2012年12月19日、横浜ゴムは走行時のクルマの空気抵抗を低減するタイヤ設計技術を開発したと発表した。これはタイヤのころがり抵抗低減に次ぐ新しい環境対応技術の取り組みとして、走行中のタイヤ周辺の空気の流れを改善することで、燃費性能向上に貢献することを目的とした技術だ。
走行中のクルマのホイールハウス内には空気の乱流を発生しており、この乱流の一部が車両側面に流れ出し、クルマの空気抵抗を悪化させる原因となっている。横浜ゴムはこの問題解決に取り組み、2010年には実走行を想定した条件下(ホイールハウス内に装着しかつ回転している状態)でタイヤ周辺の空気の流れをシミュレーションできる空力シミュレーション技術を確立。その後シミュレーションの範囲を車両全体へ拡張し、風洞試験との両面から研究を進めてきた。
このシミュレーション技術と風洞試験を活用してクルマの空気抵抗を低減するタイヤ設計技術を確立し、ひとつの具体的な設計案として装着時に内側となるタイヤ側面にフィン状突起を配置したタイヤ(フィンタイヤ)を開発した。フィンタイヤはフィンのないノーマルタイヤに比べ、タイヤ自身の空気抵抗は悪化するものの、クルマ全体の空気抵抗は大幅に低減した。また、そのメカニズムとして、フィンがタイヤの回転方向に誘起する渦状の空気の流れによってホイールハウス内の圧力が変化し、車体に前向きの力が生じることで、クルマの空気抵抗を低減することが分かった。
今後、実車での評価に加え、タイヤ形状と空気の流れの関係をさらに研究し、タイヤだけの性能追求ではなく、クルマ全体の空気抵抗を低減するタイヤ作りを推進するという。なお、この技術は国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都)で12月19〜20日に開催されている「第26回数値流体力学シンポジウム」で発表された。また、2013年年2月5日からドイツ・ケルンで開催される「Tire Technology Expo 2013」でも発表する予定だ。