パナソニック テスラの円筒型バッテリーの変遷とパナソニック4680型の量産開始目前情報

パナソニック エナジーは2024年9月9日、電気自動車(EV)向け円筒形リチウムイオン電池の最新型である「4680」セルの量産準備が完了したと発表した。

「4680」セルのマザー工場となる和歌山工場(和歌山県紀の川市)をリニューアル施工し、今後の最終評価を経て量産を開始することになる。

4680は直径46mm×長さ80mmの円筒形のリチウムイオン電池だ。円筒形のリチウムイオン電池はもともと汎用タイプで、多くの分野での用途が想定されていた。円筒形の初期モデルは単3乾電池よりわずかに大きい「1865」(直径18mm×65mm)でパソコンでの使用が想定されていたが、より出力を高めた「1865」をテスラがモデルSに採用した。モデルS1台の電池セル搭載本数は5000本以上だ。

テスラが採用した「1865」は汎用電池より出力を高めた電気自動車用であるが、一般的にはパソコン用を流用したと考えられ大きな衝撃を与えた。そしてパナソニックはテスラと提携してアメリカのギガファクトリーで電池生産を加速させる。

その後、円筒形電池は「1865」からより大型の「2170」(直径21mm×長さ70mm)へ移行。テスラによれば「1865」から「2170」にアップグレードすることで1本あたりのエネルギー量は50%アップするとしている。

テスラが自社生産する「4680」電池

そしてテスラはその先を見据え、リチウムイオン電池のバッテリーパックのコストを56%引き下げることを目標とし、そのために独自に、より大容量の「4680」電池を開発すると2021年に発表した。

つまり自社開発、自社生産を目指し、「4680」電池の負極はシリコン/黒鉛材、正極はニッケル合金を使用する新構造としている。「4680」電池は「2170」電池に比べエネルギー密度で5倍、出力密度で6倍の性能となり、充電1回あたりの航続距離が16%向上し、製造コストも10~20%削減できるとしている。

電池セルのコスト低減に加え、車両に搭載するバッテリーパックの小型化、冷却など温度管理システムの簡素化などトータルで56%のコストダウンを狙っているのだ。

ただ、このテスラ独自の「4680」電池はテキサス工場での量産化に手間取り、2023年11月に出荷を開始したサイバートラックにようやく搭載している。しかしながら、大量生産技術は現時点でもまた100%のレベルには至っていない。それだけ「4680」電池の量産技術はハードルが高いのだ。

パナソニックも、次世代電気自動車向けリチウムイオン電池として「4680」を開発してきた。しかし「4680」は1セルあたりの容量が大きくなるため製造工程では、より高度な技術や工法が求められ、そうした課題をブレイクスルーすることで、ようやく高性能な「4680」セルの量産技術を確立したことになる。

和歌山工場は、従来はリチウムイオン電池の部品製造を行なっていたが、今回のリニューアルにより、「4680」セル生産のマザー工場として、新製品および新工法の実証拠点としての役割も担い、国内外の工場へ実証結果を展開する。

また歌山工場は、環境と調和したモノづくりを目指して、太陽光発電や陸上風力発電など再生可能エネルギーも最大限活用したCO2排出実質ゼロ工場として生産を開始する。

パナソニックの「4680」電池は、今後開発されるスバル、マツダの電気自動車に搭載されることが決定している。

なお「4680」電池は、LG化学、サムスンも量産ラインを構築中であり、今後はグローバルでの覇権をかけて激しい競争が展開されると予想される。

パナソニック エナジー 公式サイト

COTY
ページのトップに戻る