インフィニオン 量産SiC製パワーモジュールをヒュンダイEVが採用

ドイツに本拠地を置き、自動車メーカーに半導体を供給する大手サプライヤーのインフィニオン・テクノロジーズは2021年5月3日、「ドライブ・クールSiC」と呼ぶ車載用の新しいパワートランジスター・モジュールを発表しました。

この「ドライブ・クールSiC」は、電気自動車(EV)の駆動モーターのインバーター用に開発された1200Vのブロック電圧を持つパワー半導体モジュールで、つまりIGBTモジュールです。

このパワーモジュールは、電気自動車の800Vのバッテリーシステムや大容量バッテリーを搭載した車両のインバーターの高効率化を可能にし、航続距離をより伸ばし、結果としてバッテリー搭載量を抑えてコストの低減を図ることができます。

名称のSiCはシリコン・カーバイトの略称で、SiCパワー半導体をインバーターのIGBTとして使用することで、従来のシリコン製パワー半導体に比べ発熱損失を低減でき、より高効率なモーター駆動を実現するキーテクノロジーとされています。

従来、SiCパワー半導体は大量生産が難しく、結果的に極めて高価で少量生産しか行なうことができませんでした。

インフィニオンは、このSiCパワー半導体の量産化を実現させたことで、「ドライブ・クールSiC」の採用第1号として韓国・ヒュンダイのグローバル・モジュラーEVプラットフォーム(E-GMP)に採用されることが決定しています。

ヒュンダイが開発したE-GMPは800Vの電圧システムを採用しており、充電時間を短縮できる次世代の電気自動車プラットフォームとされています。

インフィニオンのイノベーション&エマージングテクノロジー部門の責任者であるマーク・ミュンツァーは、「このSiCインバーターを使用することで、車両の航続距離は5%以上延長させることができます。その背景としてSiCデバイスの価格が大幅に低下したことでSiCの商業化が加速しており、電気自動車の航続距離を向上させるためにSiC技術を採用することで、よりコスト効率の高いプラットフォームが生まれるでしょう」と語っています。

インフィニオン製のSiCパワー半導体は2017年に初めて発表され、750V、1200Vクラスで100kWから180kWまでのレンジをカバーする製品を持ち、すでに20種類以上の電気自動車プラットフォームに累計100万個以上の出荷実績があります。

今回、新たに開発し市販化された「ドライブ・クールSiC」は、インフィニオンが開発した炭化ケイ素トレンチMOSFET構造を採用しており、平面構造と比較してより高いセル密度を可能にし、その結果、クラス最高の性能指数を実現しています。

最適なコストパフォーマンスを実現するために、この新製品は2つのバージョンが用意されており、1200Vクラスでは400Aまたは200AのDC仕様を設定しています。

今回発売された「ドライブ・クールSiC」は、ヒュンダイに採用されたことからわかるように、より高効率で、しかも低コスト化を実現していると考えられ、今後は多くのインバーターのIGBTモジュールとして急速に普及すると考えられます。

インフィニオン・テクノロジーズ 公式サイト

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