パナソニック 長距離、高精度の距離測定ができる「TOF長距離画像センサー」を開発

パナソニック・インダストリアルソリューションズ社は2020年2月18日、遠方250m先にある物体の高精度な三次元情報を取得できるアバランシェ・フォトダイオード(APD)画素を用いたTOF(Time-of-Flight)方式の距離画像センサーを開発したと発表した。

このTOF画像センサーは、高度運転支援システムや自動運転システムに必須の車載用センサーだけでなく、広域監視など、さまざまな分野へ展開できる可能性を持っている。

自動運転向けのセンサーになる可能性

同社は2018年6月にこの画像センサーの開発を発表しているが、そのAPD画素を用いたTOF方式距離画像センサーの技術をもとに、電子増倍部と電子蓄積部とを縦積構成にすることでAPD画素の小面積化をはかり、世界最高レベルの100万画素の集積化を実現した。

また、これまで開発してきた3次元距離画像の長距離計測と高解像度化に加え、一般のTOFセンサーやLiDARでは困難であった高い測距精度化との両立にも成功。これにより遠方での人・物体の重なりを精度よく検出することが可能となっている。

このため、自動運転には必須といわれるTOFセンサーの代表格、LiDARよりローコストで軽量・コンパクトな画像センサーとなる可能性が高い。

用語解説

ここで、専門用語が多いので、用語について簡単に紹介しておこう。

TOFセンサー

TOF((Time-of-Flight)センサーとは、超音波センサーやレーザー光を使用するLiDAR(ライダー)などが代表的なセンサーだ。「Time-Of-Flight」とは、光や音波の飛行時間を意味する。

LiDARでの距離計測は光源と光検出器で構成され、光源から発光したレーザー光は被写体にあたり、その反射光が検出器に到達。その間の光は光速で移動している。空気中の光速は常に一定であることから、光の飛行時間を計測すれば物までの距離を計算することができる。

この方式は、時間を直接計測することから、直接TOF方式と呼ばれ、また間接TOF方式も存在し、光パルスをセンサーのシャッターと同じ位相で照射し、光子の飛行時間の計算は戻ってきた光パルスの同期ずれ量を使用することにより、パルスの出射点と対象物との間の距離を演算して計測する方法だ。これは従来の近距離用のTOFカメラで採用されている演算方式となる。

アバランシェ・フォトダイオード(APD)

通常のフォトダイオードは、1光子から1電子を生成するがアバランシェ・フォトダイオード(APD)は、1光子から生成した1電子に強い電界を印加することで、物質中の他の電子と強く衝突し、1個の電子が生成される。

この衝突は、あたかも雪崩(アバランシェ)のように初期の衝突をトリガーとして次々に大きくなりながら繰り返され、最終的には電子が1万倍以上に倍増する。SPAD(Single Photon Avalanche Diode)は、APDの一種。

光子(フォトン)

これ以下には分解できない、光のエネルギーの最小単位。一般的なカメラで使用されるイメージセンサでは1光子程度のエネルギーを持つノイズがあるため、1光子の光信号の検出は難しいとされる。

高感度、高精度の画像センサー

一般的な光学系のTOFセンサーは微弱な光信号が検知できないため、近距離のみの検知に限定。一方高性能なTOFセンサーの代表であるLiDARは、遠方まで検知できる反面、解像度が低いため小物体の特定が難しい。

また、2018年6月にパナソニック・インダストリアルソリューションズ社が発表したAPD搭載のTOF方式長距離画像センサ(APD-TOFセンサ)は、近距離から遠方までの小物体を検知できたが、測距精度が最短でも1.5m間隔で、遠方での人・モノの重なりを検出するには課題があった。

今回開発されたSPADは、より高感度で、APDの一種であるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)と呼ばれる信号増倍センサーは、画素面積が大きく微細化が困難という課題があったものの、新開発の縦積型APD(VAPD)は、光電変換部と電子増倍部、信号蓄積部を縦に積層することで小面積化をはかり、6ミクロン・ピッチの微細画素の形成に成功。これにより、信号増幅1万倍の高感度と100万画素の高解像度を両立した画像センサーとして実現した。

またTOFの方式としては、積算フォトン分割間接TOF技術を採用。光子(フォトン) の到達回数を積算信号に変換し、近距離用に使われている間接TOF演算を適用することで、10mから100mの長距離において10cm間隔の距離精度を持つ3次元距離画像化を実現している。

このように、今回開発された「TOF長距離画像センサー」は、3次元距離画像の長距離計測能力と高解像度化に加え、一般的なTOFセンサーやLiDARでは困難であった距離測定の高精度化を両立させており、新世代の車載センサーとして期待される。

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