2013年3月29日、世界トップの石油化学企業の1つであるSABIC(Saudi Basic Industries Corporation)は、同社の難燃NORYL樹脂が日産の電気自動車「リーフ」2013年モデルに採用され、軽量化とバッテリー性能向上に貢献していると発表した。
大容量で重たい電池を搭載するEVにとって、軽量化は大きなテーマである。SABICのイノベーティブプラスチックス事業は、日産のリーフ2013年モデルのバッテリーターミナルカバーとスペーサーの軽量化を実現するNORYL樹脂を供給している。
最新型の日産リーフは、性能、効率性の向上を図るため従来モデル比で80kgの軽量化を実現している。この大幅な軽量化は、パワートレーンの変更、機能性の統合、バッテリーモジュールおよびケースの構造や軽量部品採用により達成している。特にNORYL樹脂採用により、最大20%の軽量化が可能となったという。
また、SABICは、日産との協業で広範囲な用途開発を行うことになっている。これは、EVやハイブリット車の成長加速に向けた自動車業界に対し、必要なテクニカルサポートを含めた最新の材料ソリューションを提供する、リーディングサプライヤーとしてのメリットを証明している。
日産のEVエネルギー開発部・平井敏郎主管は、「今回、リーフの2013年モデルにおいて、最新バッテリーパックの軽量化にSABICのNORYL樹脂が貢献しました。特にNORYL樹脂の耐熱性と長期寸法安定性は、部品品質の大幅な向上と弊社の自動組立システムにおける更なるバッテリーの安定的な生産を可能にしました」とコメントしている。
SABICのイノベーティブプラスチックス事業のグローバルオートモーティブ部門シニアディレクターのスコット・ファロン氏は、「今回の日産リーフ2013年モデルの新しいターミナルカバーやスペーサーは、SABICの自動車業界に対する取り組み、すなわち熱可塑性樹脂の採用によるEVやハイブリッド車の軽量化、高性能化といった利点で、より多くのお客様に貢献していく一例です。これらの利点以外にも、NORYL樹脂の持つリサイクル性、そして非臭素かつ非塩素の難燃技術はEVやハイブリッド車には、より環境に優しいソリューションを提供しています」と語っている。
NORYL樹脂はフィラー無充填のポリフェニレンエーテル(PPE)とポリスチレン(PS)のブレンドによる射出成形可能な熱可塑性樹脂で、非常に厳しい「UL94 V-0」の難燃性要求を充たすことができる。UL94の燃焼試験は、樹脂試験片に接炎し、樹脂材料の難燃性を評価するテスト方法がとられる。難燃性基準は潜在的な火災リスクと電気的障害を最小化し、全体的な安全性を強化する目的で構成。ちなみに、ULは、製品の安全性を検査する独立試験・認証機関であり、そのUL規格は世界の安全基準として広く採用されている。
NORYL樹脂は、電解液に対する優れた耐薬品性、80度Cの環境下での耐熱性、低そり性、低吸湿性、優れた寸法安定性と機械強度を持っている。またこれらのバッテリー部品にNORYL樹脂を採用することにより、日産は、塩素系および臭素系難燃剤を使用しないというグローバルなトレンドの最先端企業となっている。
SABICは神奈川県厚木市にある日産先進技術開発センターのバッテリーエンジニアリンググループ、横浜にある材料技術部パワートレーン材料開発グループにテクニカルサポートを提供するなど、日産との密接な連携によりプロジェクトを進めてきた。またSABICは日産リーフのグローバル生産を支えるために、高品質で安定した材料を提供できるSABICのグローバル供給体制も活用している。