【市光】最新世代のヘッドライト ディスチャージライトからアダプティブ・ヘッドライト、LEDライトへ

雑誌に載らない話vol45
夜間走行に欠かすことのできないクルマのヘッドライトも、ここ数年で大きく進化している。この10年間で圧倒的な明るさと長寿命を実現したディスチャージランプ(HID=放電式ライト)は格段に普及し、現在では小型車クラスまで普及する段階になっている。

しかし、ディスチャージ・ランプの登場以後も新たなテクノロジーが登場している。そのひとつがヨーロッパのプレミアムカー・クラスから採用が始まっているアダプティブ・ヘッドライト(AFS)だ。ヨーロッパの夜間の高速道路や郊外の一般道は、日本に比べて照明灯が少ないために暗く、しかも高速道路は100km/h以上、郊外の道路でも100km/hといったハイスピードで走行するため、ヘッドライト性能に対する要求が切実だという背景がある。

アウディA6にオプション設定(欧州)されるナビ連動アダプティブ・ヘッドライトシステムの画像
アウディA6にオプション設定(欧州)されるナビ連動アダプティブ・ヘッドライトシステム

アダプティブ・ヘッドライトは、操舵した方向に自動的に照射方向を指したり、対向車や前走車の有無、気象条件、道路環境に合わせて自動的に照射モードを切り替えるシステムだ。もちろんこの中にはロービーム、ハイビームの自動切り換えも含まれる。

プレミアムクラスカー向けのアダプティブ・ヘッドライトは各種存在しており、例えばアウディA6はナビゲーションシステムの道路情報をベースにして自動的にヘッドライトの点灯モードを切り替えるアダプティブ・ライトシステムなども登場している。

VWフェートンに最初に採用されたビーマチック・プレミアムの画像VWフェートンに最初に採用されたビーマチック・プレミアムの画像
↑VWフェートンに最初に採用されたビーマチック・プレミアム。カメラを使用した画像解析でハイビームを最適制御

その代表例がフランスのヴァレオ社(日本では市光工業が取り扱う)が開発したアダプティブ・ヘッドライトシステム「ビーマチック・プレミアム(BeamAtic Premium)」で、このシステムは2009年に登場しVWフェートンに最初に採用された。

このシステムはHIDランプをベースに、ハイビームを照射し続けながら、ステアリング操作に連動した左右の配光を自動制御するほか、搭載されたカメラによる画像解析により先行車、対向車、気象条件などを検知、モニタリングし、可動式シールドにより不要な光をコントロールする。また、追い越しの場合にも光量を自動調整する。さらに雨などの気象状況を検知し、雨天時の路面の反射光が対向車に向かうのを防止するレインモードになるなど、ハービームのままで最適な照射を可能にしている。

ビーマチック・プレミアムでの配光パターンの画像
ビーマチック・プレミアムでの配光パターン。ハイビームのままでも対向車、先行車に眩しさを与えないシステム

 

なお、現在のビーマチック・プレミアム・システムはHIDランプを使用しているが、今後はLEDランプでによるシステム構成に進化させることが計画されているという。

もうひとつの新たなテクノロジーはLEDヘッドライトだ。発光ダイオードを使用することで消費電力が少ない、軽量、デザイン自由度が大きいといったメリットを持つ新世代のヘッドライトで、現在ではル・マン24時間レース、プレミアムカー・クラス、電気自動車に採用されており、将来的にはさらに普及が進むと見込まれている。

日産リーフのロービームに採用された市光製LEDライトの画像日産リーフのロービームに採用された市光製LEDライトの画像
↑日産リーフのロービームに採用された市光製LEDライト。量産・標準装備としては世界初

クルマのライトシステムを開発・製造している市光工業は、2000年以来ヨーロッパの大手サプライヤー、ヴァレオ社と照明機器に関して全面的に提携し、多くのクルマに供給し、特にLEDライトに関しては世界をリードしている。2004年に日産エルグランド(E51型)のドアミラーにLEDターンランプ、夜間照明用の赤外線LEDとカメラを世界で初めて搭載。また、この年に世界初のルームランプ/スポットランプを組み込んだ、全てがLEDの大型オーバーヘッドコンソールをトヨタ・マークXに初搭載している。

2005年には、トヨタ・アルファード/ヴェルファイアにAFS(Adaptive Front lighting System)を搭載。このAFSはHIDの光源を使った可動式のプロジェクターを使用し、ステアリングに連動した電子的な調光制御を行うタイプだ。

そして2010年には、量産・標準装備車としては世界初となる日産リーフに市光工業製のLEDライト(ロービーム用)が装備された。量産・標準装備を前提にしているため、従来レベルの照射性能を備えながら、軽量・小型化やコスト低減が行われている。このLEDライトは消費電力23Wと世界一の省電力となり、ハロゲンランプと比べ40%、HIDに比べて50%の電力とされている。その意味で世界で最も効率の高い自動車用LEDヘッドランプということができる。ちなみに通常のガソリン車に採用した場合は1g/km のCO2削減ができるという。

寿命もHIDと比べて2倍(5000時間:耐用年数20年相当)と長寿命なことも大きなメリットだ。

リフレクター式光学ユニットと光学原理の画像
このリーフ用ヘッドライトは2枚のリフレクターを使用する反射タイプで、従来のLEDライトには不可欠であった凸レンズを不要にし、軽量化と低コスト化も行っている。反射型は、配光パターンを細かく制御できる上に、部品点数を減らすことができる。将来的にはアダプティブ・ヘッドライトに進化させるためにも有利なのだ。

市光工業公式サイト

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