2017年3月21日、岐阜大学・次世代エネルギー研究センター長の神原信志教授が、澤藤電機との共同研究により、アンモニアを原料とする低コスト・低環境負荷・高効率の水素製造装置の試作機を開発したと発表した。
神原教授と澤藤電機は2012年に、世界初となるプラズマによって常温・常圧・無触媒でアンモニアから高純度水素を製造する「プラズマメンブレンリアクター」を開発している。そして今回、「プラズマメンブレンリアクター」と「プラズマ発生用高電圧電源」を組合せた水素製造装置の試作機を開発した。この装置で製造された水素は純度99.999%を達成。さらに、この装置から得られた水素を燃料電池に用いての発電を確認した。
次世代エネルギーと位置付けられている水素は、体積あたりの重量が小さいため(0.09 g/L)、水素の貯留・運搬には、700気圧程度に高圧圧縮するか、-252.9度Cに冷却して液体にする必要がある。そのため圧縮、液化のためには大きなエネルギーを消費する。
そこで、水素をなるべく常圧・常温に近い条件で、低環境負荷で貯留・運搬する水素キャリア技術が求められ、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究課題の1つに挙げられているのだ。
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従来、アンモニアから水素を生成するのに用いられてきた触媒反応法は、400度C~800度Cの高温にする必要があり、高価なルテニウムなどの貴金属を触媒とするため、エネルギー効率が低く、環境負荷も高く、高コストとなることが問題だった。また、未反応のアンモニアが残留し、これが燃料電池を劣化させるため、燃料電池に用いるには問題があった。
神原教授らは大気圧プラズマを利用して、常温・無触媒でアンモニアから水素を製造する画期的な方法を研究してきたが、2012年に、常温で大気圧プラズマを用いてアンモニアを窒素と水素に分解するとともに、残留アンモニアを混入させず水素だけを取り出す装置(プラズマメンブレンリアクター)を開発。
この装置は、水素分離膜そのものをプラズマ発生用の電極としたことで、誘電体バリア放電を発生させ、高純度水素を生成できることがわかった。
装置の外筒は外径42mm、厚さ2mm、長さ400mmの石英ガラスを円筒状にし、内筒には穴の開いた薄い鉄板に厚さ20マイクロメートルのパラジウム合金製の水素分離膜を溶接し、プラズマ発生用の電極としている。
今回発表された技術を使用すれば、水素をアンモニアとして貯蔵し、必要な時に必要な場所で水素を供給できる水素製造装置が配置でき、産業用・家庭用燃料電池発電機、燃料電池自動車への普及が期待される。