(加熱器)で熱硬化することでCFRPになる。

最後に「ハマタイト」と呼ばれる、同社の接着剤開発で培われた技術も導入されている。近未来のEVは内燃機関の熱問題解消による樹脂系素材の採用拡大や、車両軽量化のためにアルミや樹脂系素材を使用した車体フレーム構造の採用が予想される。こうした金属と樹脂系素材など、異種複合材料の接合において溶接に代わる接着剤は必須であり、自動車から建設まで幅広い用途で優れた実績を誇るハマタイト技術を採用したとのことだ。

なお横浜ゴムでは、EVに関する技術開発の促進を継続的に図るとともに、長年にわたってさまざまなEVレースや関連イベントをサポートしてきた。2009年からは米国で開催されるヒルクライムレース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」に、同社製タイヤを装着したEVレーシングカーで挑戦を開始。2010年からは3年連続で、EVクラスの歴代最速記録を更新している。今回の「AERO-Y」が次期参戦モデルとなるかどうかは不明だが、技術的には深い関連があることは間違いないと思われる。

横浜ゴム公式サイト

COTY
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