ドイツの自動車部品サプライヤーのヘラーは、2022年1月25日、電気自動車の心臓部品のひとつである熱マネジメントシステム用のクーラントコントロールハブ(CCH)を開発したと発表した。
ユーザーは電気自動車により長い航続距離と、短時間での充電を求める一方で、自動車メーカーは、短い充電サイクルによるバッテリー寿命への影響を最小限に抑える方法を模索している。また、発生する熱エネルギーを最大限に活用すること、そのために複雑化傾向にある冷却系システムの簡素化も大きなテーマになっている。
電気自動車におけるバッテリーの保温や冷却、モーターやインバーターの冷却、排熱の回収などは、電気自動車の性能、効率に大きく関与する。この分野での先駆者テスラは、最新のモデルYでは車両全体の熱マネージメントを統合制御するオクトバルブを開発し採用している。
通常の電気自動車はキャビンのエアコン、リチウムイオン電池の最適な温度管理など、部品ごとに独立した冷却・加温の回路を備えており、アウディ e-tronのようにモーターの排熱を暖房に活用できるような熱回路を採用するなど、どのように車両全体の効率的な熱管理を行なうかがポイントになっている。
テスラのオクトバルブは、室内のエアコンやリチウムイオン電池、パワートレーン、パワーコントロールユニットなどの冷却・加温が必要な部品における熱マネージメントを統合制御するバルブで最適制御し、熱を運ぶクーラントが流れる経路を条件に応じて切り替えるようになっている。
クーラントは電動ポンプで駆動され、モーターにより回転弁を切り替える方式で、車両全体の冷却、加温をこのバルブ・ユニットで統合制御しているのだ。そしてバッテリー、モーター、パワーコントロールユニットが発生する排熱もすべて回収しトータルでバッテリー、モーターの効率を向上させている。
このように電気自動車の効率向上の心臓部ともいえる熱管理モジュールをヘラー社は開発した。このクーラントコントールバルブCCHは、マルチウェイバルブ、アクチュエータ、分配システム、電動ウォーターポンプ、タンク、熱交換機、さらにはセンサーなどを一つの製品に統合した7ウェイ・バルブユニットになっている。
CCHは、各モジュールを効果的に組み合わせることでバッテリー、パワーエレクトロニクス、駆動用モーター、インテリア空調に関わる3つの冷却系システムの集中コントロールを可能にしており、理想的な熱回収を通じて、熱効率を高めることを可能にしている。またこれらの冷却系システムの統合化は大幅な部品点数削減をもたらし、車両組立にかかるコストの低減にも貢献するものだ。
さらに、冷却系システムの集中化により車両の熱エネルギーの理想的な分配を可能にとし、最適化のための細かなシステムの設定は、メーカー、車両ごとに最適なチューニングを行なうことができるようになっている。
これから登場する電気自動車は、こうした統合熱コントロールにより一段と電費性能を高めることが可能になる。