グローバル規模のサプライヤー、マーレは2024年8月13日、ドイツ・ハノーバーで9月17日から22日まで開催される「IAA Transportation 2024」で、燃料電池搭載商用車の静粛性を大幅に向上させる、高性能ファンを世界初公開すると発表した。
このファンは、要求の厳しい燃料電池車や電気自動車のために開発されたもので、AIを活用してファン・ブレードを最適化することを目指し、マーレのエンジニアは、フクロウの翼からヒントを得ているのがユニークだ。
世界で最も静かな鳥の1つであるフクロウの羽には、風の騒音を低減する効果があるというのだ。その鳥の翼の特長を生かしたこのバイオニック・ファンブレードは、トラックのファン騒音を最大4dB低減することができる。
この大幅な低減は、電動車のもう一つの課題である大きなファンノイズを解決することにつながる。ファンノイズは、全負荷時だけでなく、住宅地やサービスステーションでの休憩時間など、夜間に車両を充電する際にも気になることがある。また、このファンは従来の設計よりも性能が10%向上し、質量も10%軽量化されているため、効率が大幅に向上しているのだ。そして、マーレはこの新しいバイオニックファンの乗用車への搭載も可能にしている。
開発を担当したウリ・クリスチャン・ブレッシング博士
「私たちは自然から学んでいます。生物の構造は、ファンを最適設計する際に大いに役立ちました。AIの助けを借りて、コウモリやメカジキなど、自然からインスピレーションを得た多くの動物の特徴を分析しました。最終的に、静かな狩人であるフクロウを新しいファンの設計に取り入れました。ファンのデザインは、フクロウの翼と羽をモデルにしています。これにより、騒音の乱れが最小限に抑えられ、ファンはより静かで効率的になりました」
新しいバイオニック高性能ファンが威力を発揮するのは、特に騒音に厳しいエリアだ。例えばEVの急速充電中、騒音レベルが低減されることで、ドライバーや周辺住民のストレスを低減できる。
マーレはこのファンを300Wから35kWまでの幅広い出力範囲でラインアップする。これにより、小型の電気乗用車から、特に温度に敏感な大型の燃料電池トラックまで、幅広い用途に対応。すでにプロトタイプは、まざまな乗用車・商用車メーカーによって試験が行なわれている。
なおマーレはファン・システム全体の軽量化を図るため、ファンカバーとサポートフレームも新たに開発している。その結果、ファンカバーとサポートフレームは10%以上軽量化されている。
電動化と熱管理、つまり加熱と冷却はともに電動車にとっては重要な要素だ。電動車の効率を高めるためには正確な熱管理なしには不可能といえる。マーレはこの両分野で活躍する数少ないグローバルサプライヤーのひとつで、電動化の推進のために開発を続けている。