非常に久しぶりに自らハンドルを握っての欧州取材旅行という機会があった。ヨーロッパの旅でレンタカーを借り、あちこち好きな場所へ移動するという人には、絶対おすすめのカーナビがあるので、ご紹介しよう。
海外のドライブで心配なのは目的地にちゃんと到着できるか?だ。一度も行ったことがない場所へどういうルートで行くのか?そしてそのルート通りに走れるのか?というハードルがある。これまで、ミシュランの紙の地図には随分とお世話になり、欧州のあちこちを走った経験はあるものの、訪れる場所は初めてのところばかり。
今回、力強い味方となったのがポータブルナビのGARMIN。移動のレンタカーにはナビの有無は選択できるが、ヨーロッパで日本語対応のナビはまずない。言語セレクトで英語、仏語、独語、スペイン語、ポルトガル語といったラインアップが一般的で、語学が堪能であれば問題ないが、やはりGARMINのような日本語での音声案内は頼もしいものだ。このGARMINはアメリカの航空機産業、海洋技術産業向けGPS機器メーカーで、自動車用機器からアウトドア用、スポーツ用機器など幅広く製品がラインアップされている。
アウトバーンやオートルート、アウトストラーダなどの高速道路は比較的簡単に走れ、自分が向かっている方向もわかりやすい。出口も東西南北の名称がついている場合が多いし、大きな都市名などでも方向はつかめる。だが、市街地に入ったとたんに分からなくなる。ヨーロッパには侵略の歴史があるため、シンプルに街をつくっていない。外敵から守るために、敢えて複雑な道にしているので、簡単に迷子になれるし、現在位置も分からなくなってしまう。
そして、レンタカーを借りて国境を超えると地図データがなくなることも経験した。これは確かな情報ではないが、レンタカーの地図データは自国のみで、国境を超えると地図がなくなってしまうのだ。安価なクラスのレンタカーだったから?ま、こんな経験をしたこともあった。
今回GARMINはいろいろなモデルの中で、車載用GPS搭載モデルのnuviシリーズの「2592」をお借りした。まずはそのコンパクトさが良く、スーツケースの中に入れて運ぶことが全く問題ない。カーナビを海外まで持っていくということではなく、スマホのナビ機能をさらにレスポンスを良くしたナビ、というイメージが近い。構成パーツは5インチのモニターとシガーライターからの電源ケーブル、本体取り付け用のクレードルだ。地図データはGARMIN本体に国内がインストールされており、欧州用の地図データは別売で、マイクロSDメモリーを差し込んで使用する。
取り付けは、空港レンタカーの駐車場内で簡単にできる。スーツケースの中からガーミンを取りだし、箱を開けクレードルをフロントウインドウにペタっと貼りつける。最近のクルマはキャビンフォワードしているから、コンパクトカーといえどフロントウインドウは遠い。ドラポジから見やすい場所を探し位置決めする。借りたモデルは最新のフォード・フィエスタ。1.0Lディーゼルで5速マニュアル。ナビなし仕様でエアコンはある。
クレードルを取りつけたら後は電源のみ。シガーライターにケーブルを差し込みスイッチオン。アンテナを伸ばせばOK。簡単に起動する。最初は国内仕様のままなので海外の地図データを読み込ませる必要があるが、最初だけで次の起動からは自動で読み込む。
今回の目的地はフランス・パリ郊外のビルジェイフという街。シャルルドゴール空港から通常であれば1時間程度の距離。目的地設定はフランス語の住所を入れるが、入力に必要な項目は日本語で表示されるので、分かりやすい。その入力も作業もある程度の文字を入力すると候補地が表示されるので、意外と簡単に目的地設定ができる。
検索も早く、到着予想時間も表示され案内が始まる。音声案内は日本語なので安心だ。たいてい空港を出るところでルートを間違え、空港内をクルクル回るという経験は毎度のことだが、今回は音声案内で「右です」とか「二つ目の分岐を左です」といった案内なので、間違うことなく空港を脱出。
すぐにパリ方面に向かう高速に乗るが、高速は分岐も分かりやすくナビなしでも方面は理解できるので、不安は少ない。ちなみに、交差点名は言わない。曲がる場所に近づくと縮尺は拡大され交差点をクローズアップする。音声は「300m先右折です」と案内が始まり、近づくにつれ何度か音声案内があり、曲がるときには「ここです」と案内される。
そしてビルジェイフの街に到着し市内をナビの音声案内、地図案内に導かれるまま走らせる。進行方向を上に向けていても、ノースアップに設定していても、案内は分かりやすく音声も聞きとりやすい。そのため、「自分は今どこにいるのか?」という位置関係を理解できなくてもガーミンの誘導どおりに走行すれば目的地には着く。結局、旅行の終盤まで街の中でホテルの位置関係はよくわからないままだった。それでもガーミンさえあれば、まったく問題なかった。
取材旅行の後半はプジョー208ディーゼルに乗り換えた。こちらも最新モデルのディーゼルで国内には導入していない1.6Lのディーゼル・ターボ。プジョー208にはナビが装備されていたが、もちろん設定はフランス語で、言語選択はできるが日本語は含まれていない。仕方ないのでフランス語よりは分かる英語をチョイスするも、やはりガーミンの分かりやすさにはかなわない。試しにナビの2丁掛けで同じ目的地を設定し、案内してもらうこともやったが、所詮聞いて、見ているのはガーミンのほうになるので、最後は純正ナビは使わなくなった。
さて、地図の見え方はスケールを変更したり、ノースアップや進行方向を上にしたりできる機能はまったく通常のナビと同じで、独特なのは前述のズーム機能。これは側道やフランスに多いランナバウトに入った時など威力を発揮する。ランナバウトは日本にはない交差点のレイアウトで、信号や止まれを採用しないため、渋滞の起こらないレイアウトだ。欧州の場合、十字路を反時計周りの一方通行にして交差点内をグルグル回れるようにする。交差点内=ランナバウトが優先で、進入するときは安全確認して入る。音声では、「この先ランナバウトに入ります」と案内し、出口を「2番目で出ます」と案内する。
一方画面はランナバウトが拡大され出口を矢印で示すので一目で出口が分かり、ミスコースとなることは少ない。もっとも間違えたらそのままグルグル回わり、出口はもう一度現れるので、そこで出れば済む。だから道を間違えたときなどにUターンをする必要がなく、ランナバウトがあれば、簡単に来た道を戻ることができるという素晴らしい交差方式なのである。
そしてミスコースしたときのりルートの速さもグッド。GPSだけで個体の車速センサーを持たないナビでも通常のナビと同等の速さでリルートする。少し型の古いナビならこのGARMINほど速くリルートはしない。したがって、目的地設定時の検索スピードも速く、検索履歴からの目的地設定などはほとんど待ち時間なくルート設定が行われる。だから走行中でも目的地を変更し検索させても何ら問題ない。さらに、リルートも「戻れ」を指示をすることが少なく、前向きな検索をするのも歓迎だ。
もうひとつPNDならではの便利な機能をご紹介しよう。それは、車載してカーナビとして使ったあと、簡単に取り外せるので、徒歩で散策などする時にも利用できるメリットがあるのだ。パリのような大都市で迷路のように入り組んだ道、目的のレストランやショップを探すなんていう時にも活躍することは間違いない。
今回の取材旅行で、GARMINがあったからたどり着けたというシーンが何度もあった。国内ではまず使うことのない座標での検索機能も役立った。目的地が広大で付近に何もないような場所へ行くとき、緯度を入力すると検索できるのだ。実際、この機能で検索したどり着いた場所もあり、GARMINの高機能に助けられた取材だった。だから、見知らぬ土地への旅行には必須のアイテムと言っていいだろう。もちろん、地図データの更新も可能なので、紙の地図のように古くなったから使えないという心配はない。最後に、GPSでの探索だが、天気の影響を受けることはまったくなかった。
■ガーミン nüvi2592 仕様
サイズ:13.7×8.3×1.5cm
画面サイズ:5インチ(解像度480×272)
ディスプレイ:WQVGA ホワイトバックライト付TFT
重量:190g
バッテリー:充電式リチウムイオン
稼働時間:約2時間
内蔵メモリー:8GB
外部メモリーカード:microSDカード
PC接続:miniUSB
付属地図:MAPPLEデジタルデータ 2013年春版