2018年5月21日、ベアリングメーカーのNTNはハブベアリングにタイヤの転舵角度を調整する電動機構を組み合わせ、業界で初めて前輪に搭載可能なステアリング補助機能付ハブベアリング「sHUB」を開発したと発表した。
世界シェアNo.1のNTNのハブベアリングで長年培った設計・製造技術に、モーターとその制御技術を組み合わせたユニークな新技術で、5月23日〜25日にパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展2018」に出展し、同時開催の「自動車技術会 春季大会」でこの開発品の制御技術について学術講演を行なった。
一般的なステアリング・システムは、ハンドル操作の角度によって転舵するタイヤの角度が一定に設定されており、走行しながら直進やコーナリングなどの走行条件ごとに最適な設定に変更することなできない。
今回開発された「sHUB」は、既存のステアリング装置を変更することなく、車両のハブキャリア部分に取り付け可能で、左右各輪の転舵角度を個別に補正することができるモジュール商品となっている。運転時のハンドルの操作角度と車速のデータをもとにタイヤの転舵角度を最適に補正することで、車両のコーナリング性能や高速直進時の安定性を向上させるほか、スリップなど非常時の車両姿勢の安定化を図ることや、燃費改善にも貢献するという。
車両運動制御については神奈川工科大学のGベクタリング・コントロールで有名な「山門・狩野研究室」と共同研究を行い、「sHUB」に適した制御方法を導き出した。
この制御を実装した実験車両では、運転時のハンドル操作量が最大4割低減されることが確認され、「sHUB」を搭載することで運転の負荷軽減を行なうことができる。また、ドライバーのハンドル操作による車両の応答性が約5割改善するという結果が得られ、運転のしやすさの向上にもつながる。
【sHUBの効果】
・運転の負荷軽減効果:ハンドル操作量を最大4割低減 実験車両の最大ハンドル角度98度
→ sHUB搭載時56度(レーンチェンジ時)
・車両の応答性を約5割改善:ハンドル操舵時の応答速度0.2秒
→ sHUB搭載時0.1秒(レーンチェンジ時)最大転舵角は±3.5度、転舵角速度は16度/秒以上、最大転舵トルクは350Nm