グローバル・サプライヤーのヴァレオは2024年5月16日、パシフィコ横浜・展示ホールで開催される自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」に出展し、カーボンニュートラルの実現に向けた電動化と、より安全でスマートなモビリティのためのADAS、コネクテッド技術の日本初展示5点を含む最新のイノベーションを展示すると発表した。
・電動化技術
カーボンニュートラルの実現に向け、モビリティの電動化を加速させることは急務だが、電気自動車(EV)の航続距離と快適性の両立が課題となっており、電動パワートレイン、バッテリーなどのハードウェアはもちろん、ソフトウェアやインフラの整備など、統合的なアプローチが重要となる。
ヴァレオは48Vと800Vのe-アクスル、バッテリー・システム・アッセンブリー、ワイヤレス給電システム、スマートヒートポンプなどEVとインフラ向けのハードウェアに加え、サーマルマネージメントを最適化するソフトウェアを提案。
48Vから高電圧まであらゆるモビリティに電動化ソリューションを提供し、 2輪車向けの48Vスモールモビリティ・モータージェネレータ(SMMG) は最大出力8kWの48V空冷式モーターで、2輪車のフレームへ容易に搭載可能。都市向けの小型モビリティなどニューモビリティに適している。
800Vの6-in-1電動アクスル は、電動モーター、インバーター、減速機、電力配分装置、車載充電器、DC/DCコンバータを1つのユニットに搭載した次世代統合パワートレインでありヴァレオは、すべてのサブシステムを自社で設計・製造している。
また、合弁会社のヴァレオ・カペックは、新たにバッテリーシステムアッセンブリーの提供を開始した。この定格電力1.49kW(5.5Ah)の270Vバッテリーシステムは、車両下部に外付けで組付けることができ、ケースの材料と設計仕様を最適化して、外部からの耐衝撃性を向上。また補助バッテリーを並列構造とすることにより、容量の増強を図っている。さらに、センシングブロック数の最適化を行なうことにより、重量を54.4kgに抑え、小型で高容量なバッテリーシステムの構成を実現している。
・ワイヤレス充電システム
今回、日本での初展示となる ヴァレオIneez(イニーズ)エア・チャージング・システムは、車両を誘導充電する効率的で軽量なワイヤレス給電システム。約3kHzという超低動作周波数を使用することで、より軽量で、よりシンプルで、より安全なシステムとなっている。
簡素化されたハードウェアにより、送電網からバッテリーまで最高で93%の高効率を維持しつつ、より手頃な価格を実現。このソリューションは、すべてのウォールボックス、あらゆる国のグリッド、全自動車とのグローバルな互換性を確保するように設計されており、対象となる電力出力 (7kW~22kW) に対してVehicle-to-Grid (V2G) 機能が提供可能だ。
・スマート・ヒートポンプ
EVの航続距離と快適性の両立の課題は、キャビンの冷暖房、窓の曇り取りと霜取りなどで全て電力を消費することだ。たとえば、冬季に外気温がマイナス7度の時に電気暖房を使用するとEVの航続距離は40%以上減少する。
この対策として自動車用の暖房にはヒートポンプが普及してきたが、各コンポーネントを接続する冷媒配管や、温水配管、接続部品などが多いのが問題だ。ヴァレオ・スマー・ヒートポンプは、モジュールにすることで接続する冷媒配管を削減し、温水系はバルブ構造を集中することでパイプの本数を削減。パッケージングを小型化したことにより、レイアウトの自由度が高まり、空調制御ユニットの近くに配置して冷媒量を削減することができる。
・ヴァレオPredict4Rangeソフトウェア
バッテリーとモーターの温度を適切に管理することは、車室内の快適さを保ちながら、車両の航続距離を延ばし、バッテリーの寿命を維持するために不可欠だ。
日本では初披露となる ヴァレオPredict4Rangeソフトウェアは、EVの最も効果的なサーマルマネジメントを予測して実行し、走行距離を延ばすことを可能にし、急速充電の回数や時間を減らすとともに、バッテリーの長寿命化に貢献する。
このソフトウェアは、外気温、風速、充電ステーションの地図、道路の登坂状況、EVのパラメータなどのリアルタイムデータを統合。また、毎日の車両の使用状況を考慮し、ルート、運転行動などの追加パラメータを使用して、リアルタイムの組み込み1Dシミュレーションモデルで熱管理戦略を正確に計算。エネルギー消費を最適化することができる。これは、2023年9月に発表したオンデマンドでソフトウェアのソリューションとサービスを提供するヴァレオanSWer製のソフトウエアだ。
・ADAS
ADASの技術開発を加速し、AIベースのソフトウェア、CPU、ゾーンコントローラーなどでマーケットで屈指の充実したセンサー・ポートフォリオ(超音波センサー、カメラ、レーダー、LiDAR)を提供しているが、今回はサーマルカメラを日本で初披露する。
サーマルカメラの世界的リーダーであるテレダイン・フリアーとの技術提携を発表し、世界最小かつ最も高感度な自動車グレードのナイトビジョンカメラを発表。このサーマルカメラは、あらゆる状況で歩行者などの交通弱者や動物、車両、道路端などの検出能力を飛躍的に向上させる。
また、サーマルカメラの遠赤外線で感知したイメージと、可視光のカメラで捉えた画像を融合することで、可視化性能が向上し、LiDARやレーダーなどの他のセンサーと組み合わせることで、物体の検出能力を強化することができる。日本での初披露となる今回は、暗室の中で実演を行ない、サーマルカメラの暗視性能を体感することができる。
・LiDAR
ヴァレオの第3世代レーザースキャナー SCALA 3 は、レベル3以上の自動運転を実現するためにキーとなるセンサーだ。150m先の黒いアスファルト上に落ちているタイヤなどの物体は、ドライバーの眼やカメラ、レーダーで検出することはほぼ不可能だが、SCALA 3のレーザービームは特定が可能だ。
SCALA 3は車両周辺の3D画像を生成し、毎秒1200万ピクセル以上という高解像度で比類のない点群データを提供。反射率の低い物体の場合でも200メートル、反射率の高い物体であれば300メートルという検出範囲を誇る。
最高時速130kmの高速道路においても、SCALA 3を搭載した車両はレベル2以上の自動運転が可能になる。このSCALA 3は、ステランティスのレベル3自動運転車と、アジアの大手メーカーとアメリカの大手ロボタクシー会社での採用が決定している。
・21インチ・ワイド曲面ディスプレイ
新たなインテリア・エクスペリエンスを生み出す新製品として、21インチ・ワイド曲面ディスプレイを展示する。4Kのタッチスクリーン、デジタルクラスターと中央情報機能を単一の洗練されたユニットに統合し、鮮明なコントラストと低反射、広い視野角により、没入型の視覚体験を実現している。